読み終えるのが惜しいと思った小説に出会った経験はありませんか?
- 登場人物はこの先どうなるのか?
- もっとこの人たちと同じ世界にいたい!
いくら感情移入ができる作品でも、ここまで感じられるものは少ないでしょう。
特に僕は「小説は架空の物語」と考えてしまうので、なかなかこのような作品に触れることがありません。笑
そんな僕でさえ「ずっとこの作品を読んでいたい!」と思った小説を紹介します。
恩田陸『夜のピクニック』です。
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。
それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。
甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。
三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。
学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。
本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。(「BOOK」データベースより)
歩行シーンを描いているだけなのに面白い!
80kmを夜通し歩き通す北高の伝統行事・歩行祭。
北高の生徒、甲田貴子はある思いを持って高校最後の歩行祭に参加していました…。
舞台が歩行祭ということもあり、描写だけを見ればただ歩くシーンを描いているだけです。笑
それでもこの作品は面白い!
それは、登場人物の心理描写の上手さと、そこに現れる謎の数々です。
謎の応酬にキリがない!
本作の大きなテーマは以下のポイントです。
- 貴子の抱える秘密は何か?
- 賭けとは何なのか?
- そして、賭けはどのような結末を迎えるのか?
秘密が明らかになると、次はどんな賭けをしていたのか?という謎が現れ、最後に賭けはどうなるのか?という気になるポイントが出てくるのです。
上に挙げた他にもたくさんの謎があります。
- 昨年の歩行祭で撮れてしまった心霊写真の謎
- 転校した友人が残したおまじないの正体
- 他校の生徒を妊娠させた犯人は誰?
これらについても、解決されれば新しい謎が顔を出します。
キリがない謎の応酬は読んでて面白いですし、先が気になって仕方なくなります。
大ヒットゲーム、レイトン教授シリーズに似ているなと何となく感じました。
読み終わりたくないと思った小説
ここまで紹介した通り、本作はミステリ要素が多い小説です。
ただ、それだけではありません。
貴子を中心とした青春ドラマも見どころになっています。
恋愛、友情、家族。高校生ならではの視点で進む物語は読んでいて心が温まります。
舞台は歩行祭なので、行事の終わりが物語の終わりです。
心地よいラストですが、読み終わるのが惜しくて仕方ありませんでした。
私以外にも、似たような感想の人は多くいますので、多くの人がこの感情を抱くのではないかと思います。
変な言い回しかもしれませんが、みんなと一緒にもっと歩行祭を過ごしたい!と感じられるはずです。笑