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【感想】伏線が多すぎる!スクールカーストを舞台にしたミステリ(降田天『女王はかえらない』)

女王はかえらない

第13回「このミステリーがすごい!大賞」で大賞を受賞した作品。降田天『女王はかえらない』を紹介します。

小学校でのスクールカーストを題材にしたミステリ。クラス内での二人の女子生徒派閥が対立する様子が描かれる。そして、対立が激化する中で、夏休みにある事件が起こってしまう。

小学三年生のぼくのクラスでは、マキが女王として君臨し、スクール・カーストの頂点に立っていた。しかし、東京からやってきた美しい転校生・エリカの出現で、教室内のパワーバランスは崩れ、クラスメイトたちを巻き込んだ激しい権力闘争が始まった。そして夏祭りの日、ぼくたちにとって忘れられないような事件が起こる―。伏線が張りめぐらされた、少女たちの残酷で切ない学園ミステリー。

「何となくオチがよめるな」と思っていたのですが、最後には十分に満足できるほど、驚かしてもらいました。

3部構成でなるミステリ

本作は3つの章で物語が進んでいきます。第一章が「子どもたち」、第二章が「教師」、第三相が「真相」というタイトルです。その名の通り、視点が子どもや教師になっています。

最初の章では、小学生視点でクラス内の状況が描かれています。そこではマキという女子児童がクラスのトップに君臨していました。彼女の言うことは絶対。逆らえばクラスから爪弾きにされてしまうのです。

そんなある日、エリカという転校生がやってきたことでクラスに徐々に変化が。マキとエリカによる女王争いが始まるのでした。そして、夏祭りの日にとんでもない事件が起きてしまいます。

第二章の時系列は事件後。教師の視点でクラスで起きた事件について語られます。そして、最後の章。これまでの謎が一気に解氷していきます。

第二章のラストから第三相にかけては怒涛の展開。鮮やかな謎解きに興奮しました。

幾重にも張り巡らされたミスリード

本作、第一章を読み始めて少ししたあたりで、あることに気付いてしまいました。これまでたくさんのミステリを読んできているので、ある表現に勘づいてしまったのです。

「これがメイントリックだったら嫌だな…」と思っていたのですが杞憂でした。それ以外にもたくさんのところに読者を騙す罠が隠されていたのです。

ネタバレになるので、ここでは書けませんが「トリックわかった!」と思って慢心していると簡単に足元をすくわれます。思っている以上に文字から想像している世界と実際の世界が違い過ぎました。

読み終えた人たちと、どこまで本作を見抜けたかを話し合いたい。それほどまでにすべてを看破するのは不可能な作品でした。

回収されるタイトルの意味

ここまでだけでも、十分にどんでん返しが素晴らしい一冊なのですが、本作はそれだけでは終わりません。最後には、タイトルの意味も回収されます。

ここは人によっては響かないポイントかもしれませんが、あえて書かせてもらいます。

読み始める前には「女王が帰ってこない、スクールカーストに返り咲かない」みたいなものかと思ってました。しかし、『女王はかえらない』に込められた意味はそれだけではありませんでした。

ミスリードだけでも濃厚な物語だったのに、タイトルにここまで含みを持たせられるのもすごいなと思います。個人的には読んだらタイトルの意味がわかるという作品が好きなので、この本も虜になってしまいました。

ミステリ好きの方にこそ、騙されないで読み切れるか試してみて欲しいなと思います!