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【古典部シリーズ】米澤穂信『氷菓』の読む順番と全作の感想

米澤穂信さんのデビュー作『氷菓』から始まる「古典部シリーズ」。2019年8月現在、全部で6作品が発表されています。

2012年に京都アニメーション制作でテレビアニメ化。2017年には山崎賢人&広瀬アリス主演で実写映画化もされているので、聞いたことがある人もいるでしょう。

「古典部シリーズ」は“日常の謎”と呼ばれる、人が死なないミステリです。また、メインのキャラクターは高校生。学園青春ミステリとして、とても人気のあるシリーズなんです。

今回は既刊作品の読む順番と、それぞれの感想(ネタバレなし)を紹介していきます。

古典部シリーズって何?

本題に入る前に、まずは「古典部シリーズ」について簡単に説明しておきます。先ほど説明の通り、このシリーズは高校生たちが繰り広げる、学園青春ミステリです。

本作の主人公は折木奉太郎(おれき ほうたろう)。「やらなくてもいいことは、やらない。やらなければならないことは手短に」をモットーとする省エネ主義の高校1年生。

神山高校に入学した彼は、姉に強制されて部員がいない廃部寸前の部活動・古典部に入学することになります。

先輩も誰もいない自分だけの部活動のはずでしたが、そこで1つの出会いが。

「私、気になります」が口癖の好奇心旺盛なお嬢様、千反田える(ちたんだ える)が既に古典部に入部していたのです。

彼女は以下のような“日常の謎”に遭遇しては、奉太郎に解決するようにお願いをします。

  • いつの間にか密室になっていた部室。誰が何のために鍵を閉めたのか?
  • 毎週、決まった時間に違う人が借りていく図書館の本。学校の歴史をまとめただけの本がなぜ人気なのか?

千反田に振り回されながら、日常に潜むちょっとした謎に奉太郎が挑んでいきます。

気付けば、奉太郎の親友で自称データベースの福部里志(ふくべ さとし)や幼馴染の伊原摩耶花(いばら まやか)も古典部に入部。

省エネな学校生活を送る予定だった奉太郎の、楽しくて大変な高校生活が始まるのでした。

ミステリ小説としての謎解きは申し分なし! 青春ミステリとしての淡くほろ苦い心地よさも味わえる素晴らしいシリーズです。

しかも、とてもライトな語り口調なので小説慣れしていなくても読みやすいです。

では、そんな古典部シリーズの読む順番を紹介していきます。

1作目:『氷菓』

「古典部シリーズ」の1作目はアニメ、映画のタイトルにもなっていた『氷菓』です。当たり前ですが、主要人物が登場する作品ですので最初に読みましょう。笑

この作品の大きな謎は、古典部の文集の名前がなぜ氷菓なのか?です。千反田が気になっていることを奉太郎は解決できるのでしょうか?

また、先ほど例に挙げた“日常の謎”は本作で出てきます。ちょっとした謎が合間に挟まることで、中だるみせずに、スラスラ読み進められますよ!

【感想】小説初心者でも楽しめる傑作(米澤穂信『氷菓』)

2作目:『愚者のエンドロール』

文化祭の出し物として、2年生のクラスが作ったミステリ映画の試写会に招待された古典部の4人。しかし、作品は登場人物の1人が殺されているシーンで終わっていた。

脚本を書いた生徒は体調を崩してしまい、先を書くことができなくなってしまったとのこと。

クラスのまとめ役である“女帝”・入須にお願いをされて、奉太郎たちは犯人が誰なのか推理をするのでした。

二転三転する推理の先に奉太郎が見つけた答えとは?

【感想】描かれなかった映画のラストとは?(米澤穂信『愚者のエンドロール』)

3作目:『クドリャフカの順番』

舞台は文化祭。文集・「氷菓」の販売をする古典部の部室には限りなく積まれた「氷菓」がありました。摩耶花の発注ミスで30部の予定が、200部も届いてしまったのです。

彼らは無事にすべての文集を完売させることができるのか?

