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【感想】ひきこもり探偵が挑む日常の謎(坂木司『青空の卵』)

人が死なないミステリ。“日常の謎”と呼ばれています。ちょっとした不思議を解明するのが主題の物語。『空飛ぶ馬』や『氷菓』などが有名な作品でしょう。

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今回はその中でも一風変わった探偵が登場する小説を紹介します。

坂木司『青空の卵』です。

僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。(「BOOKデータベース」より)

「僕」の周りで起こるちょっとした不思議。それをひきこもり探偵が解決していく物語です。本作には4つの中編が収録されています。

新しいタイプの安楽椅子探偵

外資系の保険会社に勤める、坂木司。彼がいわゆるワトソン役を担っています。そして、探偵役が鳥井真一。鳥井は、いじめや母親のせいでひきこもりになってしまいました。

そのため、鳥井が出かけた先で事件が起こるということはありません。基本的には、坂木の周りで起きたちょっとした謎を、鳥井が部屋で推理するというテイストになっています。

ひきこもりという、新しいタイプの安楽椅子探偵ですね。

一気に解決される心地よさ

本作の日常の謎を紹介します。

  • 男ばかりを狙う通り魔の正体
  • 盲目の少年をつけ狙うストーカーの正体
  • 役者のもとに届く差し入れの謎
  • 親が見つからない迷子の子ども

坂木が謎を持ち帰っては、鳥井が推理する。この推理があっという間過ぎます。笑

「何がどうなってそういう真相になるの?」と思わず感じるほどのスピード感です。

順序だてて説明されると理に適っていて理解できます。解決編の心地よさはとても素晴らしかったです。

日常の謎が好みという方はきっと楽しめる一冊でしょう。