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【感想】切ないだけではない!ビックリもさせてくれる恋愛小説(中田永一『百瀬、こっちを向いて。』)

乙一という作家を知ってますか?『夏と花火と私の死体』という奇抜なタイトルの作品でデビュー(実は16歳の時に書いた作品だったそう…)した人気作家です。

今回は乙一さんの別名義で発表された小説を取り上げます。

中田永一『百瀬、こっちを向いて。』です。

「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは―。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった…!」恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。(「BOOKデータベース」より)

青春を舞台にした、甘酸っぱくて、心が痛くなる。そんな4つの物語が収録されています。

百瀬、こっちを向いて。

人間レベル2の僕は、学校の美少女・百瀬陽と付き合うことになります。しかし、その関係は、幼馴染の先輩のための偽物の関係でした。互いに好きではない中で、関係を続ける二人でしたが…。

人間レベル2の相原と、美少女・百瀬とのいびつな関係を描いた本作。百瀬は宮崎先輩という人が好きだったのだが、彼には神林先輩という彼女がいた。

恋愛などしたことがない相原にとっては、偽の関係とは言え初めての彼女。次第に惹かれていき、恋を知ってしまいます。そこで描かれる心苦しさがなんとも言えません…。心理描写が素晴らしい作品です。

また、最後の最後にちょっとした驚きも用意されています。ゾッとするような真実もこの作品の見どころですね!

なみうちぎわ

海で事故に遭い、5年間意識を無くしていた私。当時高校生だった私は21歳、家庭教師で教えていた生徒・灰谷小太郎は16歳になっていた。かつては先生と生徒だった二人は、関係が逆転していた。親身に世話をしてくれる小太郎だったが、彼にはある想いがあった。

不登校の小学生だった灰谷小太郎の家庭教師をすることになった姫子。そんな彼女は海で事故に遭い、5年間意識を無くしていました。かつては生徒と先生だった二人の関係が、事故によって逆の関係になります。

小太郎は姫子のリハビリに付き合うなど優しく接してくれますが、姫子は小太郎のクラスメイトから「迷惑だ」と言われてしまいます。なぜ、親身になってくれるのか? 実は事故の背景には小太郎がありました。

この作品にもラストにちょっとした驚きがあります。それ以上に心が温まる男女の物語があって素晴らしいです。

キャベツ畑に彼の声

小林久里子は、バイトで北川誠二という作家のインタビューの書き起こしをすることになった。しかし、イヤホンから聞こえてきたのは知ってる声。密かに思いを寄せていた、国語教師の本田先生だったのだ。彼女は、先生に聞こうとするのですが…。

生徒と先生の物語。北川誠二という作家を介して描かれる物語で、これも切なさでいっぱいになりました。先生はなぜ隠して作家として活動をしているのか?

本作でもミステリ的なちょっとした展開が用意されていますよ!

小梅が通る

かつて自分の外見のせいで友人を失った春日井柚木。二度と同じ思いをしないように、ブスのふりをして学校生活を送っていました。しかし、ひょんなことからクラスメイトの寛太に普段の姿を見られてしまう。咄嗟に妹の小梅だと言い張るのですが…。

本作はクラスメイトの恋愛というシンプルなものです。冴えないクラスメイトの妹(本当は同一人物)に恋した寛太。どうしても会わせてくれと頼んだ結果、テストで点数を取れば調整すると言われます。

また、恋愛だけではなく、1人の生徒の葛藤も描かれています。

  • 柚木がなぜ、ブスのふりをしているのか?
  • みんながそれを知った時にはどう思うか?

青春小説として、読んでいてほっこりする。彼らの未来を応援したくなる。そんな物語でした。