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【感想】S&Mシリーズ4作目!ミステリよりは成長物語(森博嗣『詩的私的ジャック』)

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森博嗣『詩的私的ジャック』を紹介します。S&Mシリーズの4作目。大学構内で起こった連続殺人の謎に犀川と西之園が挑みます。

前作のレビューはこちらから。

mathematical-goodbye【感想】S&Mシリーズ3作目!わざと簡単なトリックって?小説外の仕掛けに感服(森博嗣『笑わない数学者』)

大学施設で女子大生が連続して殺された。現場は密室状態で死体には文字状の傷が残されていた。捜査線上に浮かんだのはロック歌手の結城稔。被害者と面識があった上、事件と彼の歌詞が似ていたのだ。N大学工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵が、明敏な知性を駆使して事件の構造を解体する!

これまでとは毛色の異なる作品のように感じました。ミステリというよりは、犀川と西之園萌絵の距離や関係を描くための物語の印象が強いです。

萌絵が解明する密室トリック

大学構内で起こった2つの女子大生殺人事件。奇妙な共通点があったことから、警察はロック歌手の結城稔を容疑者として考える。このような導入でスタートする物語ですが、2つの密室殺人は萌絵によってあっさりと看破されます。

これまでは終盤まで引っ張って犀川が解き明かすという展開でしたが、今作はあっさりと明かされます。難しい内容ではないのですが、ちょっと拍子抜け感がありました…笑。

この他にも、殺人が起こるので、その密室トリックは結構楽しかったです。ただ、ミステリ要素が強い作品ではないように感じます。(後半の「○○で言える?」は良かったです!)

犀川と萌絵の物語

本作は、2人の関係や萌絵の成長に重きを置いているのかなと感じました。ミステリがつまらないわけではないです。これまでの作品と同じように殺人トリックや犯人を当てる推理は充分に楽しめます。

ただそれ以上に、随所にあるセリフなどから、萌絵の心情の方に読者は引っ張られるのかなと思いました。

例えば、自分が犀川の一番近くにいると思っていた萌絵が、そんなことはなかったことに気付くシーン。自分の知らない犀川を他の人は知っている。時を同じくして犀川は出張で中国へ。

物理的な距離との対比が華麗に描かれており、この構図をうまく読者に表わしてくれています。事件を解決しようと奮闘するも、犀川の穴を感じている萌絵の心情も上手でした。

事件の背景も上手に絡んでくる

あと、事件自体も2人の関係をうまくつなげているような印象を受けました。犯人の動機や裏にあった想い。

本作の軸がホワイ(why)ダニットにあるのがその象徴のようにも受けます。これまでは結構ハウ(how)ダニットだった気がするので、その辺からも伺えるかなと。シリーズの転換点としてはとても大事な作品だったのではないかなと思います。

個人的には最後の犀川と萌絵のやりとり(犀川のアンサー)は好きでした。ミステリよりも2人の関係を楽しむ作品として読んでみてください!

次回作のレビューはこちらです。

who-inside【感想】S&Mシリーズ5作目!遊び心満載のタイトルと大胆なトリック(森博嗣『封印再度』)