リレー小説というものをご存じでしょうか?
名前の通り、複数人が連携して作品を作り上げるタイプの小説です。今回は人気作家同士のリレー小説を紹介していきます。
藤石波矢・辻堂ゆめ『昨夜は殺せたかも』です。
今日も二人は”殺し愛”
夫と妻の視点に分かれ気鋭の著者二人が競作する、予測不能なラブサスペンス!
平凡なサラリーマン・藤堂光弘。夫を愛する専業主婦・藤堂咲奈。二人は誰もが羨む幸せな夫婦……のはずだった。あの日までは。光弘は気付いてしまった。妻の不貞に。咲奈は気付いてしまった。夫の裏の顔に。彼らは表面上は仲のいい夫婦の仮面を被ったまま、互いの殺害計画を練りはじめる。
気鋭の著者二人が夫と妻の視点を競作する、愛と笑いとトリックに満ちた”殺し愛”の幕が開く!(「BOOKデータベース」より)
本作は人気作家ふたりのリレー小説です。あることがきっかけでお互いに殺意を抱いた夫婦。バレないように暗殺計画を立て、実行していきます。
“妻を殺そうとする夫”を藤石波矢さん。“夫を殺そうとする妻”は辻堂ゆめさんが担当しています。
藤石波矢さんはコメディタッチな作風に定評があり、著書には、ディーン・フジオカ主演で連続ドラマにもなった『今からあなたを脅迫します』があります。
辻堂ゆめさんは、『いなくなった私へ』で「『このミステリーがすごい!』大賞」の優秀賞でデビュー。ラストの伏線回収がとても上手で、ミステリファンも多い作家さんです。
そんなふたりが描く、殺し“愛”。とても面白いミステリ小説でした!
Contents
殺意を抱いた夫婦
平凡なサラリーマンの藤堂光弘。彼を支える専業主婦の藤堂咲奈。二人は周囲から羨ましがられる幸せな夫婦でした。
ある日、光弘は妻が不倫をしていると気づいてしまいます。咲奈は夫が仕事で不正を行っていることを知ってしまいました。
更に、二人は自分の裏の顔が相手にバレてしまったと勘づきます。
表面上は仲の良い夫婦を演じる二人。しかし、裏ではお互いにパートナーを殺害するための計画を実行していくのでした…。
単なる殺し“愛”ではない
基本的な物語構成は、夫婦の殺し合い(愛)です。殺しの罠を仕掛けては回避され、相手の罠を回避するという流れです。
しかし、それだけではありません。
実はこの殺し愛が始まる前に、お互いに裏の顔があることが暗示されます。しかし、それが何なのか?までは明かされません。
読者からしても、どんな隠し事をしているのか?という先が気になるポイントがあるのです。
また、明かされたら明かされたで、二人は大きな勘違いをしていることがわかります。アンジャッシュのような、すれ違いも楽しい作品ですよ。
更に、最後の最後にはある真実が明らかになります。伏線をもとにした、ちょっとした驚きの展開。この手法は辻堂さんらしい仕掛けだなと感じました!
あとがきまで面白い!
本作の面白さは物語だけでは終わりません。作者のあとがきも楽しみの1つです。
本作は、罠を仕掛けては相手にパス。回避しては新しい罠を仕掛けるという、ターン制でリレーをしていたそう。
小説が出来上がるまでのやり取りや、その時に大変だったことなどが会話形式で収録されています。
作品を終えた直後に裏話が聞けるのは楽しかったですね。それぞれが相手を全力で殺そうとしている様子が、あとがきから感じられました。笑
また、人気作家二人によるリレー小説でしたが、何となく藤崎翔さんや木下半太さんの作品にも似ているなと感じました。
視点が交互に展開されるミステリが好きな人は是非手に取ってみて欲しいですね!