就活を通じた人間ドラマを描いた小説『何者』。
直木賞受賞作品で、映画にもなっている人気作品です。
【感想】就活を通じて語られる葛藤と人間心理(朝井リョウ『何者』)今回は『何者』のアナザーストーリー。
登場人物にフォーカスを当てた物語集を紹介します。
朝井リョウ『何様』です。
生きるとは、何者かになったつもりの自分に裏切られ続けることだ。
直木賞受賞作『何者』に潜む謎がいま明かされる―。光太郎の初恋の相手とは誰なのか。
理香と隆良の出会いは。社会人になったサワ先輩。烏丸ギンジの現在。
瑞月の父親に起こった出来事。拓人とともにネット通販会社の面接を受けた学生のその後。就活の先にある人生の発見と考察を描く6編!(「BOOK」データベースより)
『何者』のアナザーストーリーと侮ることなかれ。
本作も、痛烈に心に刺さる物語ばかりでした。
水曜日の南階段はきれい
光太郎が高校生の頃の物語。彼が出版社に入ろうと考えたきっかけが語られています。
毎週キレイな南階段。いつも掃除している女子生徒がいました。
彼女は何のために掃除をしているのか?
ラストがめちゃめちゃ青春です!
ある意味で心に刺さる物語。こんな学生生活を送ってみたかった…。
それでは二人組を作ってください
理香と隆良の物語。
『何者』の時からムカムカしていた理香ですが、本作でも変わらず。笑
ただ、共感できる部分もあるので、少し辛い。
理香の性格の根源やどういう人間なのかがこと細かに描かれていました。
驚きはそこまでないですが、人間ドラマとしてはしんどい物語でした。
逆算
サワ先輩が登場する物語。
主人公ではないですが、結構重要な役どころでした。
何かにつけて逆算をしてしまう主人公の女性、松本有季。
(『何者』には出てきていないです)
それは自分が生まれた日と、付き合っていた彼氏に言われた言葉が原因でした…。
ラストの一行がすごい。
何ともないと思っていたらこれですか。笑
衝撃的過ぎて読み終えた後、しばし余韻に浸ってしまいました。
きみだけの絶対
烏丸ギンジの親戚の物語。
高校生の成長にフォーカスを置いた物語で、朝井さんの真骨頂な気がしました。
ミステリというか、びっくりポイントはないですが、人間ドラマとしては素晴らしいお話。
成長していく過程と最後の終わり方はとても美しかったです。
むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった
瑞月の父親が出てくる物語。
良い子をずっとやってきた人がバカを見る。
昔は悪かった方が、更生した時に評価が高くなる。
馬鹿正直な人が生きづらい世の中を描いた本作。
主人公に共感できて、その環境への嫌悪感がいっぱいになりました。
かと言ってラストの展開はちょっと…。と思いましたが。
タイトルの通り、人にはそれぞれ悩みがあるよと改めて感じました。
何様
『何者』で拓人が最後に受けていた会社が舞台。
本作はその会社の、面接官の立場で就活が描かれています。
どんな風に人を見ているのか?
そもそも、自分たちは合否を決められるだけの人間なのか?
新米面接官の克弘は葛藤するのでした。
社会人になったら何者かになれるのか?
『何者』のアンサーストーリーであり、作品への繋がりにもなっているお話でした。