学生だからこそ味わえる青春。人との繋がりを感じられる友情や、ドキドキする恋模様。爽やかで純真な気持ちは独特なものだと思います。
そこで、今回は学生時代にこそ読んでほしい小説を10冊紹介します!
すべて、高校生、大学生が主人公の作品です。主人公の気持ちに共感をしやすい、そんな素敵な小説をお届けしますので、ぜひ気になった本を手に取ってみてください。
Contents
1.恩田陸『夜のピクニック』
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。(「BOOK」データベースより)
これまでに読んだ作品の中で、最も読み終わりたくない!と思った一冊です。
80kmを夜通し歩き通すという、北高の伝統行事・歩行祭。この高校の行事を舞台に、それぞれの登場人物が秘めた思いを打ち明けていくという物語です。
ミステリのように、先が気になるような謎があるのはもちろんのこと、キャラクターの気持ちに寄り添えて、共感できるようにもなっています。
学生時代に読むのと、大人になってから読むのでは印象が変わるようにも感じます。なので、学生のうちに一度は読んでおいてほしい作品です!
2.朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』
田舎の県立高校。バレー部の頼れるキャプテン・桐島が、理由も告げずに突然部活をやめた。そこから、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく。バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部・亜矢、映画部・涼也、ソフト部・実果、野球部ユーレイ部員・宏樹。部活も校内での立場も全く違う5人それぞれに起こった変化とは…?瑞々しい筆致で描かれる、17歳のリアルな青春群像。第22回小説すばる新人賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
バレー部のキャプテン、桐島が部活をやめるところから始まる本作。彼が退部したことをきっかけに、小さな影響が他の生徒たちに起こる。
周囲から見たら劇的な変化ではないけど、思春期で学校というコミュニティにいる登場人物からしたら大きな変化になっている。
それぞれのキャラクターに焦点をあてた5つの短編が描かれており、どれも違った面白さがあります。どの話が良かったのかを話してみたいなと思いました。
3.住野よる『君の膵臓を食べたい』
ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて―。読後、きっとこのタイトルに涙する。「名前のない僕」と「日常のない彼女」が織りなす、大ベストセラー青春小説!(「BOOK」データベースより)
病院で出会ったクラスメイトは、余命が少ないのだった。主人公の「僕」は、彼女との出会いで人との繋がりや、恋について知り始めることとなる。
恋人が病気で死んでしまいそうという設定は、よくある恋愛小説に感じるかもしれません。しかし、ちょっとしたまさかの展開もあり、それが作品に対して良い意味でアクセントになっています。
「恋愛小説はちょっと…」という人でも、読んで良かった!と思ってもらえるはずです。
4.加藤シゲアキ『オルタネート』
高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、若者たちの運命が、鮮やかに加速していく。全国配信の料理コンテストで巻き起こった“悲劇”の後遺症に思い悩む蓉。母との軋轢により、“絶対真実の愛”を求め続ける「オルタネート」信奉者の凪津。高校を中退し、“亡霊の街”から逃れるように、音楽家の集うシェアハウスへと潜り込んだ尚志。恋とは、友情とは、家族とは。そして、人と“繋がる”とは何か。デジタルな世界と未分化な感情が織りなす物語の果てに、三人を待ち受ける未来とは一体―。“あの頃”の煌めき、そして新たな旅立ちを端正かつエモーショナルな筆致で紡ぐ、新時代の青春小説。(「BOOK」データベースより)
オルタネートという高校生限定のマッチングアプリが当たり前となっている世界。この中で生きている3人の高校生にフォーカスをあてた作品です。それぞれの視点で、高校生の「今」を描いてた長編小説になっています。
マッチングアプリではあるものの、恋人だけではなく友人としての出会いもある。それぞれの置かれた境遇があるからこそ、さまざまな良さとツラさを感じられるようになっています。
題材をうまく活かした作品なので、人との繋がりを考えさせられる一冊になっています。
5.筒井康孝『時をかける少女』
放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。壊れた試験管の液体からただようあまい香り。このにおいをわたしは知っている―そう感じたとき、芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。そして目を覚ました和子の周囲では、時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。(「BOOK」データベースより)
