どんでん返しが大好きな「たかひでの本棚」です。
毎年100冊を超える小説を読んできましたが、中でもどんでん返し系が大好き。予想を覆される、騙される体験が爽快なんですよね。この感覚がわかる方とは友達になれそうです。
この手の小説はほぼ読み尽くしているので、日本に存在するどんでん返しは大抵食らってきています笑。
そんな私が「特に騙された!」「みんなにも同じような思いをしてほしい!」という極上の小説を、100作品ピックアップしました。ひとことと一緒に紹介するので、ぜひ小説選びの参考にしてみてください!
目次
- おすすめどんでん返し小説100選
- 1.綾辻行人『十角館の殺人』
- 2.我孫子武丸『殺戮にいたる病』
- 3.歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』
- 4.倉知淳『星降り山荘の殺人』
- 5.荻原浩『噂』
- 6.乾くるみ『イニシエーション・ラブ』
- 7.殊能将之『ハサミ男』
- 8.森博嗣『すべてがFになる』
- 9.相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』
- 10.大山誠一郎『仮面幻双曲』
- 11.泡坂妻夫『しあわせの書』
- 12.五十嵐律人『法廷遊戯』
- 13.梶龍雄『龍神池の小さな死体』
- 14.東野圭吾『秘密』
- 15.殊能将之『黒い仏』
- 16.道尾秀介『カラスの親指』
- 17.道尾秀介『ラットマン』
- 18.米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』
- 19.東野圭吾『容疑者Xの献身』
- 20.伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』
- 21.麻耶雄嵩『螢』
- 22.麻耶雄嵩『貴族探偵』
- 23.貴志祐介『新世界より』
- 24.中山七里『さよならドビュッシー』
- 25.知念実希人『真夜中のマリオネット』
- 26.辻村深月『スロウハイツの神様』
- 27.辻村深月『名前探しの放課後』
- 28.辻堂ゆめ『あの日の交換日記』
- 29.浅倉秋成『教室が、ひとりになるまで』
- 30.綾辻行人『Another』
- 31.三津田信三『厭魅の如き憑くもの』
- 32.三津田信三『首無の如き祟るもの』
- 33.澤村伊智『ぼぎわんが、来る』
- 34.澤村伊智『ずうのめ人形』
- 35.湊かなえ『リバース』
- 36.長江俊和『出版禁止 ろろるの村滞在記』
- 37.木下半太『悪夢の観覧車』
- 38.若竹七海『クール・キャンデー』
- 39.降田天『彼女はもどらない』
- 40.梶龍雄『清里高原殺人別荘』
- 41.夕木春央『方舟』
- 42.夕木春央『十戒』
- 43.白井智之『名探偵のいけにえ』
- 44.白井智之『エレファントヘッド』
- 45.荒木あかね『ちぎれた鎖と光の切れ端』
- 46.知念実希人『硝子の塔の殺人』
- 47.岡崎琢磨『紅招館が血に染まるとき The last six days』
- 48.くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』
- 49.井上真偽『アリアドネの声』
- 50.藤崎翔『逆転美人』
- 51.藤崎翔『お隣さんが殺し屋さん』
- 52.降田天『女王はかえらない』
- 53.米澤穂信『王とサーカス』
- 54.アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』
- 55.アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』
- 56.アガサ・クリスティ『アクロイド殺し』
- 57.島田荘司『占星術殺人事件』
- 58.島田荘司『斜め屋敷の犯罪』
- 59.市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』
- 60.市川憂人『ブルーローズは眠らない』
- 61.阿津川辰海『バーニング・ダンサー』
- 62.阿津川辰海『名探偵は嘘をつかない』
- 63.阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』
- 64.道尾秀介『雷神』
- 65.乾くるみ『セカンド・ラブ』
- 66.乾くるみ『リピート』
- 67.藤崎翔『神様の裏の顔』
- 68.澤村伊智『予言の島』
- 69.今村昌弘『魔眼の匣の殺人』
- 70.今村昌弘『兇人邸の殺人』
- 71.斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』
- 72.結城真一郎『プロジェクト・インソムニア』
- 73.西澤保彦『七回死んだ男』
- 74.西澤保彦『神のロジック 次は誰の番ですか?』
- 75.道尾秀介『シャドウ』
- 76.道尾秀介『ソロモンの犬』
- 77.麻耶雄嵩『神様ゲーム』
- 78.麻耶雄嵩『さよなら神様』
- 79.早坂吝『しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人』
- 80.杉井光『世界でいちばん透き通った物語』
- 81.東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』
- 82.城平京『名探偵に薔薇を』
- 83.浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』
- 84.吉田修一『パレード』
- 85.米澤穂信『インシテミル』
- 86.伊坂幸太郎『ホワイトラビット』
- 87.伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』
- 88.山口未桜『禁忌の子』
- 89.湊かなえ『少女』
- 90.中村文則『去年の冬、きみと別れ』
- 91.まさきとしか『あの日、君は何をした』
- 92.井上真偽『ぎんなみ商店街の事件簿』
- 93.芦沢央『火のないところに煙は』
- 94.大島清昭『影踏亭の怪談』
- 95.中山七里『連続殺人鬼カエル男』
- 96.乾緑郎『完全なる首長竜の日』
- 97.阿部智里『烏に単は似合わない』
- 98.知念実希人『誘拐遊戯』
- 99.下村敦史『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』
- 100.アンソロジー『超短編! 大どんでん返し』
- 「騙されないぞ!」と思って読んでみてください!
おすすめどんでん返し小説100選
おすすめのどんでん返しミステリー小説を100選にして紹介します。カテゴリにわけて、それぞれでおすすめ作品を紹介するので、自分の好みや読みたいと思っているジャンルで探してみてください!
1.綾辻行人『十角館の殺人』
「これまでで一番どんでん返しが凄かった小説は何?」と聞かれたら間違いなくこの作品を挙げます。ミスリードから仕掛けられていたトリックまですべてが秀逸。
記憶を消してもう一度あの衝撃を味わいたい…。まだ読んでない人の脳みそがメルカリに出品されてたら買ってます。
“たった一行で世界が反転する”という謳い文句は伊達じゃない。その一行を読んだ瞬間は、何が起きたのか理解できませんでした。ずっと騙された情報でページをめくっていたのです。
【感想】たった1行で世界がひっくり返る(綾辻行人『十角館の殺人』)2.我孫子武丸『殺戮にいたる病』
猟奇殺人犯、殺人犯の母、元警察官。3人の視点で殺人事件の真相に迫っていく物語。「どんでん返しがすごい」ではほぼ必ず名前が挙がる作品です。
推理して読んで見ると「真相わかったかも」となるかもしれません。私はそうなりました。しかし、甘く見過ぎていました。全くの予想もしない角度から真実が浮かび上がってくるのです。
あまりの驚きに、後半の数ページは何が起こっているのかを理解できず、文字を追うだけで精一杯。該当箇所を読み返して再び驚いてしまいました…。
【感想】最後に明かされる驚愕の事実!3者の視点で語られる事件(我孫子武丸『殺戮にいたる病』)3.歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』
こちらも『殺戮にいたる病』と同様、どんでん返しがすごい作品では絶対に名前が出てきます。というのも、本作は「どんでん返しを描くために作られた」と言っても過言ではないからです。
過去と現在。2つの時間軸で話が進んでいくのですが、最後には文字から得ていた情報と現実とのギャップにやられます。気付けるわけがないし、読者を嘲笑うかのようなラストが待ち構えています。(個人的には大好きでした)
本作はその出来栄えから、賛否両論が激しいです。何でもいいからどんでん返しを食らいたい人にはオススメ。アンフェアが嫌いという人は避けた方が良いです。
【感想】騙されない人はいないどんでん返し(歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』)4.倉知淳『星降り山荘の殺人』
こちらも賛否両論が多い作品。個人的にはとてもありなので、オススメに挙げました。どんでん返し作品の中でも少ない、ある盲点を突いた作品でした。
探偵と助手が訪れた雪の山荘で殺人が起こるという、よくあるクローズドサークルもの。本を読みやすい工夫も施されているのでスラスラ読めます。
そして、最後にはあることに騙されていたと気づかされる。頑張ればわかったかもしれないので、よりスゴイなと感じざるを得ませんでした…。
小説ならではのトリックなんですが、映像化も見てみたいと作品。この意味は読んでもらえばわかると思います。
【感想】一切嘘がないからこその驚き!(倉知淳『星降り山荘の殺人』)5.荻原浩『噂』
香水の新ブランドを広めるために始まった都市伝説。それは「レインマンが出没して、女の子の切っちゃう。でもミリエルの香水をつけていれば大丈夫」というものだった。
ただの噂のはずだったのに、いつの間にか現実になってしまう。本当に足首のない少女の遺体が見つかってしまうのだった。犯人と事件の真相は?
