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【感想】奇跡を起こす大人たちの物語(伊坂幸太郎『チルドレン』)

小説を読んで、心に残る言葉と出会った経験はありますか?

私は、伊坂幸太郎さんの小説は名言の宝庫だと思っています。

読んでいて元気になる言葉がたくさんあります。

その中で群を抜いてすさまじいインパクトのある小説を紹介します。

伊坂幸太郎『チルドレン』です。

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。

彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。

何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。

ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。(「BOOK」データベースより)

5つの短編集が収録されている本作。短編だと思って侮るなかれ。

連作短編集ならではの、華麗なオチが最後に待ち構えています。

陣内・めちゃくちゃなのに憎めないキャラクター

本作は、陣内という人物を中心に回っていきます。

収録されている物語は5つ。

  1. バンク
  2. チルドレン
  3. レトリーバー
  4. チルドレンⅡ
  5. イン

①③⑤は、家庭裁判所の調査官を目指す、学生時代の陣内と友人に焦点を当てた物語。

②④は調査官になった陣内と子供たちとのやりとりを描いています。

そして、この陣内というキャラクターがとにかくトンデモないんです。

  • 身勝手で自分を中心に世界が回っていると考えている
  • 自分が絶対的に正しいと思っている

自己中でKYな陣内ですが、読めば読むほど虜になっていきます。

こうなれたらなという魅力

なぜ、こんなにも迷惑なキャラクターにハマってしまうのか?

自分が間違いだと思うことは面と向かって言える、実行できる強さでしょう。

「大人がカッコよければ子供はグレない」

「ダメな子供を更生させるのは奇跡。だから俺たちは奇跡を起こすんだよ」

「むかつくから父親を正面から殴ってやった」

世の中の理不尽や不条理を、人間は飲み込んでしまうものです。

自分にはできない。

けれどしたいことを信念のままに実行している陣内に、気づいたらハマっているのでしょう。

池井戸潤さんの『半沢直樹』『下町ロケット』にも通じるものがありそうですね。

勧善懲悪な物語だからこそ、このようなキャラクターが際立っているんでしょう。

悪役がこんなやつならイラっとしますが、陣内だから許せてしまうんだと思います。

伊坂節はもちろん健在!

伏線回収&どんでん返しの名手である伊坂さん。

キャラクターや名言だけではありません。

伊坂節は本作でもいかんなく発揮されます。

各物語のラストには、しっかりと驚きの展開が用意されています。

個人的には「チルドレン」「イン」のラストは爽快感もあり、とても好きなラストでした。

元気を出したいときには強くオススメしたい1冊です。