今回は「円紫さんシリーズ」の3作品目を紹介します。
過去の作品は以下で紹介しています。
【感想】日常生活に潜むちょっとした謎(北村薫『空飛ぶ馬』) 【感想】人との繋がりに焦点を当てた日常の謎(北村薫『夜の蝉』)北村薫『秋の花』です。本作はシリーズ初の長編となっています。
まずはあらすじをご紹介。
絵に描いたような幼なじみの真理子と利恵を苛酷な運命が待ち受けていた。
ひとりが召され、ひとりは抜け殻と化したように憔悴の度を加えていく。
文化祭準備中の事故と処理された女子高生の墜落死―親友を喪った傷心の利恵を案じ、ふたりの先輩である『私』は事件の核心に迫ろうとするが、疑心暗鬼を生ずるばかり。
考えあぐねて円紫さんに打ち明けた日、利恵がいなくなった…。 (「BOOK」データベースより)
Contents
親友の死は自殺?事故?事件?
今回は小説を通じて、1つの謎を解決するという物語です。
謎:学校の屋上から転落死した真理子。自殺か?事故か?事件か?
小学生から幼馴染の利恵と真理子。
何をするにも一緒で、高校の文化祭でも委員として準備に携わっていました。
そんな準備中に起きた悲しい出来事。
真理子が学校の屋上から落ちて亡くなってしまったのです。
家が近所で小学校時代の先輩にあたる「私」は、悲しみにくれる利恵を心配します。
一件は、事故として処理をされたものの、どうも利恵の様子がおかしい。
・事故現場に集まった時に明後日の方向を見ていた利恵。
・事故以来、全く涙を流さない。
・事故の当日、鉄パイプで真理子とちゃんばらをしていた。
そして、「私」の家に届いた謎の手紙。
『ツダマリコ ハ コロサレタ』
果たして、真理子の死の真相は?
本当に事故だったのか?
悲しい話なのにとても良い…
レビューでもたくさん書かれていますが、読後感が何とも言えません。
悲しいはずの話なのに、ただのバッドエンドでは終わらない。
親友に先立たれた利恵が今後どのように生きていくのか?
救いのあるラストだからこそ、このテーマが大きくのしかかるんだろうなと感じます。
ただの謎解きだけではない。「生と死」「人生とは何か?」を考えさせられる物語でした。
読んだ人には伝わると思いますが、個人的には以下の円紫さんのセリフにグッときました。
「許すことはできなくても、救うことはできる」
まとめ
シリーズ初の長編作品にして、私の成長も垣間見れる本作。
日常の謎だからこそできるテーマでとても良い作品でした。
ちなみに、他の作品については以下の記事でも紹介しているので良かったら読んでみてください!笑
【感想】日常生活に潜むちょっとした謎(北村薫『空飛ぶ馬』) 【感想】人との繋がりに焦点を当てた日常の謎(北村薫『夜の蝉』)