最後の一行が衝撃的過ぎる一冊。まさかのオチだったので、いまだに何が書かれていたのか覚えています…。どんでん返しが好きな人は読み逃し厳禁の作品です。
6.乾くるみ『イニシエーション・ラブ』
「最後の二行で世界が反転する」という触れ込みを持っている作品。最初に読んでいる時は、ただのラブストーリーにしか思えないはずです。
しかし、触れ込みの通り、最後の二行で世界が一気に変わります。思い描いていた世界がまったく別物に変貌します。未読の人がとても羨ましいです。
どんでん返しが好きな人は避けては通れない作品だと思います。
【感想】二度読み必至!世界が反転どころじゃない(乾くるみ『イニシエーション・ラブ』)7.殊能将之『ハサミ男』
美少女を殺害し、死体の首にハサミを突き立てる。そんな殺人をしている猟奇犯の通称「ハサミ男」。3番目のターゲットを決めて、周辺を調べるなど実行に向けて動いたところ、何者かが彼女を殺害してしまう。
しかも、自分の手口を真似して事件を起こされてしまうのだった。彼女を殺害したのは誰なのか。獲物を奪われた挙句、自分の模倣をされた「ハサミ男」は犯人を見つけようと動き出すのだった。
どんでん返しが凄い作品と言えばでよく挙げられる作品。最後の最後まで気が抜けないようになっており、驚きの展開が待っている。
8.森博嗣『すべてがFになる』
孤島にある壮大な研究所。外界から隔離されたこの環境で生まれ育った真賀田四季。彼女は日本中の誰もが認める、まぎれもない天才なのだった。
そんな彼女の元を訪れた、犀川と西之園だったが、真賀田四季がウェディングドレスをまとい両手両足が切断された状態で発見される。現場は完全な密室だったはずなのに、誰がどうやって事件を起こしたのか?
タイトルの意味がわかった瞬間は鳥肌が立ちました。もちろん、トリックや伏線もしっかりしているので、ミステリ好きな人には楽しめる作品になっています。
メフィスト賞の第一回目の受賞作。シリーズにもなっているので、面白かった人は続編も読んでみてください!
【森博嗣】S&Mシリーズの読む順番は?『すべてがFになる』からなる全10作のあらすじと一緒に紹介!9.相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』
“すべてが伏線”という触れ込みで話題になっている作品。この謳い文句に嘘はありませんでした。本当に何もかもが伏線でした。
霊媒師の能力を持った翡翠が導き出した答えを、作家の香月が論理的に解き明かすというミステリ小説。正直あることが明らかになるまでは「こんなもんか」という印象でした。(伏線分かりやすすぎwwwとさえ思ってましたごめんなさい)
しかし、後半の数十ページで明かされた真実に度肝を抜かれました。上の感想を持っていた自分が恥ずかしくなるくらい、えげつない騙され方をしていたのです…。
【感想】すべてが伏線!あなたも絶対に騙される(相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』)10.大山誠一郎『仮面幻双曲』
戦後間もない日本の旧家を舞台にしたミステリ小説。
ある女性の死をきっかけに、双子の弟は、兄を殺すことを決意するのだった。殺害計画を立てた彼はそのために整形をして、旧家に潜んでいるようなのだが…。
昔ながらの雰囲気が漂う、本格的なミステリの様相を感じる作品。その中で、整形によって別人になっている弟は誰なのかという論理パズルのような楽しみもある。
斜め上の角度からやってくる真相には、きっと誰もが驚くはず。
11.泡坂妻夫『しあわせの書』
二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団体・惟霊講会。布教のための小冊子・「しあわせの書」に隠されている秘密とは一体何か?
事件の犯人やトリックというよりも、作品全体に仕掛けられているとんでもない事実に驚かされる一冊です。初めて読んだ時にはものすごいトリックに驚かされました…。(ネタバレになるので抽象的なことしか言えない…)
元祖・紙の本ならではのトリック。まだ読んでない人はぜひ手に取ってみてください。
12.五十嵐律人『法廷遊戯』
法律家を目指す若者たちが集うロースクールを舞台にしたリーガルミステリ。主な登場人物は3人。過去にある闇を抱えている久我清義と織本美鈴。そして、彼らと同じロースクールに通う天才・結城馨。
本作は2部構成になっており、1部ではロースクールで行われる無辜ゲームという模擬裁判を中心に話が進んでいく。清義たちの過去を知る何者かが、動いている様子が描かれる。
そして、第1部の最後にとんでもない事件が起こり、第2部へ。第2部では、実際の法廷を舞台に、ある事件の裁判が行われるのだった。
ラストの伏線回収が素晴らしい作品。前半から華麗に仕掛けられていた伏線の数々が、どんどん明かされていく展開は爽快感がありました。
法律用語がたくさん出てきますが、すべて丁寧な説明がついているので、まったく知識がなくても読める。むしろ読みやすい小説です。
【感想】法律×ミステリ!法廷を舞台にした罪と罰の物語(五十嵐律人『法廷遊戯』)13.梶龍雄『龍神池の小さな死体』
死期が迫った母から告げられた衝撃的な言葉。「お前の弟は殺されたんだよ」の意味を探るべく、生まれ育った土地を訪れた大学教授。
事故で死んだと聞かされていたはずなのだが、「殺された」というのはどういう意味なのか。弟の死の真相を探るべく、捜査を始めた男が見つけた衝撃的な真実とは?
謎が多い中で進んでいく物語。そして、かなり序盤から仕掛けられていたヒントが後半で明らかになっていく。構成を含めてかなり上手な作品で、二転三転の展開を楽しめる濃厚なミステリでした。
14.東野圭吾『秘密』
自動車部品メーカーで働く39歳の杉田。彼の妻と娘がバスの事故に遭ってしまい、妻は命を失ってしまう。しかし、重体だった娘が意識を取り戻すと、そこには妻の魂が入っていたのだった。
死んだはずの妻が娘の中にいる。不思議な状態での生活が始まり、娘の中にいる妻とともに日々を過ごすことになるのだが…。
周囲の人間を含めた人間ドラマとして素晴らしい一冊。ミステリの要素は薄く、感動的な内容になっています。しかし、ある種の驚きや心に残るくらいに衝撃的なので、この中にいれました。
15.殊能将之『黒い仏』
2つの視点で進んでいく物語。探偵の石動は、助手のアントニオとともに宝探しをする。そして同じ時間軸では、ある殺人事件の犯人を、警察が追っかけている。
順を追って読んでいる時には、2つの出来事がどこで繋がるのか想像がつかない。しかし、捜査が進んでいくにつれて、徐々に話がリンクしていることが明らかになります。
そして、最後の推理パート。まさか過ぎる展開が待ち構えていました。予想できるわけがなく、むしろ受け入れることでも精一杯のストーリーが始まるのでした。
思わず笑ってしまう展開で楽しかったですが、賛否両論あるような作品です。麻耶雄嵩さんが好きならオススメです。
【感想】クセが強すぎるミステリ作品!突如訪れるまさかの展開(殊能将之『黒い仏』)16.道尾秀介『カラスの親指』
どんでん返しには大きく2つのパターンがあると思ってます。1つは先ほどの『十角館の殺人』のような「思っていた世界が全くの別物だった」というもの。読者を誤解させるタイプのどんでん返しです。
もう1つが「何もかもが伏線で最後にすべてが一本に繋がる」というもの。登場人物を含めた全員を騙すタイプのどんでん返しです。本作は、このタイプのどんでん返しで私が1番好きな小説です。
詐欺師たちの物語なんですが、最初から最後まで、何もかもが騙しの一部でした。良い感じにヒントがあったことが、最後にはわかるのでより悔しい。でも読後の騙された感は爽快です。
【感想】一筋縄では終わらない!どんでん返しの先にある衝撃のラスト(道尾秀介『カラスの親指』)17.道尾秀介『ラットマン』
23年前に起きた姉の転落死。そして現在、恋人が倉庫で不運な事故死を遂げた。しかし、これらは殺人の可能性もあり…。『カラスの親指』の作者・道尾秀介さんの作品。ミスリードがかなり秀逸な一品です。
「あれはそういうことだったのね!」と思ったら、「そういうことじゃなかったんかい!」という展開がずっと続きます。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、最後まで息をつく暇がありませんでした。幾重にも重ねられた罠を味わってみてください!
