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【感想】伏線も秀逸な脅威のバイオホラー小説(知念実希人『ヨモツイクサ』)

ヨモツイクサ

知念実希人『ヨモツイクサ』を紹介します。著者の初めてのホラー小説です。

地元の道央大病院に勤める外科医・佐原茜の実家は黄泉の森のそばにあり、7年前に家族が忽然と消える神隠し事件に遭っていて、今も家族を捜していた。この2つの事件は繋がっているのか。もしかして、ヨモツイクサの仕業なのか……。

主人公は外科医の茜。彼女の家族は神隠しによって忽然と姿を消してしまった。そんなある日、彼女は近くの森で似たような失踪事件が起こっていることを耳にする。

神隠し事件の真相に迫っていく彼女だったが、その裏にはとんでもない恐怖と真実があったのでした…。今回もネタバレなしで紹介していきます!

ホラーの種類がどんどん変わっていく

まず、本作は表紙や謳い文句からホラー小説、中でもバイオホラーだと書かれています。ただ、個人的には、読み進めていくほどに、恐怖の姿がどんどん変わっていくように感じました。

物語の冒頭では、羆に襲われたことで起こったのではないかという一つの事件が起こります。この時点では、羆という動物に襲われることへの恐怖を感じる作品になっていました。

しかし、調べていくと、たしかに大きな獣のようなものが起こした事件ではあるものの、どこか奇妙な点もありました。その次に待っているのが、謳い文句にあったバイオホラーです。

羆の話からこんな風に物語が展開していくなんてという驚きもありました。そして、最後には…。この部分はぜひ読んで確かめていただきたいなと思います。

アクションの部分が多めに感じるかも

ただ、中盤から終盤にかけて、少しアクション描写の多いシーンが続きます。

ある脅威に対してどのようにして立ち向かうのか。そして倒すのか。こうしたシーンが描かれるからです。これに関しては、バイオホラーというジャンルなので、仕方ないかもしれません。

ミステリが好きで、早く謎解きと答えを知りたいと思ってしまう、私のようなミステリ中毒者には少し冗長に感じるかもしれません。

しっかりとミステリにもなってる

アクションが多いとは書いたものの、本作はしっかりとミステリの体裁もとられています。というのも、このバイオホラーの元凶を作ったのは人間で、どうやら黒幕が存在しているようだからです。

はたして誰が何の目的でこのようなテロのような行為をおこなっているのか。これ以外にも数々の伏線が張られており、しっかりと回収されていきます。

また、黒幕がわかったシーンでは、きっとゾッとしてしまうことでしょう。あまりにもキレイにそしてものすごい勢いで鳥肌が立つほどにまとめ上げられたラストがあなたを待ち受けています。

医療従事者の著者ならではの、なかなか味わうことができないホラーミステリ。ぜひ体験してみてください。