記事内ではアフィリエイトURLを使用しています

【感想】同じ事件なのに結末が違う?リンクした事件に隠された真実(井上真偽『ぎんなみ商店街の事件簿』)

ぎんなみ商店街の事件簿

井上真偽さんの『ぎんなみ商店街の事件簿』を紹介します。

タイトルの通り、ぎんなみ商店街で起こった事件を描いた、3つの物語が入った作品です。本作はBrother編Sister編の2種類があります。

Brother編
ぎんなみ商店街近くに住む元太・福太・学太・良太の兄弟。母は早くに亡くなり父は海外赴任中だ。ある日、馴染みの商店に車が突っ込む事故が起きる。運転手は衝撃で焼き鳥の串が喉に刺さり即死した。事故の目撃者は末っ子で小学生の良太。だが福太と学太は良太の証言に違和感を覚えた。弟は何かを隠している? 二人は調査に乗り出すことに(第一話「桜幽霊とシェパーズ・パイ」)。

Sister編
ぎんなみ商店街に店を構える焼き鳥店「串真佐」の三姉妹、佐々美、都久音、桃。ある日、近所の商店に車が突っ込む事故が発生した。運転手は衝撃で焼き鳥の串が喉に刺さり即死。詮索好きの友人を止めるため、都久音は捜査に乗り出す。まずは事故現場で目撃された謎の人物を捜すことに。(第一話「だから都久音は嘘をつかない」)

どちらも描かれている事件は同じ。それなのに、描かれる結末が異なるという斬新な小説です。これまでになかった新しいタイプのミステリ小説。ネタバレなしで紹介をしていきます。

推理をするのは四兄弟と三姉妹

タイトルの通り、本作は、兄弟と姉妹それぞれの視点で描かれている物語です。

兄弟編では、小暮家の四兄弟が事件の推理していきます。長男はレストランで働く元太、次男は高校生の福太、三男は中学生の学太、四男は小学生の良太です。

姉妹編では、内山家の三姉妹が事件を推理していきます。長女は派遣社員の佐々美、次女は高校生の都久音、三女は中学生の桃です。

この2組は最初はまったく関わりがありません。また、事件を通じて知り合うのですが、作品間で大きな関わりがあるわけではありません。

ただ、作品同士はリンクをしています。片方の作品で出てきた人や、出来事の真意や裏側が別の視点からわかることがあります。

ぎんなみ商店街で起こる3つの事件

2作品とも、3つの物語が収録されています。どちらもぎんなみ商店街で起こった3つの事件が描かれています。また、事件はどちらも同じものになっています。

たとえば、最初の物語。ここでは、商店街のお店に車が突っ込んだ事件が描かれています。この事故で運転手は死亡してしまいますが、それ以外に不可解な点が多々あるのでした。

こうした、事件を、兄弟と姉妹がそれぞれの視点から真相を推理していくという内容です。個人的には2つ目の物語が好きでした。どちらも謎の解明がキレイなんですが、まったく違う角度から真相がわかるようになっています。

兄弟編、姉妹編で矛盾はありません。事件の真相は複数あり、与えられた情報から導かれるものが異なっているのです。

2冊読んですべての真相がわかる

この作品は、2冊読んですべての真相がわかるようになっています。片方だけを読んでも事件の真相はわかりますが、一部は謎のまま終わってしまいます。

たとえば、私が好きと言った2つ目の物語。ここでは、犯人の告発者犯人それぞれ誰なのか?が謎になっていました。

Brother編Sister編で、わかるのは片方だけでした。もう片方が誰なのかは、もう一方の作品を読めばわかるようになっています。だからこそ、2冊とも楽しめるようになっています。

この2冊は「どちらか片方を一気読みしてからもう一方を読む」というよりも「それぞれを1話ずつ読んでいく」という方がおすすめです。

片方の作品ではこんな結末だった。こっちではこんな結末になるのか!

このように、同じ事件(話)を二度楽しめるので、忘れないうちに一緒に読んでしまう方が良いと思います。2冊読んで完成する。片方だけでも楽しめますが、せっかくなら両方を読んでほしいです!