【感想】きっと騙される!思い込みと真実の相違(道尾秀介『ラットマン』)18.米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』
私が一番好きな小説。このサイトではことあるごとに紹介してる作品です。
5つの短編が収録されている本作。すべて最後の一行でどんでん返しが起こります。これは比喩でも何でもなく、本当に最後の最後にどんでん返しが起こるのです。
最初の物語は40ページ程度の短いのですが、最後の一行を読んだ瞬間に思わず笑ってしまいました。愉快な笑いではなく、上手なオチ過ぎたのです。この話にハマったのであれば、全作楽しめるでしょう。特に2作目の「北の館の罪人」と4作目の「玉野五十鈴の誉れ」は間違いなく高評価になるはず。
どんでん返しが好きなら絶対に読んだ方が良い一冊です。
【感想】どんでん返し好きなら読んでおきたい一冊(米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』)19.東野圭吾『容疑者Xの献身』
ガリレオシリーズの3冊目。初めての長編なので、もっとも有名な作品かもしれません。
主人公は天才物理学者のガリレオ。彼は、同じ大学に通っていた天才数学者・石神と偶然の再会を果たします。
そんな折、都内である男が殺される事件が発生。最有力の容疑者は男の前妻でした。しかし、彼女には鉄壁のアリバイがある。その裏には、石神の存在があったのでした。
犯人は最初からわかっている、倒叙ミステリで天才同士の頭脳戦が素晴らしい作品。作品にぴったりハマるトリックが最高でした。読み終えたあとに残る虚しさのような、苦しさのような、あまり味わえないような余韻も心地よかったです。
20.伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』
現在と2年前の2つの軸で物語が進んでいきます。これらが最後には一つに繋がるのですが、そこに至るまでの伏線回収が素晴らしすぎる。
何もかもが伏線だった。関係のない描写は一切ないくらい仕掛けられていました。一文字たりとも読み逃しは厳禁というレベルです。
(ネタバレになるので思い切り伏せますが)特に、「○○の○○」という部分は本当に鳥肌もの。こんなに単純なトリックで読者を欺けるのかと感心してしまいました。
【感想】どんでん返しがエグイ!伊坂初心者にオススメの小説(伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』)21.麻耶雄嵩『螢』
どんでん返しにしては珍しいタイプの小説。どう珍しいのかは読んでみてください笑。どういう意味なのかは読めばすぐにわかると思います。
クローズドサークルで起こる殺人事件を扱ったミステリではありますが、正直そんなのはどうでも良いです。それ以上にとんでもない仕掛けがありました。小説をよく読む人、特に、どんでん返しを一通り経験した人は絶対に騙されます。
ミスリードも上手だし、騙すポイントが完璧すぎる。最後まで飽かすことのないストーリー展開なので、小説をよく読む人にはオススメしたい小説です!
【感想】小説好きが絶対に騙される一冊(麻耶雄嵩『蛍』)22.麻耶雄嵩『貴族探偵』
独立短編集なのですが、本作については「こうもり」が凄すぎるので入れました笑。「驚いた」なんて言葉では済まされない。話が終わってもしばらく意味がわかりませんでした。
読む前から「絶対騙される」「読んでも一回じゃ意味がわからない」とは言われていたにも関わらず、思い切り騙されたし、意味がわからない状態になりました。
そして、読み返してみると、本を投げ出したくなるくらい、めちゃめちゃ上手に欺かれていたことに気づかされました。
この爽快感は全世界の人に味わってもらいたい。「あのトリックは気付かないよね!すごいよね!」ってトークがしたいです笑。
【感想】推理をしない探偵のとんでもミステリ(麻耶雄嵩『貴族探偵』)23.貴志祐介『新世界より』
上中下巻の3冊から成る作品。しかし、上巻はあまり面白くありませんでした。というのも、壮大なSF世界での物語なので、上巻は説明描写が多いんですよね…。世界観を把握するまでは結構大変かもしれません。
ただ、中巻から一気に没頭できるようになるはずです。徐々に世界に関する謎が明らかになってきて、上巻にあった内容がジワジワと効いてきます。
そして、下巻。ページをめくる手が止まりませんでした。緊迫した展開と驚きのラスト。この長さだからこそのインパクトが大きい、衝撃的なオチが待ち構えていました。
【感想】上巻以外はめちゃくちゃ面白いSF小説(貴志祐介『新世界より』)24.中山七里『さよならドビュッシー』
どんでん返しの帝王とも呼ばれる、中山七里さんのデビュー作。
ピアノに打ち込む女子学生の物語です。彼女は火事で祖父と従姉妹を亡くし、自身も全身に大やけどを負ってしまいます。そんな彼女がプロのピアニストを目指し、奮闘するのですが、周囲で不審な事故や殺人が…。
スポ根ミステリという感じなんですが、最後に待ち受けているどんでん返しが素晴らし過ぎた。ミスリードが上手で真相に気付くのは難しいですね…。「これぞどんでん返し」という感じのオチが大好きな一冊です。
【感想】美しいスポ根+どんでん返し(中山七里『さよならドビュッシー』)25.知念実希人『真夜中のマリオネット』
殺した後、一晩かけて遺体をバラバラにする殺人鬼――通称「真夜中の解体魔」。婚約者を殺された救急医の秋穂は、深い悲しみを抱えながらもなんとか職場に復帰をしたところだった。そんな時に搬送されてきた少年は「真夜中の解体魔」なのかもしれない。
自分が救った命は恋人の仇だったかもしれない。しかし、少年と触れ合うにつれ、秋穂は、真犯人は別にいるのではないかと疑い出す。
読後の余韻がしばらく抜けてくれない作品。どんでん返しまでのストーリー展開が上手すぎます。
26.辻村深月『スロウハイツの神様』
創作家を目指す人が住まう寮・スロウハイツ。ここに住む6人を描いています。既に売れている者もいれば、まだ日の目を見ていない者も。それぞれが抱える悩みや葛藤が丁寧に書かれており、人間ドラマもとても美しかったです。
どんでん返しについてですが、何もかもの伏線ですべてが回収されます。それどころか「そんなところにもあったの?」言わんばかりにジャンジャン出てきます。伏線がインフレを起こしていました。
上下巻なのですが、あっという間に読み切れました。心温まる物語なのに、どんでん返しも秀逸。人を選ばずに楽しめる小説です!
【感想】伏線回収の連続にミステリ好きも満足!(辻村深月『スロウハイツの神様』)27.辻村深月『名前探しの放課後』
数カ月後に自殺する生徒を止めるために奮闘する高校生たちの物語。上下巻なんですが、数日で読み切れてしまうほど引きこまれました。
作品の隅々にある仕掛けが施されていて、たまりませんでした…。ただ、本作は『ぼくのメジャースプーン』というを読んでいないと驚きは薄くなってしまいます。上下巻だけでも楽しめるには楽しめますが、面白さは1/10以下になってしまうかな…。
【感想】ただの成長物語じゃない!小説好きは絶対に読むべき1冊(辻村深月『ぼくのメジャースプーン』)是非『ぼくのメジャースプーン』を読んでから手に取ってください!
【感想】伏線回収が半端ない!辻村作品の集大成!(辻村深月『名前探しの放課後』)28.辻堂ゆめ『あの日の交換日記』
交換日記を題材に描かれる7つの連作短編集。すべての話で最後には驚けるポイントが用意されています。同じようなオチは一つもないので、全部異なるどんでん返しを展開してくるので最高でした。
それぞれの話は独立しているのですが、最後の7つ目の短編ですべてが一本になる。この展開が予想外過ぎました。読んでいた世界、想像していた世界が全く別物だったのです。
単にどんでん返しをしてくるだけではなく、人間ドラマも美しいので心が温まる。辻村深月さんが好きな人は絶対に楽しめる小説です。読みやすい文章なので、活字に慣れていなくてもスラスラ進められすはず!
【感想】伏線回収は一級品!心温まる7つの短編(辻堂ゆめ『あの日の交換日記』)29.浅倉秋成『教室が、ひとりになるまで』
選ばれた4人の学生が超能力を所持しているという高校を舞台にした作品。そこで連続自殺が発生する。しかも、死んだ生徒たちは自殺なんてするはずのない生徒ばかりだった。
何者かが超能力で生徒を自殺に追い込んでいるのではないか。犯人はどのようにして自殺をさせているのか。特殊設定を駆使したトリックや真相解明がお見事。
それにとどまらず、最後にひと捻りがあるのは本作のもう一つの見どころ。個人的には『六人の噓つきな大学生』よりも好みでした。
30.綾辻行人『Another』
みんなから認識されない生徒。そして、事故死が頻発するクラス。これは呪いによるものらしい…。
作品冒頭は全くわからないことだらけなんですが、徐々にどういうことだったのか明らかになってきます。ただ、謎が明らかになったかと思えば、次は別の謎が姿を見せる。
このような調子で話が進んでいき、最後にはすべてが明らかになります。わけのわからなかった前半から、ある真実が仕込まれていた。これには震えました…。予想をはるかに上回るどんでん返しが待ち構えています。
【感想】謎に次ぐ謎の連続!#アナザーなら死んでたって何?(綾辻行人『Another』)31.三津田信三『厭魅の如き憑くもの』
民族ホラー×ミステリという作品。村に伝わる伝説になぞられて起こる殺人事件。誰がどのように犯行をしているのか。それとも呪いなのか…?
