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【ネタバレ考察】道尾秀介『いけないⅡ』写真の意味と各話の真相を解説

いけない2ー考察

各話の最後に掲載されている、写真を見ることで話のオチがわかる短編集。その真新しさから話題になった道尾秀介さんの短編集『いけない』。(第一弾のネタバレ考察もあります)

【ネタバレ考察】道尾秀介『いけない』写真の意味と各話の真相を解説

今回はその第二弾となる『いけないⅡ』ネタバレを含む考察記事です。

大きな話題を読んだ”体験型ミステリー”第2弾。すべての謎がつながっていく。前作を凌ぐ、驚愕のラストが待つ!各話の最終ページにしかけられたトリックも、いよいよ鮮やかです。

今回は既に読み終えた人に向けた内容になっています。各話の写真の意味とそこから導き出される真相について考えてみました。そのため、あらすじや人物に関する情報は省略しています。

まだ読んでいない人は絶対にここから先は読まないでください!!!!!(かなりスクロールして下に続いています)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一章 「明神の滝に祈ってはいけない」の答え合わせ

最初に言ってしまうと、本作は叙述トリックが用いられています。桃花の視点と大槻の視点は1年ズレているのです。最後の写真に写っている干支を模した雪だるまがその証拠です。

桃花の章では、子(ねずみ)年ということが書かれています。しかし、最後の写真では牛の雪だるまが作られています。つまり、大槻の視点で描かれていたのは丑(うし)年です。

まずは、桃花の時系列から考えます。桃花が見つけた冷蔵庫の死体は、姉ではなく、大槻の母親のものでした。そして、この時、桃花は大槻に見つからないように冷蔵庫に隠れます。その際に、中指をケガしてしまいました。

この時に大槻から写真を撮られた桃花。これが最初の写真です。彼女は姉が帰ってくるように祈っていると言います。しかし、よく見ると指が9本しかありません。ケガがバレないように中指を隠していたのでした。その後、桃花は大槻によって殺害され、冷蔵庫に保管されることになってしまいました。

それから1年後。大槻は、冷蔵庫の母親と桃花の死体が露見することを恐れて自殺をするのでした。

時系列が同じであれば、大槻が緋里花を殺害し、桃花は逃げられたと考えられます。しかし、時系列がズレているので、桃花は大槻に殺害されてしまったのです。緋里花はあくまでもミスリード要員で、本作では行方不明ということ以外の情報はないです。

第二章 「首なし男を助けてはいけない」の答え合わせ

最後の写真は、天井から吊るされている人型の何か。人形にも見えますが、しっかりと指が描かれています。作中で人形はそこまでは作りこまれていないとあります。

そのため、真のおじさんが首を吊っているシーンと考えて間違いないでしょう。

では、なぜ彼は自殺をしたのか。それは、おじさんは真の発言を誤って理解してしまったからです。

真は、おじさんがタニユウを轢いてしまったのではないかと考えていました。その確認として「川を流れてったの……人間だったの?」と質問をしました。続けて「もしかして……殺しちゃったの?」とも。

この発言を、おじさんは、過去に自分が溺れた際に、真の祖父を殺したのか?という意味として理解してしまいました。甥の真に真実を知られてしまい、自ら命を絶ってしまったのでした。

第三章 「その映像を調べてはいけない」の答え合わせ

この話は、息子の死体はどこにあるのか?という謎が残る話です。息子が好きな花の下に埋めたというが果たしてどこなのか。作中の最後には、一輪きりの花の下に死体があると記されています。

これは最後の写真を見ればわかると思います。息子が本当に好きな花はコスモスでした。千木宅には座卓にコスモスの一輪挿しがあると描写されています。

つまり、死体は座卓の下に埋められているのです。

終章 「祈りの声を繋いではいけない」の答え合わせ

終章では、各話の登場人物たちが、ある祈りをします。

刑事の隅島は「自分に事件を解決させてくれるように」と祈り。

おじさんの死によって精神をきたした真は「声が戻りますように」と祈り。

千木智恵子は「どんなかたちでもいいから、ぜんぶ終わらせてほしい」と祈り。

緋里花と桃花の両親は「緋里花が無事に帰ってくるように」と祈り。(桃花は既に亡くなっているので…)。

これらの祈りが繋がったのが最後のシーン。火事によって声を取り戻した真。彼は緋里花のスマホを持って千木智恵子が入院している枕元に置いておいたのでした。このスマホは千木孝史が緋里花との繋がりを消すために持ち去ったものでした。

そこへかかってたのが最後の写真の電話です。なお、この電話は緋里花の両親が定期的に緋里花のスマホしていたものでしょう。つまり、この電話によって緋里花が千木孝史と繋がりがあることが隅島はわかりました。

結果として、隅島は事件を解決することができました。真は前述の通り、火事の際に声を取り戻しました。自身が逮捕されたことによって、千木智恵子の祈りも届きました。

しかし、ご存じの通り緋里花は死んでいます。無事に見つかることはなかったので、緋里花と桃花の両親の祈りは叶いませんでした。

実は彼らだけが明神の滝では祈っていなかったのです。それ以外の人物はみんな、明神の滝に祈った人たち。そのため彼らの祈りは届いたのでした。なお、祈った人の中には緋里花と桃花も含まれています。

第1章でおそらく緋里花が祈っていたであろう母の快方、桃花が祈っていた「姉が見つかりますように」という祈りも叶っていたのです。(無事かどうかは入っていなかったので…)

すべてがわかったら、後味が一気に悪くなりますね…。考察した結果イヤミスになるというなかなかに新しいタイプのミステリでした…。でも面白いから良いです!