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【感想】想像以上に大胆などんでん返し!日常の謎の先にある真実(七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』)

七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』を紹介します。本作は『七つの海を照らす星』の続編です。

【感想】どんでん返しだけじゃない!作品の仕掛けに思わずニヤリも(七河迦南『七つの海を照らす星』)

海を望む街に建つ児童養護施設・七海学園に勤めて三年目となる保育士の北沢春菜は、毎日多忙な仕事に追われつつも、学園の日常に起きるささやかながら不可思議な事件の解明に励んでいた。そんな慌ただしくも幸せな日々に、学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件が影を落とす。警察の見解通り、これは単なる不慮の事故なのか? だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繫がる重要な手がかりが隠されていた――鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』に続く清新な本格ミステリ。(「BOOKデータベース」より)

前作と同じように日常の謎を題材にしているのですが、今回は作品を通じて大きな謎が提示されています。それは、文化祭の日に起きた転落事故の謎です。

事故なのか?自殺なのか?それとも殺人なのか?

この謎と一緒に物語は進んでいき、最後には想像以上に大胆などんでん返しが待っていました…。

4つの日常の謎

本作では転落事故が起こるまでの過去の話において、日常の謎が語られ、その合間に転落事故が起きた後の話が挟まっています。

日常の謎自体はそれだけで楽しめる作品で、どうして転落事故が起きたのか?に至るまでの生活を描いています。前作もそうでしたが、この短編自体もミステリとしてのレベルが高いのですよね…。

  • 母親に崖から突き落とされた少年
  • サッカー場から消えた生徒たちの謎

中にはしんどい結末の話もあるのですが、救いがないだけではなく、どこか光のあるラストが用意されているのも個人的には好きでした。伏線もきちんとあり、謎の解明に至るまでの流れもとても良いです!

こんな大胆などんでん返しは初めて…

私がこの作品を気に入っている理由はどんでん返しが大胆過ぎることです。

どんでん返しがすごいという触れ込みは知っていたので、どんなものかなと思って読み進めていました。どこで起こるのか予想がつかず、どんなラストが待ち受けているのか期待していたのですが、予想以上でした…。

これまでたくさんのどんでん返しを読んできましたが、ここまで大胆なものは初めてです。大胆過ぎるがゆえに気付けなかったことが結構悔しい…。ただ、気付けないような伏線の張り方をしているので、余計に驚きが増すんですけどね。

小説の構成を見事に活用した、最高のどんでん返しでした。頑張れば実写化できそうな気がするのですが、小説じゃないと威力は半減(それ以上かも)してしまう。仮に映像になったとしても、この衝撃は活字で味わってほしいですね…。

前作を読まないとつまらないかも

ここまで熱く本作の紹介をしてきましたが、正直、前作を読んでいないとつまらないと思います。

【感想】どんでん返しだけじゃない!作品の仕掛けに思わずニヤリも(七河迦南『七つの海を照らす星』)

というのも、前作の登場人物に関してしっかり紹介されるわけではないので、誰なのかよくわからないまま話が進んでしまうことがあります。しかも、本作のメイントリックは前作があってこそという印象が強いです。

驚けるには驚けますが、インパクトは弱くなってしまうかなと…。私自身、前作を読まずにこの作品から入っていたらそんなに楽しめてなかった気がします。

なので、まずは『七つの海を照らす星』を読むことを強くおすすめします。こちらも十分に楽しめる作品であることは保証します!