ミステリではあるものの、ところどころで怖さのある一冊。気味が悪い感じで物語が進むからというのもありますが、解決編までは、どこまで人間のものなのかがはっきりしないのもその理由です。
そして、最後にはミステリとしての驚きとともに、恐怖を感じるオチも待っています。ミステリ、ホラーどちらの点でも一級品でした。
32.三津田信三『首無の如き祟るもの』
奥多摩の山奥に伝わる怪異。三つに分かれた旧家の儀式の最中に、事件が起こる。刀城言耶シリーズの第3作目にして、最高傑作としても呼び声が高い作品。奇妙でどこか不気味な空気感の作品で、横溝正史が好きな人はきっと好きになるはず。
詳しくは書けないですが、どんでん返しが渋滞を起こしています。何が起こっていたのかを理解するのにとにかく時間がかかる。けどわかると衝撃的な事実に、茫然としてしまいます。
33.澤村伊智『ぼぎわんが、来る』
3つの章で構成されているホラー小説。それぞれで語り手が異なっていますが、化け物・ぼぎわんに追われることになってしまった家族の物語を描いています。
徐々に迫ってくる怪異に恐怖を感じる、不気味さを覚える。そんなホラーテイストの作品なんですが、1章の最後にまさかの展開が待ち構えています。
ホラー小説としても素晴らしいのですが、驚きがあるという観点では、素晴らしいどんでん返しでもありました。
【感想】狂気のホラー小説!追いかけてくる化け物の正体とは?(澤村伊智『ぼぎわんが、来る』)34.澤村伊智『ずうのめ人形』
不幸の手紙やチェーンメールを題材にした作品で、ずうのめ人形がどんどんと迫ってくるのは、前作と同じような恐怖を感じられました。ただ、本作ははそれだけにとどまらず、ミステリーとしての面白さも詰まった作品です。
謎を解かなければ死んでしまうという緊迫感の中で、最後に明らかになる真相は、衝撃的なものがありました。ホラーとしての面白さの中に、好奇心をくすぐられる謎が用意されている、素晴らしい作品です。
35.湊かなえ『リバース』
平凡なサラリーマンの深瀬。そんな彼の恋人のもとに届いた一通の手紙。そこには「深瀬和久は人殺しだ」と書かれていた。実は深瀬は、過去に大学時代の友人を亡くしていた。しかし、それは疑惑の事故だった。
手紙をきっかけに、過去の事故の真相を調査していく。そこで浮かび上がった真実とは一体何か。本当に事故だったのか、それとも何者かによる殺人だったのか?
最後の最後に衝撃的な出来事が待ち構えている作品。しかも、一切の余韻を与えずに物語は終わりを迎えるので、読み終えた直後は事態を受け入れるのに少し時間を要します。
「え、これで終わり、ちょっと待って! 消化させて!」となるくらいに強めの衝撃が急に来ます。さすが湊かなえさんという感じの作品です。
36.長江俊和『出版禁止 ろろるの村滞在記』
大切な人、信頼していた人に裏切られ、傷ついた人々が再起を期して集団生活を営む「いやしの村」。一方、ネット上には、その村は「呪いで人を殺すカルト集団」という根強い噂があった。果たして村はどのような実態があるのか?
最初から最後まで騙されっぱなしの一冊でした。読み終えてから、何か所も読み返してキレイに騙されていたことに感動してしまいます。こんな風に欺く方法があったとは思わず脱帽です。
2022年読んだ中で一番面白い小説でした。とにかくスゴイです。(語彙力)
37.木下半太『悪夢の観覧車』
ジャックされた観覧車が舞台の作品。家族連れ、ヤクザと連れの女性、スリの先輩と後輩、別れさせ屋の女性。閉じ込められたこの4組の視点で進んでいきます。
この作品でも、全く交わっていなかった線が一本に繋がる爽快感を楽しめました。ジャック事件の背景には“あること”が隠れていたのですが、最後にはすべて明らかになります。テンポの良い会話で物語が展開されるので、スラスラと読み進められるはず。
【感想】ラストですべてが繋がる爽快感(木下半太『悪夢の観覧車』)38.若竹七海『クール・キャンデー』
たった160ページの物語なんですが、ラスト一行がかなり強烈でした…。殺人の容疑をかけられた兄の無実を晴らすために妹が奮闘する。
文体も軽いのでとても読みやすい一冊。小説を普段を読まない人には特にオススメしたいどんでん返し作品です。ただ、衝撃度はかなり高いので、後半は構えておいてください…。
【感想】小説初心者向け!ラストの一行が衝撃的な青春ミステリ(若竹七海『クール・キャンデー』)39.降田天『彼女はもどらない』
OL対パパブロガーのネットでの論争から巻き起こる事件。冒頭のプロローグから含め、そこかしこに伏線が張り巡らされています。
ネタバレになるので書きませんが、正直メイントリックについては考えなかったわけではありません。ただ、どう考えても無理があると思っていたら…「なるほど…」となってしまいました。
読み返してみると、キレイに伏線が張られていて、面白いくらいにその通りの世界が描かれていることに気付きます。前作同様に、思っていた世界と実際の世界が全くの別物でした。また、どんでん返しも1つや2つではありません。
【感想】予想外過ぎ!どんでん返しが渋滞してる一冊(降田天『彼女はもどらない』)40.梶龍雄『清里高原殺人別荘』
ある理由があって無人の別荘に忍び込むことになった五人の男女。四日間の滞在を予定していたが、なぜか先客がいた。そして、その日に殺人事件が起こってしまう…。
この作品は謎だらけの状況から始まります。なぜ彼らは無人の別荘に忍び込んでいるのか。そして、なぜ無人のはずの別荘に先客がいるのか。そして誰なのか。さらに殺人事件まで起こってしまう。
彼らの関係性も含めて、謎だらけの中で物語は展開していきます。
徐々に明らかになっていく事件の真相と作品の全体像。犯人だけではなく、その他の謎の答えにも驚きが多かったです。予想を上回るというか、予想していなかったことが起こりまくってビックリしっぱなしでした。
41.夕木春央『方舟』
地震のせいで地下施設に閉じ込められた9人の男女。脱出をするには誰か1人がそこへ残らないといけない状態になっていた。生贄になるのは誰だ?
そんな時に起こった殺人事件。犯人以外の思惑は一致する。犯人が生贄になれば良いと。人を殺したら自分が残ることが目に見えている状態で、なぜ犯人は殺人を決行したのか。
特殊設定のハウダニットとワイダニット。どちらもとてもよく練られていて、最後のどんでん返しがどえらいことになってました。最後まで絶対に気を抜かないでください。そして、読後の放心状態を心地よく味わってください!笑
42.夕木春央『十戒』
ある無人島をリゾート施設にしようという計画のため、島を訪れた九人の男女。誰もいないはずの島なのに、何者かが住んでいた形跡があり、しかも爆弾が見つかるのだった。
不穏な空気のまま翌日へ。すると、一人の人間が殺された状態で発見された。そして、犯人からの声明文が見つかる。そこには「犯人を探すな」を始めとする、10のルールが書かれていた。ルールを守れなければ、島が爆破してしまうのだった。
ミステリなのに、犯人を探していけない。犯人に従い続けないといけない日々の中で、連続殺人が起こる。犯人の正体とその目的とは?
