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【感想】意外性の詰まったSFミステリ!4つの中編作品集(阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』)

阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』を紹介します。4つの中編から成るミステリ小説。作品ごとに色があってそれぞれ楽しめました。

透明人間による不可能犯罪計画と、意外すぎる動機。裁判員裁判×アイドルオタクのアクロバティックな法廷ミステリ。録音された犯行現場の謎と、新米探偵のささやかな特技。クルーズ船内、脱出ゲームのイベントが進行する中での拉致監禁――。一編ずつ、異なった趣向、違った設定で作り上げられた、絢爛多彩、高密度の短編集。『紅蓮館の殺人』のスマッシュヒットで注目をあつめた新鋭が、本格ミステリの魅力と可能性に肉薄する。(「BOOKデータベース」より)

今回は4つの作品のあらすじとオススメポイントを紹介してきます。

透明人間は密室に潜む

透明人間が突然変異で生まれるようになった世界。ただし、彼らは薬とメイクで透明ではないような生活を必須とされていた。そんな中、透明人間の女性は夫に内緒で、ある人を殺す計画していた。

犯人がわかっている倒叙ものミステリ。透明人間の彼女はどのようにして現場から消えたのか?を考える物語です。透明人間という設定をうまく用いて、論理的なアプローチで事件が解決されます。

現場のありとあらゆる要素から推理が行われるのですが、SF設定が上手に活かされていました。最後のオチまで含めて楽しめました。SFミステリ好きにはオススメです!

六人の熱狂する日本人

裁判員裁判が舞台の物語。ある女性アイドルのファンが同じファンの友人を殺害してしまったというもの。一通りの裁判が終わり、あとは判決を決めるのみ。そんな時、あることがきっかけで審議は思わぬ展開へ。

現実には起こりえないだろうなと思いつつも、二転三転した事件の顛末が最後にはキレイに収束するので素晴らしかったです。犯人は別にいるのではないか?という疑惑から真実を導くまでの過程。その後の展開までテンポよく読めました。

ミステリ要素はあまり強くありませんでしたが、徐々に謎が明らかになる感じや設定が、「キサラギ」という映画を彷彿とさせました。

盗聴された殺人

聴力が異常に良い探偵の話。浮気調査で仕掛けていた盗聴器に殺人事件の様子が収録されていた。犯人は誰なのか?音だけを頼りに推理を組み立てるが…。

犯人当てクイズとして楽しい作品でした。結構意外性もあったので良かったなと思います。私は当てられませんでした笑。

本作でも犯人の特定は「聴力が異常に良い」という設定を駆使して、論理的に行われます。特殊設定だからこそのトリックは、やはり読んでいて楽しいですね。

第13号船室からの脱出

リアル脱出ゲームが行われる船上で誘拐事件に巻き込まれた海斗。監禁された現状からの脱出と脱出ゲームからの脱出を試みる。そこにはある人物の思惑があったのだった。

本作で1番好きな話でした。まず、脱出ゲーム自体に仕掛けられた謎が意外過ぎました。伏線もキレイに張られていたので、騙された感もあります。

しかも、それ以外にも各所に驚きポイントが多いのです。1番は最後に明かされたあることなんですが、さすがに気付けないなと思いました。一応ヒントはあったのですが、そこまで気を回すのは無理でしたね…。

どんでん返しあり、その後にも意外な仕掛けあり。本作は特にオススメです!