森博嗣『黒猫の三角』を紹介します。S&Mシリーズの続編となる、Vシリーズの第一作目。先のシリーズとは異なる面白みがありました。
一年に一度決まったルールの元で起こる殺人。今年のターゲットなのか、六月六日、四十四歳になる小田原静江に脅迫めいた手紙が届いた。探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環視の密室で静江は殺されてしまう。森博嗣の新境地を拓くVシリーズ第一作、待望の文庫化。(「BOOKデータベース」より)
Contents
規則性のある殺人事件
那古野で起こっている奇妙な殺人事件。3年前には11歳、2年前には22歳、昨年は33歳。ゾロ目の年齢の女性が、ゾロ目の日に殺されるというものです。
探偵の保呂草は、この規則に当てはまる女性から周辺警護の依頼を受けました。彼女は脅迫状を受け取っており、自分が殺されることを懸念していたのです。保呂草は自身が住むアパート・阿漕荘の住人達と、依頼人の屋敷を見張り始めます。
そして、犯行が起こるであろうゾロ目の日。保呂草たちが監視をしていた屋敷で殺人事件が起きてしまいます。衆人環視の密室で何が起こったのか?
登場人物の個性が強い
ここまでがざっくりとした作品紹介でした。一冊目ということで、次にVシリーズの登場人物にも触れてみます。今シリーズは全員個性が強いです!
まず、本シリーズの探偵役である瀬在丸紅子。資産家の両親を持っていましたが、現在はボロボロの家に住んでいるという経歴も変わっていますが、性格もなかなかクセがある。自称科学者で、言いたいことをズバズバいう勝気な性格。他の登場人物との掛け合いは楽しいです。
次に、小鳥遊練無。少林寺拳法をやっている大学生ですが、女装癖があり、男性だと気づかれない容姿の持ち主です。香具山紫子というキャラクターは女性なのに、男性のような性格や仕草をしている。二人の対比はよく描かれていますね。
最後に探偵の保呂草潤平。彼は後の話でも色々わかる部分があるので、詳細は省きます。読めば読むほど変わってることがわかってきました笑。(この記事を書いている時点で6作目まで読んでいます)
S&Mシリーズの犀川と西之園ペアとはまた違う雰囲気があるシリーズに感じました。
【森博嗣】S&Mシリーズの読む順番は?『すべてがFになる』からなる全10作のあらすじと一緒に紹介!ミステリ色は弱い?
作品の感想に戻ります。本作、謎は個人的には好みではありましたが、ミステリ色はあまり強くないです。謎解きの過程もかなり急な印象でしたし、トリックは驚けるものではなかった。
「まあそうだよね」というのが、謎解きが終わった後の感想でした。ミステリを期待して読むと少し肩透かしかもしれません。ただ、S&Mシリーズの延長として読み始める分には楽しめます。
登場人物に魅力があるし、セリフの一つ一つが示唆に富んでいます。また、キャラクターの個性が異なるので、そこも含めて楽しいですね。このシリーズも全部読破していこうと思います!
次回作のレビューはこちらです。
【感想】Vシリーズの2作目!人形劇で起きた心理的密室の謎(森博嗣『人形式モナリザ』)