たかひでの本棚
森博嗣『月と幽咽のデバイス』を紹介します。Vシリーズの3作目。
前作のレビューはこちら
【感想】Vシリーズの2作目！人形劇で起きた心理的密室の謎（森博嗣『人形式モナリザ』）
今回も密室で殺人が起こります。（S＆Mシリーズからそうですが、やっぱり密室殺人が多いですよね）
薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。瀬在丸紅子たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨な死体が、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。紅子が看破した事件の意外な真相とは。（「BOOKデータベース」より）
密室に加えて、若干の見立て要素もあります。狼男の伝説がある屋敷で起こる事件。惨殺死体は誰が何の目的だったのか？
狼男が犯人？密室で起きた殺人
狼男が出るという噂がある屋敷。そこのオーディオルームで密室殺人が起きます。被害者は血まみれで無残な姿をしていた。どう見ても人ではない“何か”の手が加わっているような死体。
しかも、現場は水で床が濡れていて、ガラスの破片が散乱していた。犯人は何のためにこんな手の込んだことをしたのか？狼男に見立てて人殺したのはなぜか？
奇妙な現場の理由と、実行トリックを考える物語。前の2作と比べると難易度が一気に上がったように感じました。
キャラクターの魅力が存分に発揮される
シリーズ3作目にして、徐々にキャラクターの個性がわかってきました。特に探偵の保呂草がどんな人なのかが、本作で明らかになります。割とまとも(?)だと思っていたら…。
そして、紅子の前夫・林を巡って起こる、紅子と林である七夏とのバトル。七夏も林との間に子供を産んでおり、これがまた厄介な感じになっている。犬猿の仲で繰り広げられる会話ややり取りが、第三者的には楽しめますね笑。
謎を残す感じがたまらない
尚、本作ではすべての謎は解明されません。もちろん、作中で大部分を占めているトリックや真相に関しては答えが提示されるのですが、そこから先にも踏み込まないといけないのです。作中の答えは全体の一部に過ぎません。
こうした、余白を残して読者にゆだねる感じがまた良い。このやり方は下手すると読者から反感を買うと思うのですが、個人的には好きな展開でしたね。結局どういうことだったのだろうか。考察のしがいがある、ラストです。
真相がわかったと思ったら、別の角度から可能性が浮かび上がってくる。最後まで読み応え十分な作品でした。
正直、本作を読むまではあまりのめり込めなかったVシリーズですが、少しずつハマってきた気がします。
次作のレビューはこちら
【感想】Vシリーズ4作目！トリプルミーニングのミステリ（森博嗣『夢・出逢い・魔性』）
