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【感想】誰もが知ってる昔話を題材にした短編ミステリ集(青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』)

むかしむかしあるところに

青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』を紹介します。

昔ばなし、な・の・に、新しい!鬼退治。「浦島太郎」や「鶴の恩返し」といった皆さんご存じの
《日本昔ばなし》を、密室やアリバイ、ダイイングメッセージといったミステリのテーマで読み解く全く新しいミステリ!「一寸法師の不在証明」「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「密室龍宮城」「絶海の鬼ヶ島」の全5編収録。

本屋大賞にもノミネートされていた本作。昔話を題材にした5つのミステリ短編小説となっています。

誰もが知ってる有名な話を面白おかしくパロっているだけではなく、普通のミステリとしても楽しめる一冊です。

今回もネタバレなしで5つの短編をそれぞれ紹介していきます。

一寸法師の不在証明

鬼を退治した一寸法師。彼はその功績を讃えられ、国のお姫様と結婚をすることになりました。ここまでは昔話同様なハッピーエンドに向かっています。

しかし、本作はそんなものでは終わりません。一寸法師が鬼を退治していた時刻に、人が殺されるという事件が発生。

しかも、被害者には一寸法師と繋がりがあったことがわかります。完璧なアリバイのある一寸法師。彼は犯人なのか?それとも別に犯人がいるのか?

アリバイを巡って展開される殺人事件の謎。短編なのに細かに伏線が張られている。納得感のあるラストで素晴らしい話でした。

花咲か死者伝言

犬視点で話が進んでいく物語。次郎と名付けられた犬は、”しろ”という犬を飼っていたおじいさんに飼われることになります。

しろは隣のおじいさんに殺されてしまったのですが、彼を埋めた庭から松が育ち、花を咲かせることができるようになりました。

この賑やかな様子を描いているシーンから始まるのですが、少し読み進めると一気に雰囲気が変わります。次郎を飼っているおじいさんが何者かに殺されてしまうのです。

そして、おじいさんは花を握っていました。このダイイングメッセージの意味とは?

オチがかなり強烈な話でした。まさかの展開でかなり驚かされました…。

つるの倒叙がえし

つるの恩返しを題材にした物語。

主人公の弥兵衛は、借金返済を迫る庄屋を殺してしまう。殺人してしまったことに興奮していた夜、家をある女性が訪れます。彼女は高価な織物を織ってくれる女性で…。

犯人がわかっている倒叙ミステリ。彼は犯罪を隠し切れるのか?

個人的には最も好きな話でした。最後に明らかになる真相がお見事過ぎました…。

全く予想していなかったオチが待ち構えておりひっくり返されます。二度読み必至。読み逃しのないよう注意です!

密室龍宮城

亀を助けた浦島太郎は竜宮城に招待される。そこでは海の生き物が人間の姿で生活していた。

浦島太郎をもてなしていた竜宮城の面々だったが、そこで殺人事件が発生してしまう。被害者はおいせ。彼女は密室状態の部屋で昆布で首を絞められていた。

自殺か、他殺か。浦島太郎は事件の真相を推理する。

少しだけトリックが若干わかりづらい感じがありました。ただ、事件の裏にあったことや最後にひと捻りがあったので、飽きることなく楽しめました。

絶海の鬼ヶ島

桃太郎が来たことで鬼が絶滅させられた島。しかし、数少ない生き残りがいたことで、小さな集落を形成して、生活をしていた。

そんなある日、鬼の死体が見つかる。しかも、どうやら誰かに殺されたらしい。

疑心暗鬼になる鬼ヶ島の面々。その後も、一人ずつ殺されていく鬼たち。『そして誰もいなくなった』のごとく、徐々に数を減らしていく…。

これまでの4つの短編ネタも少し絡めて展開されていきます。

ミステリの雰囲気は最も好きでした。誰が犯人なのか?目的は何のなのか?

最後に明かされる真相が、思っていた以上に衝撃的でした…。