以前、名言の宝庫作品として取り上げた伊坂幸太郎さんの『チルドレン』。
【感想】奇跡を起こす大人たちの物語(伊坂幸太郎『チルドレン』)今回はその続編となる1冊を紹介します。伊坂幸太郎『サブマリン』です。
家庭裁判所調査官の武藤は貧乏くじを引くタイプ。
無免許事故を起こした19歳は、近親者が昔、死亡事故に遭っていたと判明。
また15歳のパソコン少年は「ネットの犯行予告の真偽を見破れる」と言い出す。
だが一番の問題は傍迷惑な上司・陣内の存在だった!
読み終えた瞬間、今よりも世界が輝いてみえる大切な物語。(「BOOK」データベースより)
伊坂作品でも随一のキャラ立ちをしている陣内。
チルドレンの続編となる本作でも、その存在感は衰え知らずでした。
2人の少年を軸に進む物語
本作は、2人の少年を中心に展開されます。
無免許運転で死亡事故を起こしてしまった19歳。棚岡佑真。
ハッキングを繰り返していた15歳のパソコン少年。小山田俊。
物語のキーとなるのは、棚岡佑真です。
彼は両親と小学校時代の友人を交通事故で失っていました。
そんな彼が事故を起こしたのは偶然なのか? それとも必然なのか?
陣内のキャラクターが本当に良い!
未成年の無免許事故という社会問題を題材にした本作。
重いテーマにも関わらず、しっかりと救いも含めて書き上げるのは伊坂作品のすばらしさです。
それに一役買っているのが陣内。40歳を超えても大人げなさは変わらずでした。笑
そんな彼だからこそ、1つ1つの言葉に重みや感情が込められています。
印象に残ったセリフを3つ紹介します。
「人の命は別の誰かの命では埋まらない」
「世の中は誤審だらけ」
「法律を守っている奴が全員良い奴か?」
伏線回収は相変わらずキレイ
キャラクターの際立ちはもちろんですが、ラストへの伏線回収もさすがでした。
棚岡くんが起こした事故の真相。事件に隠れていた意外な事実。陣内が過去にしていた約束。
すべてが最後には一本につながり、驚きの真実を教えてくれます。
重いテーマでもここまで持ってくるのは、さすが伊坂幸太郎だなと思いました。
『チルドレン』同様、気が落ちている時に読めばきっと元気になれるはずです。