最後の最後の伏線回収とどんでん返しが凄すぎました…。前作の『方舟』と同じくかなりの衝撃を味わえる。最高の作品でした。
43.白井智之『名探偵のいけにえ』
病気も怪我も存在しない楽園で起きた、四つの密室殺人。事件の真相はもちろんですが、100ページを超える圧倒的な推理パートが素晴らし過ぎる。論理的な推理の応酬と最後に待ち受けているどんでん返しがとにかく鮮やか。
先に言っておくと、ミステリを読み慣れていない人は絶対に読まないでください! ミステリ好きがニヤニヤしながら読み進める作品だと思うので、万人受けはしないと思います。
44.白井智之『エレファントヘッド』
精神科医の象山は、家族と幸せな生活を送っていた。しかし、その幸せが崩れ始めることになるのでした…。
あらすじはあまり書けない作品。おすすめポイントはとにかく多重解決が止まらないこと。
特殊設定×ロジックがこれでもかというほどに詰め込まれています。真実が明らかになったと思いきや、まったく別の視点から推理が否定され、新しい真実が浮かんでくる。最後まで気が抜けない最高の作品でした。
ただ、かなりグロいので、そういうのが苦手な人にはおすすめできません…。
45.荒木あかね『ちぎれた鎖と光の切れ端』
二部構成の物語で第一部ではクローズドサークルを舞台とした本格ミステリが描かれています。そして、第二部では、第一部を伏線としたミステリが幕を開けます。
第一部は、男女8人でやってきた無人島の様子が描かれています。その中の一人は、自分以外の全員を殺すつもりで島にやってきていました。しかし、2日目の朝。自分ではない誰かが殺した死体が見つかるのでした。
犯人は誰なのか。自分以外にも殺意を持っていた人物がいたことに驚きと戸惑いも感じながら、男は犯人探しを始めるのでした。
そして、この事件がある程度解決したタイミングで第二部へ。この時点では第一部の謎は完全には明かされていません。そして、第二部との繋がりが見えてきませんでした。しかし、徐々にリンクがわかるようになってきて、最後には一本に繋がっていきます。
400ページを超える少し長めの作品なのに、まったく中だるみがしません。それどころか、読む手が止まらない、先が気になる、素晴らしいミステリでした。
【感想】自分の代わりに殺人をしているのは誰?二部構成の重厚なミステリ(荒木あかね『ちぎれた鎖と光の切れ端』)46.知念実希人『硝子の塔の殺人』
地上11階、地下1階のガラスの館で起こる連続殺人。登場人物の職業は医師、刑事、ミステリ作家、編集者など、いわゆるクローズドサークルミステリに出てくるものばかり。狙っているとしか考えられないような設定です。
ミステリが好きなら思わずニヤッとしてしまうような表現が各所にあり、謎解きではない読み物としても楽しいです。
ただ、本書の最大のみどころは謎解きが二転三転では済まないくらい反転しまくるところです。一通りの謎がわかったと思ったらそこから更なる捻りが加えられます。
最後の最後まで騙されていましたし、真実を知った時は一瞬わけがわからなくなりました。2021年のナンバーワン小説でした。
【感想】クローズドサークルの新境地!想定外のオチ(知念実希人『硝子の塔の殺人』)47.岡崎琢磨『紅招館が血に染まるとき The last six days』
人型のアバター=バタフライが生息するVR空間〈バタフライワールド〉。この世界には、ログアウトを一切しないで生活を続けている住人がいるという噂があった。バタフライワールドにずっといたいと願うアキは、ログアウトをしない人が住む館を目指すが…。
VR空間を舞台にした特殊設定ミステリ。この空間では絶対に暴力を振るうことができないようになっていた。にもかかわらず、館の住人が死体で発見されてしまう。
設定がとにかくよくできている作品。よく考えればわかったかもしれないという良いラインで伏線回収とネタバラシあるので、爽快な気分になれます。
48.くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』
不幸な境遇にいた姉妹。姉は貧しい中で育ち今の暮らしも裕福ではありません。そんな時、妹が何者かに殺されたという連絡を受けます。虐げられ続けてきた私たちが、なぜこうも同じ目に遭い続けなければいけないのか。
事件の犯人は誰なのか。そして何のためにこんな事件を起こしたのか。
帯に書かれているのは「二転三転四転五転の展開」という謳い文句。そんなに展開するミステリなどそうそうありませんが、本作はその通りの内容になっていました。予想外のどんでん返しが何度も起こる素晴らしいミステリです。
誰もが怪しく見えるミスリードや、ラストのための伏線の数々はお見事でした。
【感想】どんでん返しが止まらない!連続殺人の影に潜む真実とは?(くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』)49.井上真偽『アリアドネの声』
巨大地震で地下に取り残された女性。彼女は「見えない・聞こえない・話せない」の3つの障害を持っていたのでした。彼女を救助するために、チームが発足し、ドローンを使った救助が始まる。
しかし、救助活動が進んでいくにつれて、ある疑惑が浮上します。実は、彼女は障害を抱えていないのではないか?
緊迫した状況での救助を描きながらもミステリとしての謎解きも楽しめる作品。そして最後には予想していなかったオチが待ち構えています。
自分たちはさまざまな視点でものを見えているのかと少し考えさせられもする。そんな物語でした。
【感想】想像できないラスト!見えない・聞こえない・話せない女性を救助せよ(井上真偽『アリアドネの声』)50.藤崎翔『逆転美人』
美人だったせいで、人生が不幸になってしまった女性。娘の教師に襲われた事件をきっかけに発表した書記という体裁の作品です。彼女の不幸な生い立ちや、事件にいたるまでの話が心が痛くなるほどに書かれています。
ストーリーも面白いのですが、ミステリというよりは人間関係を描いた様子がメインなので、謎解きの要素は少ないかもしれません。
ただ、本作の肝は、紙の本ならではのトリックでしょう。内容がわかった時には読み返していること間違いなし。壮大な仕掛けにはかなり驚きました。
51.藤崎翔『お隣さんが殺し屋さん』
専門学校に入学するために上京してきた美菜は、隣に住む雄也に一目惚れをしてしまいます。しかし、雄也の部屋に銃弾があるのでした…。
タイトルにある通り、殺し屋が隣に住んでいるという状況の作品。殺し屋だとバレないように行動する姿や仕事のシーンが面白いです。そして、本作は300ページを超えたところから世界が一気に反転します。想像していないどんでん返しをぜひ楽しんでください。
52.降田天『女王はかえらない』
小学校でのスクールカーストを題材にしたミステリ。第一章「子どもたち」、第二章「教師」、第三相「真相」という3つの章で構成されている作品です。
マキという女子児童がクラスのトップに君臨しているクラスにエリカという転校生がやってきたことでクラスに徐々に変化が起こります。そして、夏祭りの日にとんでもない事件が起きてしまいます。
第二章、第三章と視点が変わって話が進んでいきますが、まったく想像していなかったことが起こっていて、伏線の数々が、ラストであなたを待ち受けています。
安心して読み進めて騙されましょう。また、タイトルの意味もかなり秀逸でした…。
【感想】伏線が多すぎる!スクールカーストを舞台にしたミステリ(降田天『女王はかえらない』)53.米澤穂信『王とサーカス』
ジャーナリストが主人公の作品でネパールを舞台にしています。「海外が舞台か…」と敬遠をする人がいるかもしれません。しかし、それはとても勿体ないです。
ネパールで起きたある殺人事件の謎を追うのが本作の大きなテーマですが、そこまでの過程がとても素晴らしいですし、人間ドラマとして一級品。海外を舞台にしているからこその展開もあるので、謎解き好きは読んで後悔しません。
ちなみに、本作は最後の最後にとんでもないどんでん返しが待ってますのでお楽しみに。犯人が明らかになる過程以上にこのオチには痺れました。
【感想】ジャーナリストの本質とは?王室で起きた事件の謎に挑む(米澤穂信『王とサーカス』)54.アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』
言わずと知れたミステリーの名作。面識のない十人の男女が孤島に集められて、マザーグースに見立てられて、殺されていく。一人ずついなくなっていく島で、最後には誰もいなくなってしまう…。
わかりやすいミステリーの構図なので、最後までドキドキして楽しめる。現代の作品にも影響を与えている素晴らしいミステリー作品なので、どんでん返しが好きなら読むのは必至です!
55.アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』
国籍も身分もさまざまな人が乗り合わせているオリエント急行。どこか不思議な空気感が漂っている中、乗客の一人である富豪の男性が何者かに殺されてしまう。
名探偵ポアロが捜査に乗り出すものの、全員にアリバイがある。犯人はどんなトリックを用いたのか?
『そして誰もいなくなった』と同じく、後世に影響を与えている素晴らしいミステリー作品。人間関係を描いた作品にもなっており、徐々に真相がわかってくる解決パートは鳥肌ものです。
56.アガサ・クリスティ『アクロイド殺し』
名士のアクロイドが殺されている姿が発見された。医師のシェパードは警察の調査を記録していくが、事件は迷宮入りし始めている。そんな時、名探偵のポアロが事件の捜査に乗り出すことになり…。
賛否両論を生んだミステリーの傑作です。「え?こんなことになるの?」と思わずなってしまうようなオチが待ち構えています。あるいちジャンルの先駆けにもなっているので、ぜひ読んでみてほしい。
57.島田荘司『占星術殺人事件』
密室で殺された画家、そして彼の娘が6人とも殺されてしまう。しかも娘たちは体の一部を切断された状態で埋められていた。犯人は一体誰なのか?
