【感想】予想外過ぎ！どんでん返しが渋滞してる一冊（降田天『彼女はもどらない』）

降田天『彼女はもどらない』を紹介します。

雑誌編集者の楓は、娘の衣装を自作する人気ブロガーに批判的なコメントをしたことから、自身の過去のブログを匿名掲示板で晒され、陰湿なストーカー被害に遭うようになった。一方、寝たきりの妻を抱える官僚の棚島は、家庭や職場でのストレスを解消するため、ブログで執拗に絡んできた女を破滅に追い込もうとする―。ネット上の二人が現実で交叉したとき、驚天動地のどんでん返しが炸裂する。『このミス』大賞シリーズ。（「BOOKデータベース」より）

『女王はかえらない』で「このミステリーがすごい！」大賞を受賞している降田さん。デビュー作ではどんでん返しに次ぐどんでん返しを存分に見せつけてくれました。

そのため、かなりの期待をして持って本書を手に取りましたが、しっかりと騙されてしまいました。今回もネタバレなしで紹介していきます。

OLとパパブロガーの対立

本作は楓と棚島という二人の視点で物語は進んでいきます。

楓は児童雑誌の編集者を務めている敏腕女性。棚島はソラパパという名前で活動するパパブロガーです。国家公務員として働きながら、娘を育てています。

ある日、楓は仕事を通じてソラパパの存在を知ります。娘のために衣装や小道具を作っている様子をブログにアップしているソラパパ。そんな彼の様子に、楓は嫌悪感を覚えてしまいます。

「あなたは本当に娘を愛していますか？」

そんな言葉を伝えるとともに、楓はソラパパにネット上で攻撃を始めるのでした。そして、それがすべての悲劇の始まりでした…。

そこかしこに伏線が…

この作品は、最初（プロローグ）に裁判が行われているシーンから始まります。そこでは、棚島が楓を殺したと告白している描写が描かれているのです。

楓から執拗な攻撃を受けて、棚島が人を殺してしまうまでの物語なのかなと考えながら話を読んでいくことになります。

その後、話は楓視点と棚島視点が交互に入れ替わる形で物語は進行。楓がソラパパをバッシングしたことがきっかけで、今度は楓がネット上で攻撃の対象になってしまいます。

SNSストーカー、それが現実世界に持ち込まれていく緊迫感を表現していました。

お互いにどのような心情でどんな行動をしているのかが事細かに書かれているのですが、色々なところに罠が仕掛けられています。

ラストは驚きの連続

前作で思い切りひっくり返されているので、今回は騙されないように身構えて読んでいました。そして、しっかりとどんでん返しをくらいました。

ネタバレになるので書きませんが、メイントリックについても考えなかったわけではありません。ただ、どう考えても無理があると思っていました。しかし、真相がわかると「なるほど…」となってしまいました。

読み返してみると、キレイに伏線が張られていて、面白いくらいにその通りの世界が描かれていることに気付きます。前作同様に、思っていた世界と実際の世界が全くの別物でした。

また、どんでん返しも1つや2つではありません。どんでん返し好きにはたまらないくらい、ひっくり返されまくります。私の場合、最初のどんでん返しがあまりにも意外過ぎて、該当箇所を3回くらい二度見しました。

ミステリが好きなら読んで損はない。というか読まないと損な一冊です。