「自分がいなければもっとうまくいったのではないか?」
「自分はこの世にいらない存在なのではないか?」
このようなことを考えたことはありませんか?
気が落ちている時にはこんな気分になってしまうこともありますよね。ただ、自分のいない世界が、今よりも良い世界になっているのだとしたら、絶対に見たくはないです…。
今回紹介する小説は、自分がいないパラレルワールドに迷い込んだ少年の物語。米澤穂信『ボトルネック』です。
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。(「BOOK」データベースより)
最後の選択やメールの差出人など、ネタバレを含んだ考察記事はこちらです。
【ネタバレ考察】米澤穂信『ボトルネック』リョウが選んだのはどっち?最後のメールの意味や伏線を考えてみた自分がいなくなった世界はどうなっている?
恋人が事故で亡くなった場所・東尋坊を訪れたリョウ。
風に吹かれて、誤って崖から落下してしまう。目を覚ますとそこは自分の地元・金沢市だった。
不思議に思いつつ、家に帰ると姉を名乗る女性・サキがいた。
リョウは自分が生まれなかった世界に迷い込んでしまったのだった。
そこで突きつけられるのはあまりにも惨い事実。
自分の世界では、最悪の結末を迎えていた出来事がすべてうまくいっていたのだ。
ミステリとしての構成もバッチリ
米澤作品ということもあり、伏線回収や謎解きはしっかりと用意されています。
ちょっとした事件の犯人や、リョウとサキの世界での間違い探しなど。
とんでも理論ではなく、裏付けされた根拠と一緒に提示される解答は、やはりさすがです。
謎の内容としては、『氷菓』などの日常の謎に似ているかもしれません。
【感想】小説初心者でも楽しめる傑作(米澤穂信『氷菓』)ボトルネックが自分自身だとわかったら?
ボトルネックとは、物事がうまくいかない要因のことを言います。
リョウは自分自身が世界のボトルネックなのではと考えるようになります。
誰が何のためにこの世界に誘ったのか?
パラレルワールドでの生活を経てリョウはどうなるのか?
本作のラストでは辛い現実が突きつけられます。
「うわー…」となること間違いなし。
落ち込んでいる時には読まない方が良い作品です。
実は、私はこの作品が好き過ぎて数十回と読み直しています。笑
個人的には読む時のテンションによっては、ラストの捉え方は変わるのではないか?と思っています。
(米澤さんの作風を知った今はそんなことないのですが…笑)
是非、色んな時に読んでリョウの気分を味わってみてください。
でも、元気を出したい時には絶対に避けてくださいね。笑