2022年にはSNSでも話題となり、2023年の本屋大賞ノミネートにノミネートされている、夕木春央さんの『方舟』。
衝撃的なラストやそこにいたるまでの伏線もさることながら、テーマとしても面白い一冊です。
ただし、内容的にネタバレはNG。感想を好きに言える機会はありません。それなら、読み終えた人たち同士で好き放題に感想を言い合おうじゃないか!
ということで読書会を開催しました。
参加いただいたのは私を含めて5名(男性2名、女性3名)。ミステリ好きの方が多かったですが、本屋大賞を理由に読んだ方にもご参加いただきました。
今回はそのレポートをお届けします。以下、ネタバレが含まれますので未読の方はご注意ください。
表紙に隠された意味
まず最初に話題にあがったのは、表紙に隠されていたことです。
方の字の右側が若干赤くなっています。これは血生臭い事件の暗示になっていたのではないか…?という説。
また、背表紙には青色がページの半分近くを覆っています。これは、どんどん侵食してくる水の様子を表わしているともとれます。
また、『方舟』ではありませんが、呉勝浩さんの『爆弾』の表紙にも凝った工夫がされているそう。電子書籍ユーザーとしては、こういう時は紙の方が良いよなと感じる一幕でした。
実はこんな伏線があった!
続いては印象に残ったシーンの話へ。やはり麻衣の発言に注目している方が多かったです。
最初に出たのは、裕哉の死体が見つかった直後のシーン。花が誰かが残るのではなく、誰かが助けを求めに行けば良いのではないかと言うシーン。そこで麻衣はこのように返しています。
でも、それだと間に合わないかも――(P.64)
続いてさやかが、恨みを持っていた誰かが裕哉を殺したのではないかと言い出します。それに対しての麻衣のセリフがこちら。
恨んでいたなら、今こんなことをするのはおかしいんじゃないかな。あのさ、私たち、誰か一人ここに残らないといけないんでしょ? それってみんな、どうやって決めるつもりだったのかな?(P.69)
この時点で麻衣は、誰か1人が残るように、もっと言うと犯人が残るように誘導を始めているのです。最初は何てことないセリフですが、二周目だと重みが変わってきます。
さらに、麻衣が柊一よりも先にモニターの入れ替えができていたことを示唆する伏線も存在していました。
犯人が、僕より先に監視カメラの映像を確認していたことや、(中略)気付いていたことは、十分考えられるのだ。(P.71)
また、ラストまでは探偵役だった翔太郎ですが、裕哉が殺された後にこんなことを言っていました。
(前略)ヘタな憶測が原因で全員が死にかねない(P.88)
ここには全然気がつきませんでした。綾辻行人さんのネタバレ解説でコケにされた探偵と書かれていますが、このセリフは完全にブーメランになっています。
自分の誤った推理(憶測)のせいで、(麻衣以外の)全員が死ぬ。こんなところにも暗示は隠されていました。
自分だったらどうしてた?
続いてのテーマは自分が登場人物だったらどうしていたかについて。私としては犯人が残れば良い派だったのですが、全員で助かる方法を探そうという意見もあり、面白かったです。
いわゆるトロッコ問題(麻衣からしたらトロッコ問題じゃないんですが…)に通じる部分で、違った意見を聞けたのは興味深かったです。
また、仮に脱出の正攻法をみんなが知ったとして、助けに行く側か、助けを待つ側だったらどっちが良いかで白熱したトークが広がりました。
読者として第三者の目線で考えられる私たちの意見としては、どちらもツライ二択という着地になりました(笑)。行って助けが間に合わなければ罪悪感が重い、待って助けが来なければそれはそれで嫌。
ただ作中の極限状態だと、みんなが助けに行く側を選びそうともなりました。あの場で罪悪感がどうとか考える余裕なんてないですからね…。
この記事を読んでいるあなたはどうでしょうか?
実写化するなら誰?を予想
おそらく実写化されるであろうと思われる本作。最後に、麻衣を演じるのは誰になるのか?を予想して終了となりました。
聡明な方が良いという意見が出ましたが、スマート過ぎず少し隙がありそうな方も良さそうという意見も。
参加者のお二人が出した予想は、永野芽郁さんと浜辺美波さん。どちらもありそうな丁度いいラインのだと思いました。実写化した際に当たっているのか楽しみです。
ただ、この二人が演じるとなると、他も豪華メンバーで揃えないと犯人がすぐにわかってしまうよねともなりました(笑)。
読書会を終えて
今回が初めての読書会主催で、不慣れな部分が結構出てしまったというのが反省です。ただ、皆さん楽しんでいただけたようで良かったです…!
課題本形式の読書会だと、自分の感想や思ったことを語れるし、知らなかったことに気付けるので、より読書を楽しめると再認識できました。
また別の本でやってみようと思った開催後の心境でした。
ご参加いただいた皆さんありがとうございました!(最後に本と一緒に撮影)