伊藤計劃『虐殺器官』を紹介します。ノイタミナ枠でアニメ映画化もされている人気作品。近未来SFの世界観が素晴らしい作品でした。
9・11以降、激化の一途をたどる“テロとの戦い”は、サラエボが手製の核爆弾によって消滅した日を境に転機を迎えた。先進資本主義諸国は個人情報認証による厳格な管理体制を構築、社会からテロを一掃するが、いっぽう後進諸国では内戦や民族虐殺が凄まじい勢いで増加していた。その背後でつねに囁かれる謎の米国人ジョン・ポールの存在。アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊のクラヴィス・シェパード大尉は、チェコ、インド、アフリカの地に、その影を追うが…。はたしてジョン・ポールの目的とは?そして大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?―小松左京賞最終候補の近未来軍事諜報SF。(「BOOKデータベース」より)
面白いというのは噂に聞いていたのですが、SFをあまり読まないので手が伸びていませんでした。しかし、読後の今となってはもっと早く読んでおけば良かったなと思っています…。
Contents
後進国で起こる内戦や虐殺
物語の主人公はアメリカ軍人のクラヴィス・シェパード。近未来のアメリカでは、テロが一掃されていました。しかし、後進国ではなぜか民族内での虐殺行為が頻繁に起きていたのです。国からの指令で虐殺を止めに向かうクラヴィス。
虐殺を行っていた者たちは口を揃えて「自分はなぜこんなことをしているのか?」と言います。どうやら背後には虐殺を発生させている人物がいる様子。
それはクラヴィスの暗殺対象にもなっている、ジョン・ポールという男でした。彼はどのようにして虐殺を発生させているのでしょうか?
なぜ虐殺が起きるのか?
ジョン・ポールは「なぜ虐殺を起こすのか?そしてどうやっているのか?」
本作の大きな謎はこれに尽きるでしょう。この真相は個人的には好きでした。まさかまさかの真相で少し怖くなりましたね。どのように?の部分もアイデアが面白くて、好きな内容でした。
また、真相に行き着くまでに、キャラクター間の過去が掘り下げられていき、彼らの感情や行動の背景がよく伝わってきます。人間ドラマとしても楽しめる部分が多い物語です。
ラストはかなり圧巻
また、本作は最後まで気が抜けません。ラストにはすさまじい展開が待ち構えていました。事件を解決して終わり。悪人を捕まえて終わりではない。というか悪人とは誰なのか。こうしたことを考えさせられるラストでもあり、少しゾッとしてしまいました。
何が起こるのかはネタバレになるため控えますが、この展開を読んでどのように感じるか。人によって解釈が別れそうなので、話してみるのも楽しそうだなと思いました。
まだ読んだことない人は早めに読むことをオススメします!