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【感想】時代劇×ミステリ!あだ討ちに隠された真相とは?(永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』)

木挽町のあだ討ち

永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』を紹介します。木挽町で起こった仇討ち事件の真相とは?

ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。

第169回直木賞第36回山本周五郎賞を受賞した話題作。

さまざまな目撃者の視点で語られる仇討ち事件。証言を紡いでいった先には、ある真実が隠されていたのでした。ネタバレなしで本作の紹介をしていきます。

木挽町で起きた見事な仇討ち

木挽町にある芝居小屋の裏通りにて、仇討ちが行われた。菊之助という若い男が、父の仇である作兵衛を討ったのである。

菊之助の名乗りを聞いた野次馬たちが集まり、その仇討ちの一部始終は多くの者が目撃していた。最初こそ対等に、どちらかというと作兵衛が優位に進めていた決闘だったが、結局は菊之助に軍配が上がった。

作兵衛を討った菊之助は、作兵衛の首級をかかげて、目撃者からの称賛を受けたのであった。

芝居を見ているような気分になれる

本作は、菊之助の知り合いを名乗る武士が、芝居小屋に関わる人たちに仇討ち事件について聞いてまわるという内容になっています。

6つの章があり、各章につき、ひとりの人物の目撃証言証言者の半生が語られるという構成になっています。それぞれの章で視点が変わり、まったく違う人物の角度から仇討ちについて語られます。そして、その人たちが今に至るまでの経緯がわかる。

舞台が章によって変わっていく感じと、小気味よいやり取りの中で物語が進んでいく展開で、芝居を見ているような感覚を味わえます。芝居小屋を題材にしているからこそか、時代劇を舞台で見ているような感じでした。

徐々に明かされていく仇討ちの真相

6つの章を通じて、あだ討ちの背景がわかってくるというのが本書の構成です。ある人物が、あだ討ちについて調べているからこその物語なのですが、そもそもなぜ調べているのかすらわかりません。

話を聞いていくうちに、話に違和感があったり、人物のイメージに相違が出てきたりなど、少し矛盾に感じる部分が見えてきます。あだ討ちの当日、木挽町では何が起きていたのか?

読み進めていくうちに謎は深まっていったのですが、5つ目の章を読み終えた時には、何となく何があったのかがわかるようになっています。そして、最後の章ですべての真相が見えてくる。

時代劇を題材にしてミステリ小説で新鮮でした。そして、人情味のある人間ドラマがとても良かったです。グッときました。

普段は時代小説を読まないという人でもスラスラと読めるはず。読み応え十分の素晴らしい一冊でした。