どんでん返しの名手と言われたら誰を思い浮かべますか?
個人的には伏線回収がとても上手で「やられた!」という感覚をくれる作家さんがその傾向にあると思っています。
今回は、私が思うどんでん返しの名手、道尾秀介さんの長編作品を紹介します。
道尾秀介『カラスの親指』です。
【感想】短編集に迷ったらこれ!6つの奇妙な物語集(道尾秀介『鬼の跫音』)人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。
ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。
「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。
各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。
「このミス」常連、各文学賞総なめの文学界の若きトップランナー、最初の直木賞ノミネート作品。
第62回日本推理作家協会賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
短編作品でも、華麗な伏線回収を見せてくれる道尾さん。
長編では長編らしい、壮大などんでん返しをかましてくれます!
詐欺師と少女たちが織り成す不思議な生活
2人組の中年詐欺師、武沢竹男と入川鉄巳。
人生に夢を持てずに生きている2人は詐欺によって生計を立てていた。
そんなある日、スリを働いていた少女、河合まひろと出会う。
お金がなくて住む家がないまひろに対して、武沢は「一緒に住まないか?」と持ち掛ける。
実は、武沢はまひろにある負い目を感じていたのだった。
まひろは武沢の言葉に甘えて一緒に生活をすることになる。
そこにはまひろだけではなく、姉のやひろ、その彼氏の石屋貫太郎。そして、猫のトサカがいた。
こうして5人と1匹の共同生活が始まるのだった。
一世一代の詐欺の先にあった真実
ここまで簡単に物語のさわりを紹介しました。
この後、武沢たちは過去の因縁に巻き込まれ、ピンチに陥ってしまいます。
敵の攻撃によってトサカが殺害され、家には放火をされた武沢たち。
このまま泣き寝入りはしたくない!
この思いから、敵に逆襲をしようと考えます。
詐欺師らしく、大きなペテンを仕掛けることになります。“アルバトロス作戦”です。
作戦はうまくいくのか?
そして、武沢は過去の因縁に終止符を打てるのか?
伏線回収が上手すぎる
私が本作が大好きな理由。それは伏線回収が上手すぎるからです。
回収されない伏線がないくらいキレイにすべてが1本につながり、とんでもない真実が最後には浮かび上がってきました。
一世一代の大芝居、“アルバトロス作戦”は成功するのか?
ここも緊迫するとても良いシーンなのですが、その後の怒涛のどんでん返し、伏線回収がえげつない。
盛大にヒントが盛り込まれていたし、よくよく考えれば気づきそうなことなのに、わからないように周到に仕組まれた物語構成。
オチも素晴らしいし、タイトルの意味もとてもお見事。
伏線を確認したい以外にも、清々しい気持ちになりたくて読み返したくなります。
爽快に騙されたい人におすすめのコンゲーム小説です!