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【感想】ホラー×ミステリ!奇妙な噂を取材する7つの連作短編集(澤村伊智『アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿』)

アウターq

澤村伊智さんの連作短編集『アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿』を紹介します。

癖者揃いの娯楽系ウェブマガジン『アウターQ』編集部。新人ライター湾沢陸男は、小学生の頃によく遊んだ公園の落書きを調査することに。最後に<露死獣>と書かれた意味不明なその落書きを、当時の子供たちは<露死獣の呪文>と呼び、解読しようと夢中になった。取材を進めるうち、湾沢は「二十歳までこの呪文を覚えていると<露死獣>に殺される」との説を唱えた旧友が亡くなっていたことを知り……。何重にも張り巡らされた呪文の謎が時を経て今、解き明かされる「笑う露死獣」を含む全七編を収録した傑作ミステリー連作短編集。

代表作の『ぼぎわんが、来る』は映画(映画のタイトルは「来る」)にもなっている澤村伊智さん。

本作は、表紙がポップな感じですが、中身はしっかりとしたホラー要素がありました。連作短編集となっている本作のそれぞれのあらすじと感想を、ネタバレなしで書いていきます。

笑う露死獣

仕事を失ってしまった湾沢陸男は、高校の先輩・井出の紹介でライターとして働き始めることになりました。ある日、彼が記事として執筆することになったのは、地元の公園にあった謎の落書きでした。

落書きの内容を20歳まで覚えていると死んでしまうという都市伝説もあった落書き。この奇妙な落書きが意味していることとは…?

都市伝説のような落書きを調べて記事にするという、どんなオチになるのかなと思いきや、まったく予想していなかった展開が待ち構えていました。

ただの落書きだったと思っていたら、そんなオチに持っていくのかとビックリでした。

歌うハンバーガー

拒食症のフードライター・守屋雫。彼女は、周囲の人間から距離を置かれているハンバーガー店を取材することになります。そこはスピリチュアルな店主がいるそうで…。

個人的には1番好きな短編でした。オチが予想外過ぎましたし、何より一番ゾッとしました。

これ以上の前知識はなしに読んでもらった方が良い短編かなと思います。

伏線回収というか、謎解きというか。「え、そういうことだったの?」となる驚きと怖さがとにかく素晴らしかったです。

飛ぶストーカーと叫ぶアイドル

傷害事件によって2年間の休養期間を置くことになってしまった女性アイドル。彼女を襲った犯人は、どうやらその復帰ライブでも何かをしようとしているようなのでした…。

湾沢はライブの録画をするために会場を訪れていました。そこで、ある事件が起こってしまうのですが…。

どちらかというとミステリ色が強めだったと思います。怖さは薄いかなと個人的には感じました。ただ、アイドルのファンという視点で考えると、その熱狂には怖さがありました。

目覚める死者たち

湾沢が高校生の頃の話。花火大会で人災が起こってしまいました。多くの死傷者が出てしまったその事故現場の周辺で、ある怪談がささやかれていました。

この話も基本的にはミステリがベースにあるように感じました。謎解きがしっかりしているので、何が起こっていたのかは、明確に描かれています。

しかし、最後の最後にはホラーのような恐怖を感じされる展開があります。重要な部分ははっきりとさせつつも、怖い余韻を残すところが良い作品でした。

見つめるユリエさん

絵に描かれていた女性に恋をした青年。彼はその女性を夢で見かけるようになって、より想いが募っていくのでした。そんな彼のためにライターたちは取材をしようとするのですが…。

こちらも都市伝説のような雰囲気がある物語。絵に描かれている女性は本当にいるのか。夢で見かけるのは偶然なのかそれとも必然なのか。

取材を通じて、色々なことが明らかになっていくのですが、最後の最後には衝撃的なオチが待っていました。これも2作目の「歌うハンバーガー」に近いものを感じました。結構好きです。

映える天国屋敷

アウターQに寄せられた投書。ある変わった家を取材してみて欲しいというものでした。湾沢は取材に赴きますが、そこにいたのは一風変わった家主でした。

本作は、次の「涙する地獄屋敷」とあわせて一つの物語になっているように感じます。それでも、最後にゾッとする展開を持ってくるのが凄かったです…。

涙する地獄屋敷

連作短編集の最後にふさわしいオチが待ち構えています。ここまでの作品が伏線だったのではないかと思わせる展開がありました。

そして、最後の大オチです。違和感のあったことが解消されるとともに、少し嫌な気分になる展開があなたを待ち受けているでしょう。

本作の最後には、読者への問いかけのような部分もあり、それには少し考えさせられるかもしれません。また、作風が作風なだけに、少し怖さを感じることもあるかもです…。