40年も解かれていなかった事件に、名探偵の御手洗が挑む。島田荘司さんのデビュー作です。本格ミステリで有名なだけあって、トリックの素晴らしさが群を抜いています。こんなトリックを使っていたなんてまったく想像がつかないです。
58.島田荘司『斜め屋敷の犯罪』
北海道の最北端・宗谷岬にある館。傾いていることから、斜め屋敷と呼ばれている。そこで起こったのは密室状態での殺人事件。どんなトリックが用いられていたのか?
『占星術殺人事件』と同じく、奇想天外で大胆なトリックが素晴らしい作品。いたる所に謎を解くための伏線が張られているので面白いです。
59.市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』
どんでん返しだけではなく、犯人当てミステリとしても楽しめる本作。
3つの視点で進む物語。1つは事故に遭遇したジェリーフィッシュの様子。もう1つは事故の捜査をする警察の様子。そして、犯人が過去の回想をするシーンです。
徐々に犯人の動機がわかると同時に、誰が犯人なのかもわかる仕掛けになっています。『十角館の殺人』や『そして誰もいなくなった』などの名作はもちろん、他のミステリ作品もうまく使ったトリックでした。
60.市川憂人『ブルーローズは眠らない』
『ジェリーフィッシュは凍らない』の続編になっている作品。本作も複数の視点で話が進んでいきます。
開発ができないとされている青いバラが出来上がったとして、2人の人物が名乗りを上げる。しかし、そのうちの一人が密室状態で殺されてしまいます。
犯人はどのようなトリックで事件を起こしたのか?というのが大きな謎ではありますが、これだけでは終わりません。視点がわかれているからこその、どんでん返しがあります。
61.阿津川辰海『バーニング・ダンサー』
捜査一家にいた永嶺スバルは、コトダマ犯罪課に異動することになる。そこで彼を待っていたのは、仲良し姉妹、田舎の駐在所から来た好々爺などの警察には不似合いの人々だった。
そして、最初の事件では、全身の血液が沸騰した死体と、炭化するほど燃やされた死体があったのだった。
特殊能力を使える人類が100人存在することになった世界。SPECのような設定で進んでいく警察小説です。堅苦しい雰囲気があまりなく、どちらかというと、読みやすい文体です。
62.阿津川辰海『名探偵は嘘をつかない』
探偵の弾劾裁判が舞台です。探偵がいることが当たり前となっている世界で、探偵が悪事を働いたら、資格をはく奪されてしまうという設定です。
そんな中で、探偵の阿久津は、証拠を捏造したという罪で、裁判にかけられることになります。
先が読めない作品なので、気になってどんどん読めてしまいます。そもそも阿久津は証拠を捏造したのか。したとしたら、何のためにどのようにしたのかなどが絡み合っています。
しかも後半には、ここで紹介した以外の、とんでもない展開も待っていました。ミステリ好きにはおすすめの一冊です
63.阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』
謎解きに重点を置いたミステリなんですが、さまざまなジャンルの謎が展開されていきます。同じ作風ではなく、本当に色んなジャンルでの謎解きがあります。
たとえば、表題作では、透明人間が突然変異で生まれるようになった世界が舞台です。ただし、彼らは薬とメイクで透明ではないような生活を必須とされていた。
そんな中、透明人間の女性は夫に内緒で、ある人を殺す計画していた…。透明人間の彼女はどのようにして現場から消えたのか?を考える物語です。
透明人間という設定をうまく用いて、論理的なアプローチで事件が解決されます。どの作品でも共通しているのは、提示されていた謎が、仕掛けられていた伏線をもとに鮮やかに解決に導かれていく点です。
64.道尾秀介『雷神』
小料理店を営んでいる男性は、忘れたい記憶を持っていた。それは、母の不審死と翌年に起きた村の有力者の毒殺事件。そして、15年前に起きたある事故。
そんなある日、男性は謎の脅迫電話を受けることになる。それは15年前の事故に関連するもののようだった。過去に起きた出来事を探るにつれて、男性は知らなかった真実に辿り着く。
過去の出来事がすべて交錯する時に、雷に打たれたかのような衝撃が待っています。どんでん返しはもちろんのこと、最後の一行、二行がとにかく強烈です。
65.乾くるみ『セカンド・ラブ』
『イニシエーション・ラブ』をすでに読んでいる人でも、この作品を読み終わっているという人は少ないと思います。まだ読めていない人は、『セカンド・ラブ』も読んで欲しいです!
作品自体は繋がっておらず、独立した物語となっています。内容としては、二人の女性の間で恋心が揺れ動いてしまう男性の話です。
もちろん、そんなラブストーリーだけに、話に終始しません。本作も、最後にとんでもないことがわかります。
66.乾くるみ『リピート』
現在の記憶を持ったままの状態で10か月前に戻る、「リピート」ができるようになった男女。「リピート」によって、それぞれ好きなように過去を変えるのかと思いきや、いきなり事件が起こる。
「リピート」をしたメンバーの1人が事故で亡くなってしまう。その後も事件は続き、別のメンバーも次々と死んでしまう。
「リピート」をしなかったら起きなかったはずの事件が次々と起こっていく。何者かが「リピート」をした者だけを狙って事件を起こしているのか。目的は一体何なのか。
タイムリープを題材にした特殊設定ミステリ。事件の真相がかなり意外でした。盲点とも言える角度からの衝撃がやってきます。そして、読後の喪失感も…。
67.藤崎翔『神様の裏の顔』
神様と呼ばれる学校教師のお葬式。しかし、参列者たちは、彼は「実はとんでもない悪人だったのではないか?」という疑念を持つことになります。
怪しさを感じるまでの過程も面白く、最初の掴みからして上手。登場人物の語りで話が進むのですが、文体が軽いのでスラスラ読めます。小説読まない人でも抵抗感はないはず。
そして、どんでん返し。まさかまさかの展開でゾッとしました。伏線が効き過ぎていて怖くなります。世界観が一変すること間違いなし。
【感想】神様は極悪人なのか?ゆるいテンポの先にある驚愕のラスト(藤崎翔『神様の裏の顔』)68.澤村伊智『予言の島』
一度目はミステリ、二度目はホラーという謳い文句の一冊。その通りの作品でした。
有名霊能者によって、「死人が出る」と予言されている島を訪れた主人公たち。異質な雰囲気の漂うそこで友人の一人が水死体となって発見される。この島では何が起こっているのか…?
最初に読んだ時には、ラストで衝撃的な事実が明かされる。そして、その事実は本書がホラーになることを指し示していました…。
69.今村昌弘『魔眼の匣の殺人』
未来を予知できる・サキミ様という存在がいる人里離れた施設が舞台。サキミ様の予言は絶対に外れない特別なものなのでした。そんな彼女は「あと二日のうちに、四人が死ぬ」という予言をします。
その時、施設にいたのは九人。まさかそんなことがあるわけないと思っていたのもつかの間、施設は外界から隔離された状態になるのでした。そして一人目の犠牲者が出てしまう。予言の通りにあと三人が死んでしまうのか…?
そんな時、来客者のうちの一人の女子高生が名乗りを上げます。彼女もサキミ様のように、未来を予知する能力を持っていたのでした。
予言の通りに人が死んでいくという一風変わった状況を題材にしたミステリです。本作でも、論理的な解決パートは健在。よく練られている真相が、あなたを待っています。
そして、解決後にもちょっとしたひと捻りがあるのも本作の魅力です。思わず唸ってしまった展開をぜひ楽しんでみてください
70.今村昌弘『兇人邸の殺人』
廃墟にそびえるテーマパークの中から脱出ができなくなってしまった。原因は、この世のものとは思えない殺人鬼の存在でした。抗えない者への恐怖を感じる、ある種ホラーのような雰囲気もある作品でした。読んでいてドキドキするシーンが多々あります。
また、閉鎖空間から身動きができない状態で、人間による殺人事件も発生してしまいます。極限状態の中で、なぜ殺人を実行したのか。犯人の正体と目的。そして、どのように犯行を行ったのか。
特殊設定を活かした本格的なミステリを堪能できる作品です。
また、個人的には、過去2作よりも衝撃度は高いと感じました。なんとなく予想していた部分はありましたが、それを遥かに超える真実が最後に姿を表します。まさかこんなことになっていたとは…。こうした感想を抱くこと間違いなしです。
71.斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』
天使が、作中の世界では至るところに存在しています。そして、基本的には飛び回っているだけで何もしてきません。しかし、二人以上の人を殺すと、殺人犯の足元に地獄の炎が出現し、天使によって炎の中に引きずり込まれます。
つまり、この世界では絶対に連続殺人を起こすことはできないのです。連続殺人をした時点で犯人は天使に殺されてしまうからです。
ただ、この作品ではかなりの数の殺人事件が起きます。犯人はどのようにして天使のルールをかいくぐって人を殺していったのか。このトリックこそが本作の肝です。事前にルール説明もしっかりあるので、なんとなく、トリックをイメージはできますが、それを超える真相があるので驚きがたくさん。
72.結城真一郎『プロジェクト・インソムニア』
睡眠に関する事業を展開する会社の人体実験。それは夢の世界(ユメトピア)で90日間過ごすというものでした。寝ることで、1日に1回はユメトピアに行くことができる。
人体実験に参加した7名。ここではこの7人が同じ世界を過ごせるという空間でした。もちろん、夢の中で死んでも、現実世界で死ぬことはありません。そのはずなのに、参加者が殺されていくという事件が発生してしまいます。犯人はどのようにして、参加者を殺しているのか?
