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【感想】S&Mシリーズ完結作!真賀田四季が仕掛けた壮大なトリック?(森博嗣『有限と微小のパン』)

森博嗣『有限と微小のパン』を紹介します。犀川創平と西之園萌絵の2人が事件に挑む、S&Mシリーズの10作目です。

前作のレビューはこちら。

【感想】S&Mシリーズ9作目!二つの密室と奇妙な死体たち(森博嗣『数奇にして模型』)

日本最大のソフトメーカ「ナノクラフト」の経営するテーマパークを訪れたN大生西之園萌絵と友人たち。そこでは「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失があったという。彼女らを待ち構えていたかのように事件は続発。すべてがあの天才の演出によるものなのか!?全編に漲る緊張感!最高潮森ミステリィ。 (「BOOKデータベース」より)

S&Mシリーズの10作目。完結作です。本作では『すべてがFになる』で登場した真賀田四季博士が登場します。そこで起こる3つの異常な殺人事件。真相は一体何なのか?

不可解どころではない3つの殺人

本作は800ページを超える長編小説。とても読み応えのある物語でした。

現場はナノクラフトという日本最大のソフトメーカー会社。ここで3つの殺人事件が起こります。これがあまりにも不可解!

どんな事件なのかを簡単に書きます。

  1. ナノクラフト社員の男性が天窓を割って地面に転落死。その後、何者かによって死体は天窓に引き上げられる。そして、なぜか現場には切断された腕だけ残っていた。
  2. ナノクラフト社員の女性が部屋で刺殺体となって発見される。部屋の前には萌絵たち数名がいたが、誰も外には出なかった。階は高いので外からの脱出は不可能。
  3. ナノクラフトの副社長がVR世界でナイフで刺される。そして、現実世界でも同じようにして死んでいた。VR用の部屋には副社長しかおらず、誰も入っていない。

わけのわからない状況ですよね。どうやったらそんなことできるのか。そして、これらはすべて真賀田四季博士が仕組んだことなのか?

この最大の謎に犀川と萌絵は挑みます。

最先端技術で頭がこんがらがる(良い意味)

トリック自体はしっかりしているのですが、VR世界の話が出てくるので少し頭がこんがらがりました笑。しかも、書かれたのは1998年。この頃にVRを使った物語を描くなんてスゴイですよね…。

そして、1作目と同じように、至るところに数学的なネタが仕掛けられています。「7は孤独」という言葉が出てくるのですが、7や真賀田博士にまつわる謎が随所にありました。最後の最後まで、驚かせてくれますよ。

特にラストのシーンは「こんなところにもあったのか!」とビックリ。事件外にもある仕掛けを存分に楽しんでください。

シリーズ完結作にふさわしいラスト!

本作はS&Mシリーズの最後の作品。犀川と萌絵の関係の描き方しかり、真賀田博士との交流しかり、キレイにまとまっていたと思います。

特に、犀川のセリフとそれに対する萌絵の返しが絶妙でしたね。この先どうなっていくのか、楽しみで仕方ないです。

他シリーズとのつながりがあるので、一切続きがないわけではありませんが、犀川創平&西之園萌絵ペアが主人公のシリーズはこれで最後。読むのが惜しい感じがしました。

S&Mシリーズの次はVシリーズとのことで、次はそちらを読み進めようと思います!