時同じくして、文化祭ではちょっとした盗難事件が発生していました。ABC殺人事件を模倣したような窃盗事件。犯人を名乗る、十文字とは何者なのか? また目的は何なのか?

この2つを主な軸として物語は進んでいきます。

また、今までの作品では奉太郎視点での語りだけでしたが、本作は里志、千反田、摩耶花の3人の視点でも物語が描かれます。彼らが文化祭を楽しんでいる様子はとても微笑ましいです。笑

ただそれだけではなく、リアルな3人の感情などの心理が描写されています。各々が抱えている葛藤など、ほろ苦い青春も感じられる作品です。

愛着が湧いてくる3作目。だからこそこの演出が良い味を出ている物語です。

【感想】文集完売を目指して奮闘!盗難事件の犯人と動機は?(米澤穂信『クドリャフカの順番』)

4作目:『遠回りする雛』


「古典部シリーズ」では初めての短編集です。7つの物語が収録されており、奉太郎たちが入学した4月から翌年の3月までに起こった出来事がまとまっています。

時系列で見ると1~3作目の間に位置する作品もありますが、読む順番は4つ目で問題ありません。むしろ裏話のような気持ちで楽しめるので、4冊目として読んだ方が良いです。

今までは大きな謎を解決する過程で、日常の謎が出てきていました。今作は1つの短編につき1つの謎が提示されています。区切りもはっきりしているので読みやすいです。

尚、本作はどちらかというと青春に焦点を当てた物語集になっています。高校生活を楽しんでいる、葛藤を抱えている4人の姿を感じてほしいです。

【感想】古典部の日々と心情を描いた短編集(米澤穂信『遠まわりする雛』)

5作目:『ふたりの距離の概算』

この作品では奉太郎たちが2年生になっています。感慨深いですね。

そして、古典部には1年生の大日向友子が仮入部をしていました。

みんなと仲良くしていたはずなのに、本入部直前になって、彼女は入部を辞退します。「千反田さんは菩薩のような人だ」という謎のメッセージを残して…。

彼女はなぜ入部を取りやめてしまったのか? ただ走るだけには長すぎるマラソン大会を使って、奉太郎は推理をするのでした。

この作品でも、大きな謎の解明途中で、日常の謎がいくつか登場してきます。相変わらず面白い種明かしがあるので、飽きずに読み進められますね。

【感想】仏のような人とはどんな意味?マラソン大会で謎解き(米澤穂信『ふたりの距離の概算』)

6作目:『いまさら翼といわれても』

こちらも短編集。6つの物語が収録されています。これまでの5作品とは異なり、各登場人物の人となりを掘り下げた物語ばかりです。

奉太郎が「やらなくてもいいことは、やらない。やらなければならないことは手短に」というモットーを掲げることになった理由。

由緒正しき家に生まれた千反田が抱えている将来に関する悩み。

摩耶花が奉太郎を毛嫌いしていた理由。中学校の卒業制作で奉太郎はなぜ手を抜いたのか?

古典部メンバーの過去と未来に関する物語がまとまっている本作。古典部ファンにはたまらない1冊です。

より楽しく読むために、古典部シリーズ5作をすべて読んでから手に取ってくださいね。

【感想】ほろ苦い青春を描いた6つの短編集(米澤穂信『いまさら翼といわれても』)

アニメも面白いよ!

また、今回紹介した4作目までは、アニメでも見れます。私はアニメも見ましたが、とても良い出来でした。「遠回りする雛」のラストは美しすぎましたね。

ただ、小説よりもほろ苦さが緩和されていた印象があります。特に「正体見たり」と「手作りチョコレート事件」は原作との違いをチェックしてほしいです。

Amazon Prime Videoでは全22話配信中です。気になった人は是非見てください。

補足
『いまさら翼といわれても』に収録されている「連邦は晴れているか」もアニメ化されていますよ。

青春ミステリとして人気の高い「古典部シリーズ」。まだ小説を読んでいない、アニメを見ていないという人は是非チェックをしてほしいです!