現実世界で殺人事件が起こるというわけではありません。本作では現実世界では不審な死を遂げているのです。つまり、ユメトピアの中で殺されている。夢の中で死ぬはずはないのに、なぜ殺人事件が起きてしまうのか。
73.西澤保彦『七回死んだ男』
ランダムで同じ1日を繰り返してしまうという特殊体質の持ち主である久太郎。彼は、祖父が殺されてしまう日を何度も繰り返すことになります。何とか祖父の死を防ごうと奮闘するのですが…。という作品です。
タイムリープものとしても有名な本作ですが、設定を駆使した最後のどんでん返しが衝撃的です。ラストの真相パートではとにかくビビりました。
結構ヒントもあったはずなのですが、すっかり騙されました。複雑に絡み合った結末でしたが、わかりやすく説明されているので、意味がわからないとはなりません。とても上手です。
74.西澤保彦『神のロジック 次は誰の番ですか?』
ある学校が舞台の物語。そこでは各国の子どもたちが、通常の授業に加え推理力を試されていた。そんな中で、学校で次々と殺人事件が起きてしまう。犯人は一体誰なのか。そして、この学校の存在意義とは何か?
子どもたちは、なぜ集められたのかなどの謎があり、全貌が明らかになったときには、大きなどんでん返しがあります。想像していたものとは違うオチになっているはずです。
75.道尾秀介『シャドウ』
父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?
意外な展開の連続。謎がさまざまな角度から提示されては解かれていき、伏線にも効いている。暗澹たる作品なのでどんよりとしたミステリが読みたい人にはおすすめです。
76.道尾秀介『ソロモンの犬』
本作は、喫茶店パートと事件を振り返る過去の回想が交互に語られます。その中で、前半はオービーがとった行動の謎が中心です。誰かが事故に見せかけて、事件を仕組んだのではないか?など、様々な見解が語られます。
しかし、事件はこれだけではありません。話が進むにつれて、新しい事件が起こり、また別の謎が姿を表わします。読んでいて飽きない展開なので、ページをめくる手が止まりませんでした。
77.麻耶雄嵩『神様ゲーム』
転校生の鈴木太郎は自分のことを神様と称する。彼は全知全能なので、世の中のすべてがお見通し。そして、その予言の通りに殺人事件が起こってしまう。
神様という特殊すぎる設定を用いたミステリ。そして、オチがとても強烈な作品です。強烈というか、まったくわけのわからない状態に放り出されるという感じが近いかもしれません。
事件の犯人は誰だったのか。作品のラストでは一体何が起こっていたのか。読後の衝撃が半端ではありませんのでご注意ください。
【感想】神様の言うことは絶対!問題だらけの児童書(麻耶雄嵩『神様ゲーム』)78.麻耶雄嵩『さよなら神様』
『神様ゲーム』の続編にあたる作品。ただし、話は独立しているので、前作を読まなくても問題ありません。本作は連作短編集となっており、前作同様に神様の鈴木太郎が登場します。
そして、どの作品でも「犯人は○○だよ」という鈴木のセリフから始まります。
最初の一行目に犯人が書かれている。かなり異質ではありますが、犯人がわかっている倒叙ミステリです。しかし、この倒叙ミステリという設定がうまくいきてきます。
特に「バレンタイン昔語り」のオチは衝撃的でした。予想外どころではありません。まったく構えていなかったところから考えもしなかった事実が浮かび上がってきます。
79.早坂吝『しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人』
6つの事件に対して、そこにいるのは7人。全員が自分は犯人ではないことを主張するが、そんな中で一人ずつ殺されてしまう…。
迷宮牢の事件とは別で、前半ではしおかぜ市で起こった一家の殺人事件についても描いています。この事件と迷宮牢の事件のリンクもあり、最後には驚きの展開があります。
80.杉井光『世界でいちばん透き通った物語』
大御所ミステリ作家を親に持つ青年の物語。父が最後に遺した作品を探すことになるのだが、それは「世界でいちばん透き通った物語」として書いていたらしいのだが…。
遺稿探しをするにつれて、父が遺そうとしていたある秘密と祈りがわかってくるのだった。
本作も紙の本だからこその仕掛けが素晴らしい作品。途中で違和感に気付いたとしても、最後にそういうことになっていたのかとわかるところまで含めて素晴らしい一冊でした。
81.東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』
オーディションに合格した男女7名。ペンションにやってきた彼らはそこで舞台稽古をすることになる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇を舞台にしているが、実際にペンションでは1人ずつ仲間が消えていく。
最初は芝居だと思っていた面々だったが、途中で本当に事件が起こっているのではないかと疑惑が生まれる。この場所では一体なにが起こっているのか?
82.城平京『名探偵に薔薇を』
二部構成のミステリー作品。第一部も第二部も、どちらも論理的に犯人を導き出す流れはとても楽しめました。ただ、第一部を伏線として、第二部は物語が進んでいきます。このため、第二部では物凄いことが起きています。
本格推理が好きという人はトリックで楽しめるし、少しひねったミステリが好きという方も満足できる仕掛けが施されています。読後の何とも言えない感じを存分に味わってみてください。
83.浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』
人気企業の最終選考。それは話し合いによって内定者を1名決めるというものだった。
選考に備えて親睦を深めた六人の大学生たちだったが、突如として敵同士になってしまう。誰もが内定を欲しいと考えているため、議論は平行線を辿ってしまう。
そんな時、就活生の六人の「罪」が何者かによって告発されていく。罪の告発をしているのは誰なのか。そして何のために…?
犯人が誰なのかは言わずもがなですが、動機やそこにいたるまでの展開が見事にハマっている作品。後半は伏線回収が止まらないので、たまりませんでした…!
ミステリとしての面白さだけではなく、人としての在り方や自分の立ち回りについても考えさせられる一冊で
84.吉田修一『パレード』
都内の2LDKに暮らす男女四人の若者達の物語。それぞれの視点で語られる群像劇になっています。本音を明かさず、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活ですが、そこに一人の男が加わることになり…。
細かい謎が散りばめられている作品で、わかりやすいミステリーというわけではありません。しかし、最後には大きな衝撃が待ち構えています。読み終えた後は少し呆然としてしまうかもしれません。
85.米澤穂信『インシテミル』
高時給につられてやってきた十二人の男女。ただ過ごすだけでも、十分なお金をもらえるのですが、そこでは人を殺すと時給が上がるルールがありました。
犯人だとバレてしまうと、通常時よりも時給が下がる。犯人を見つけると時給が上がるなどのルールがたくさんあり、本格ミステリを疑似体験(実際に死ぬので疑似ではないですが)するような形で実験は進んでいきます。
誰も殺さなければ平穏に過ぎるはずなのですが、3日目の朝、最初の犠牲者。これを皮切りに殺人が連鎖していきます。果たして、犯人は誰なのか?
この作品が面白いのは、推理小説を痛烈に皮肉っている点です。様々な面でミステリのお約束をバカにするような展開が見受けられもします。
各人に凶器が配られるシーンがあるのですが、そこにはクスっとなるようなことがありました。もちろん犯人は誰なのか?というミステリ自体の解決もとても鮮やかでした!
