読み終わってからすぐに「円紫さんと私」シリーズの2作品目を読んでみました。
北村薫『夜の蝉』です。
今回も前作のように、“日常の謎”が収録された短編集です。
今回も、私が気になった謎を円紫さんが解決するという構図は変わらず。
今作では、「私」の周囲にいる友人や姉との人間関係が描かれており、次作も読みたいと思う作品集でした。
収録されているのは以下の3編。
夜の底
謎:本が上下逆さや中身を入れ替えられるいたずらをされるのはなぜか?
本屋の国文の売り場で起こる不思議な現象。
本が上下逆さになっていたり、箱と中身が入れ替わるといういたずらが起こっていました。
誰が何のためにやっているのか?
この作品では、友人の正ちゃんとの関係が描かれています。
正ちゃんが絶対に自分の星座を教えないのはなぜ?というちょっとした謎もあります。(円紫さんはすぐに解いてしまうのですが)
上記の大きな謎についても、真相は「なるほど」というもので、確かに合理的な理由がありました。
ただ、あえてなのかもしれませんが、前作同様、1つの短編が読みづらい…。
サクサク読めるテンポだと余韻がとなってしまうのですが、活字に慣れてないと離脱しかねないのが難点ですね。
六月の花嫁
謎:チェスのクイーンの駒がなくなったのはなぜか?
2作品目は江美ちゃんという友人との物語です。
江美ちゃんの他、友人たち数名で行った軽井沢の別荘で起きた事件。
みんなで遊んでいたチェスからクイーンの駒が消えてしまったのでした。
別荘内をあちこち探し回った結果、クイーンはあったものの、今度は卵が冷蔵庫からなくなっていて…。
犯人は何のためにそんなことをしたのか?
「私」と江美ちゃんの関係が浮き出ている本作。
謎が明らかにされた後の展開も見事でした。
仲の良さを直接的に説明をする文章はないのに、2人が深い関係だということを描写できるのはすごいと思いました。
そして、謎を聞いただけで答え以外のこともわかってしまう円紫さん。
着眼点のすごさが発揮される作品でした。
夜の蝉
謎:恋人にあげたはずのチケットが、恋人の同僚の手に渡っていたのはなぜか?
3編目は姉との物語。
姉が恋人宛てに送ったチケットが、なぜか恋人の同僚(女性)の手に渡っていた。
恋人とは、関係に溝ができかけていたタイミングで起きた事件。
姉は恋人との仲を終わらせてしまおうと考える。
この作品は謎を説明するのが難しいです。笑
ただ、この1編については謎よりも姉と「私」の関係が大事かなと思います。
クールビューティーですごい姉。
しかし、姉には姉なりの苦悩があって、「私」に対しての後ろめたさもありました。
事件をきっかけに本音を言い合った姉妹の成長が、この作品の最大のポイントでしょう。
その流れを汲んでの、ラスト2行は素晴らしいなと感じました。
まとめ
前作では表面的に描かれていた登場人物と「私」の関係がよくわかる1冊。
ただ単に日常の謎を解くだけではない点が、このシリーズにファンが多い所以でしょう。
そして書いていて思いましたが、「円紫さんと私」シリーズをうまく説明するのは難しいです。笑
謎の真相が相まって活きてくる作品を、ネタバレなしに説明するのは結構大変…。
ミステリ好きにははまるはずなので、気になる人は1作目の『空飛ぶ馬』から読んでみてください。