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【感想】弟は未来予知できる?町に隠された秘密(米澤穂信『リカーシブル』)

日常の謎や、どこか不思議な設定、不穏な状況を舞台にしたミステリなど、幅広い作品を発表している米澤穂信さん。

今回はその中でも、特に奇妙な町で起こった物語を紹介します。

米澤穂信『リカーシブル』です。

越野ハルカ。父の失踪により母親の故郷に越してきた少女は、弟とともに過疎化が進む地方都市での生活を始める。だが、町では高速道路の誘致運動を巡る暗闘と未来視にまつわる伝承が入り組み、不穏な空気が漂い出していた。そんな中、弟サトルの言動をなぞるかのような事件が相次ぎ…。大人たちの矛盾と、自分が進むべき道。十代の切なさと成長を描く、心突き刺す青春ミステリ。(「BOOKデータベース」より)

タマナヒメ伝説と未来予知

中学進学と同時に地方都市に引っ越してきた、越野ハルカ。母親と弟と一緒にやってきたこの町には、タマナヒメという不思議な伝説がありました。

過去の記憶を保持している上に、未来予知ができるというタマナヒメ。しかし、過去の姫たちはみんな自殺してしまっているのでした。そして、今もタマナヒメは存在する。

この不思議な伝説の真実とは何なのか?

弟は未来がわかっている?

そもそも、ハルカがタマナヒメに関心を持ったのには理由がありました。それは、弟が未来予知をしていたのです。しかも、過去の出来事もわかっているような発言をするのでした。

なぜ、弟は未来予知ができるのか?

そして、自分が知らないはずの過去の出来事を知っているのか?

不思議な町のせいで、生まれた能力なのか、もともと備わっていた能力なのか。弟の謎を解明する目的もあり、タマナヒメ伝説を解こうとしたのでした。

どうしようもなくやるせない

伏線やどんでん返しが上手い作家さんなので、本作のラストにも、もちろん驚きのラストが用意されています。すべてが伏線だったといわんばかりの、真実にはかなり驚きました。

ただ、そのラストはとんでもなくやるせないです。不思議な町、不穏な状況ということもありましたが、ほのぼのした最後を想定してもいました。しかし、そんなに甘いものではなく、なかなかに強烈な展開が待ち受けていました。

ハルカたちがこれから歩んでいく未来を考えると、かなりしんどいなと思いつつ…。米澤節が全開の作品だなと感じました。