【感想】推理小説を皮肉った新本格ミステリ(米澤穂信『インシテミル』)86.伊坂幸太郎『ホワイトラビット』
前半からじっくり仕込まれていた伏線の数々。それらが中盤以降にかけて少しずつ回収されていきます。一気ではないので、一つ一つネタバラシされていくような展開なのです。
「え、それってそんなことだったの?」「さっき思ってたことと全然違うじゃん!」
こうした展開が中盤からはずっと続き、ページをめくるたびに新展開が起こります。読んでいて飽きが全く来ないし、それどころか、読み返したくなるくらい、練りに練られた仕掛けが最高過ぎました。
87.伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』
未来が見えるはずの案山子が何者かに殺されてしまった。自分がどうなるかわかるはずなのに、なぜそのまま受け入れたのか?
魅力的なキャラクターたちとテンポの良い文章が魅力の伊坂さんのデビュー作。謎を解くまでの過程で明らかになる驚きの真実。急展開でわかるのではなく、冒頭から伏線が張ってありました。だからこそ驚きはひとしお。アッと驚く展開の数々に、ページをめくる手は止まらないことでしょう。
88.山口未桜『禁忌の子』
救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか、武田は旧友で医師の城崎と共に調査を始める。
第34回鮎川哲也賞受賞作で2024年にSNSで大きな話題になった作品です。プロットが素晴らしくて、一気に作品に没頭できるはず。そして、すべてがわかった後のタイトルの意味が秀逸です。
89.湊かなえ『少女』
高校二年生の夏。親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の話を自慢に感じた由紀と敦子。
由紀は「人が死ぬ瞬間」を見てみたいと思う。自殺を考えたことのある敦子は、死体を見たら、死を悟ることができ、強い自分になれるのではないかと考える。由紀と敦子はそれぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行く。
途中ももちろん面白いですが、読み終えた後に繋がる爽快感が素晴らしい一冊です。
90.中村文則『去年の冬、きみと別れ』
猟奇殺人事件の被告の面会をするライターの話。彼はこの事件について調べて、記事にしようとするのですが、不可解な事件と関係者たちに面食らってしまう。そして、別の事件の足音も迫って来ていて…。
どんでん返しがすごいのですが、タイトル回収も含めた上で、世界の反転が起こります。
まったく思ってもいなかった事実がそこにはあって、最後には「そんな風に話が進んでいたなんて…」となること間違いなしです。
だからこそ、このタイトルの意味がわかった時には、鳥肌モノの衝撃がありました。
91.まさきとしか『あの日、君は何をした』
ある日の深夜。連続殺人犯の容疑者に間違われた息子が事故死をした。しかし、そもそも彼は何でそんな時間に外にいたのか。タイトルの通り、「あの日、君は何をした」のか?を追い求める母親の話。
そして、その十五年後に起きた殺人事件。まったくの無関係に見える二つの事件が紐づいて、最後には衝撃の事実が浮かんでくる。
最後に明かされる「あの日、君は何をした」の意味。読後に衝撃を残す余韻を伴っていました。読み終わった後は、しばらく呆然としてしまいました。
92.井上真偽『ぎんなみ商店街の事件簿』
3つの物語が収録されている連作短編集。兄弟編と姉妹編の2つがありますが、どちらもぎんなみ商店街で起こった事件を描いています。
しかも事件はどちらも同じものです。それなのに、事件の真相は異なるのです。
たとえば、最初の物語。ここでは、商店街のお店に車が突っ込んだ事件が描かれています。この事故で運転手は死亡してしまいますが、それ以外に不可解な点が多々あるのでした。
兄弟と姉妹のそれぞれの視点から事件を推理していく。どちらも謎の解明がしっかりされるのに、まったく違う角度から真相がわかるようになっている。
2冊読んですべての真相がわかるようになっている。珍しさがありつつも、楽しめる素敵なミステリでした。
93.芦沢央『火のないところに煙は』
5つの短編ホラーが収録されている小説。どれも実話風です。第一話では著者本人の体験した話が語られます。
ここがきっかけとなり、他人の体験した怖い話を取材して、一冊の本にしていこうという流れになります。そして最後には、恐ろしいラストが待ち構えていました…。5つの独立した話がそれぞれどこかでつながっている、連作短編集です。
最初に書きましたが、どれも実話のように描かれています。フィクションのはずなのに、本当にどこかで起こった話なのではないかという語り口で、とても引き込まれました。
どれも意味がわかるとゾッとする上に、最後には驚きが用意されている。どんでん返しが好きな人にもおすすめのホラーでした。
94.大島清昭『影踏亭の怪談』
心霊ライターの姉の自宅を訪ねた僕は、密室の中で両瞼を己の髪で縫い合わされて昏睡する姉を発見する。この常識を超えた怪事件は、彼女が取材中だった旅館〈影踏亭〉に出没する霊と関連しているのか?
4つの短編が収録されている連作短編集。怪談の中にあるミステリーを解くという物語で、どの話も謎は解けているのに怖さが残る作品。ホラーミステリが好きな人にはぜひ読んでほしい一冊。
95.中山七里『連続殺人鬼カエル男』
カエル男を名乗る者から行う連続殺人の真相を追う物語。衝撃度は、受賞作の『さよならドビュッシー』以上でした。キレイに張られた伏線と衝撃のラストのインパクトが強い『さよならドビュッシー』。一方で本作は、どんでん返しに続くどんでん返しの応酬が凄まじい作品でした。
真実だと思っていたことがひっくり返され、驚きの事実が明らかになる。その先には二重、三重のどんでん返しが用意されていました。「そういうことだったのか!」で終わることなく、怒涛の伏線回収が行われる後半は息つく暇もありません。
96.乾緑郎『完全なる首長竜の日』
第9回の『このミステリーがすごい!』大賞の大賞作品。自殺を図って植物状態になってしまった弟。淳美は植物状態の人とコミュニケーションが取れる器機を使って、意識不明の弟と会話をする。
弟はなぜ自殺を試みたのか。弟の真意を探ろうとするが、淳美だったが会うたびにはぐらかされてしまう。そして、何度かの対話をしていくうちに、徐々に自分の周囲が変なことになっていく。ここは現実なのか、それとも…。
97.阿部智里『烏に単は似合わない』
人間の代わりに八咫烏の一族が支配する世界「山内」ではじまった世継ぎの后選びを舞台にした物語。
宮廷のお話なのでミステリーなのか?となるかもしれませんが、侮るなかれ。最後には「え?」となるようなオチが待っているので、ミステリーやどんでん返し好きにも満足できること間違いなしです。
98.知念実希人『誘拐遊戯』
東京・白金で暮らす女子高生が誘拐された。身代金は5000万円。犯人は4年前の女子中学生誘拐事件の犯人「ゲームマスター」を名乗った。元警視庁刑事の上原真悟は、犯人から指名をされて、東京を駆け巡ることになる。
誘拐犯を探す、女子高生を救うためのスリリングな展開が面白くて、ページをめくる手が止まらないです。二転三転のどんでん返しがありつつ、最後にも衝撃的なオチがあります。
99.下村敦史『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』
社長室で社長が殺された事件。未亡人、記者、社員2人、運転手、清掃員、被害者遺族の7人がある廃墟に集められる。密室に閉じ込められた彼らのもとにスピーカーから音声が流れてくる。「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる。犯人以外は全員毒ガスで殺す」。
自分が犯人だということを自供し合うという斬新な設定のミステリー。自分が事件を起こしたことを話すという多重解決ミステリーは新鮮で面白かったです。最後まで濃厚な謎解きがあるので、ずっと作品を楽しめます。
100.アンソロジー『超短編! 大どんでん返し』
有名作家30名によるアンソロジー。30編のどんでん返しショートショートが収録されている短編集です。ショートショートなので、当たり前ですが、最後の一行で世界を反転させるものが多かったです。
最後の一行として、一番のおすすめは乾くるみさんの「なんて素敵な握手会」です。予想外すぎるオチが最後に待ち構えている。
見事に世界をひっくり返されました。そして、読み返してキレイに騙されていたことにも気づかされます。この他の作品でも、最後の一行で衝撃を用意している短編が多いのでおすすめです!
「騙されないぞ!」と思って読んでみてください!
どんでん返しが強烈な小説を50作品紹介してきました。まだ読んでいない、気になった作品があれば、ぜひ手に取ってもらいたいなと思います!
「騙されないぞ!」と臨んでも十中八九は騙されることでしょう笑。
尚、短編作品だけのどんでん返しランキングや最後の一行のどんでん返し集も以下でもまとめているので、短い作品を読みたい人はこちらも参考にしてもらえると嬉しいです。
【おすすめ10作品】短編で厳選!どんでん返しがすごい!おすすめ短編TOP10を紹介 【どんでん返し】最後の一行の衝撃!おすすめ小説9選!ラストでひっくり返るミステリ小説「騙された!」と思って爽快に思えるのは小説の中くらいのはず。本だから味わえる心地よい感覚を体験してみてください!