映画が有名な作品だと思いますが、原作となっている小説もとても良いお話です。実は、映画のストーリーは小説とは違うものになっているので、初めて読む話という感覚を得られると思います。
映画を観ていると「あれ?この人はもしや?」という登場人物の気づきもあるので、こうした面白さもありますよ。表題作の他にも短編が収録されているので、一緒に楽しんでほしいです。
6.中田永一『百瀬、こっちを向いて。』
「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは―。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった…!」恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。(「BOOK」データベースより)
学生たちの恋愛を描いた4つの短編集。表題作の甘酸っぱさはとにかく素晴らしいのですが、他の3作もかなり濃厚な体験ができるはずです。
表題作の「百瀬、こっちを向いて。」は、先輩からの依頼のせいで、ある美少女と恋人関係になることになります。しかし、それは偽りのものなのでした。というかなりつらくて甘酸っぱさがある作品です。そして、最後にちょっとした驚きもあり、ゾッとしてしまいました…。
7.米澤穂信『本と鍵の季節』
堀川次郎、高校二年で図書委員。不人気な図書室で同じ委員会の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、本には縁がなさそうだったが、話してみると快活でよく笑い、ほどよく皮肉屋のいいやつだ。彼と付き合うようになってから、なぜかおかしなことに関わることが増えた。開かずの金庫、テスト問題の窃盗、亡くなった先輩が読んだ最後の本──青春図書室ミステリー開幕!!
主人公は堀川次郎と松倉詩門という二人の高校二年生。図書委員の彼らのもとに舞い込んでくる謎を解決していくというストーリーです。
タイトルにもある通り、本にまつわる日常の謎が扱われています。6つの短編が収録されている連作短編集となっており、最後に向けて話がつながっていきます。
高校生ならではの青春だけではなく、ほろ苦さ(苦さ強めですが)があり、最後にはハッピーともバッドとも言いづらい独特な余韻があります。論理的な解決がある日常の謎なので、ミステリが好きな人には特におすすめです。
8.誉田哲也『武士道シックスティーン』
武蔵を心の師とする剣道エリートの香織は、中学最後の大会で、無名選手の早苗に負けてしまう。敗北の悔しさを片時も忘れられない香織と、勝利にこだわらず「お気楽不動心」の早苗。相反する二人が、同じ高校に進学し、剣道部で再会を果たすが…。青春を剣道にかける女子二人の傑作エンターテインメント。(「BOOK」データベースより)
正反対の性格の二人の女子高生の物語。タイトルにある武士道ですが、本作は剣道部が舞台のお話になっています。勝つことがすべてだと考えている香織と、勝ちにはこだわっていない早苗の二人が同じ剣道部になったところを描いた作品です。
ザ・青春小説と言えるような爽快感や、友情や葛藤がこれでもかというくらいに詰め込まれています。徐々に力をつけていく感じや大会の風景など、とにかく素晴らしいです。マンガですが「ちはやふる」が好きな方ならハマるかなと思っています。
9.伊坂幸太郎『砂漠』
入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決…。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれ成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。(「BOOK」データベースより)
大学生の青春を舞台にした小説。5人の大学生たちの春夏秋冬が描かれており、楽しさの中にある大学生ならではの苦悩を見事に表現している作品です。そして、ミステリとしても一級品です。
ボウリングや合コン、そして麻雀などを楽しんでいる大学生たちの話なのですが、通り魔が現れたことで話は思わぬ展開になっていきます。
不穏な話になりそうなのに、伊坂作品ならではの癖のある魅力的なキャラクターのおかげで、ちょっとポップな感じがあります。そして、最後に訪れる伏線回収の凄さ。500ページを超えるボリュームなのにあっという間に読了してしまいました。
10.朝井リョウ『何者』
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
就職活動を通じて描かれる5人の男女の人生。大学生ならではの葛藤が細やかに描写されており、まだ何者でもない主人公たちが何者かになるために頑張っている姿が描かれています。
単なる青春小説、リアルな就活小説かと思いきや、少し想定外の展開もあり面白かったです。あまり予備知識はない状態で読んでほしいなと思いました。
もし途中で「あまり面白くないな」と思っても最後まで読むことをおすすめします。きっと後悔はしないはずです。