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【感想】150人を自殺させた女子高生の物語(斜線堂有紀 『恋に至る病』)

斜線堂有紀 『恋に至る病』を紹介します。

やがて150人以上の被害者を出し、日本中を震撼させる自殺教唆ゲーム『青い蝶』。その主催者は誰からも好かれる女子高生・寄河景だった。善良だったはずの彼女がいかにして化物へと姿を変えたのか―幼なじみの少年・宮嶺は、運命を狂わせた“最初の殺人”を回想し始める。「世界が君を赦さなくても、僕だけは君の味方だから」変わりゆく彼女に気づきながら、愛することをやめられなかった彼が辿り着く地獄とは?斜線堂有紀が、暴走する愛と連鎖する悲劇を描く衝撃作!(「BOOKデータベース」より)

タイトルやジャケットから想像するに、ラブストーリーかなと思った人もいるかもしれません。本作はがっつりミステリです。しかも、ラストは衝撃的でした。今回もネタバレなしで紹介していきます。

転校先で出会った少女

本作は寄河景という少女との記録を、宮嶺望という少年の目線で描いている作品。二人が出会った小学校のシーンから物語は始まります。

転校初日に緊張しすぎてしまい、自己紹介すらままならなくなってしまった宮嶺。そんな彼を助けてくれたのが景でした。

その後、宮嶺は景の人を惹きつける魅力を目の当たりにします。気付けば、自分も魅了されているのでした。

そんなある日、学校行事で起きたある事件をきっかけに、宮嶺はいじめの対象になってしまいます。死ぬことさえも考えた、宮嶺でしたが、景が救いの手を差し伸べてくれます。

そして翌日、人気のないビルから飛び降りて、いじめの主犯格が自殺してしまうのでした。

自殺ゲーム・青い蝶

本作で最も大事なキーワードが「青い蝶(ブルーモルフォ)」です。これは高校生になった景が考案した、自殺ゲームでした。

対象者は1日1つ与えられた課題に挑戦します。最初は簡単なものから始まりますが、徐々に課題はエスカレート。最終的には自殺するという課題さえもクリアしてしまうというものです。

このゲームを進める姿を最も近くで見ていたのが宮嶺でした。彼は小学校の頃からずっと景の近くにいました。

人を魅了するカリスマ性のある景が、人を自殺させるために力を発揮している。しかし、景の思想を知った宮嶺はそれを止めることはしませんでした。

次々と自殺者が相次ぎ、遂には150人もの人が自ら命を絶っていきました。そして、日本中に「青い蝶」の存在は知られていくのです。

読めば読むほど、寄河景という人間の魅力に惹かれていく本作。カリスマ性のある人物像が一貫して描かれており、清々しくなります。

後半は衝撃の連続

「青い蝶」について話が大きくなるにつれて、どのように驚きの結末を迎えてくれるのか、期待値がかなり上がっていました。

そして、後半。クライマックスに仕掛けられていた驚きが一気に起動します。騙されるというより、伏線がキレイに回収されていくので、とても爽快でした。

また、本作は、考察のしがいがありそうだなと思いました。内容はネタバレになるので避けますが、「登場人物が当時何を思っていたのか?」「ラストの意味することとは何なのか?」など、考えたら面白そうなネタがたくさんあります。

というか、後半のネタは読後のためにあると言っても過言ではないかもしれません。前半から練られていた描写を改めて確認したくなりました。