全国の書店員が「今一番売りたい本」を選ぶ・本屋大賞。2025年2月3日に全10作のノミネート作品が発表されました。大賞の発表は4月9日の予定です。
【2025年本屋大賞】
先程、ノミネート10作品が発表となりました
大賞発表は4月9日を予定しておりますノミネート発表後、たくさんのコメントを…ありがとうございます(リポストが追いきれず、すみません♂)
大賞発表もお楽しみにスケジュール等はこちら▼https://t.co/xjeuJzQqWM pic.twitter.com/ewLvIQNYKU
— 本屋大賞 (@hontai) February 3, 2025
以前の記事でノミネート作品を予想していましたが、10冊中6冊が当たりとなりました!

ノミネート作品をすべて読んだので、この流れで、2025年本屋大賞の大賞&順位予想をしようと思います。ただ、毎年ではありますが、今年の作品はどれも面白くて、順位予想がまったくわかりませんでした。だからこそ、ノミネート作品が当たりやすかった気もしています。
難しかったですが、頑張って大賞予想をしてみましたので、ぜひチェックしてみてください。また、最後には個人的なランキングも発表しますのでお付き合いください!
目次
本屋大賞とは何?
まずは、簡単に本屋大賞について説明をします。
本屋大賞とは、書店員が選ぶ賞として、2004年からスタートしました。一般の文学賞とは異なり、作家や文学者が選考に入ることはない。その名の通り、本屋が選ぶ本の大賞です。
2025年では、2023年12月1日~2024年11月30日までに出版された書籍が対象となっています。
本屋大賞には2回の投票があります。
一次投票では、全国の書店員が3冊の本に投票をします。ここで選ばれた上位10作品がノミネート作品として発表されます。
二次投票ではノミネート作品をすべて読んだ上で、全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票します。投票の得点換算は1位が3点、2位が2点、3位が1.5点です。
現在は、一次投票で選出されたノミネート作品が10作品公表されている状態です。二次投票の締切が3月2日。この二次投票の集計結果により大賞作品を決定します。
2025年は4月9日に大賞とランキングが発表される予定です。
2025年本屋大賞ノミネート作品一覧と感想
早見和真『アルプス席の母』
秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?
補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。主人公は選手から母親に変わっても、描かれるのは生きることの屈託と大いなる人生賛歌! かつて誰も読んだことのない著者渾身の高校野球小説が開幕する。
高校野球を母親の視点で描いた物語。神奈川のシニアで活躍していた中学生は、大阪の高校へと特待生で入学をすることになる。
息子は寮生活になるが、シングルマザーの彼の母は息子と一緒に大阪へ移り住むことにする。野球部の父母会のルールや謎のしきたりなどに苦労をしながらも、息子と一緒に甲子園に行くために奮闘していきます。
高校野球の選手たちではなく、母親にスポットライトを当てた新しいタイプの作品で、読んでいてイライラや苦しさを感じる場面も多い。
それでも最後には爽快感が胸いっぱいに広がってこみ上げてくるものもある。親への感謝、子どもへの愛をそれぞれ感じられる作品です。
阿部暁子『カフネ』
一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
急死した弟の遺言状の執行人になった女性。遺言状には両親と自分の他に、元恋人へも遺産を分けてほしいとあった。
融通の利かない元恋人とはなかなか意思疎通ができずうまくいかない。しかし、彼女が働く家事代行サービスの事業を手伝うことになり、少しずつ距離が縮んでいく。
食べ物を通じての人間ドラマが美しくて作品の世界に惹き込まれる。人との絆には様々なものがあるし正解はない。だからこそ大切な人との時間を、大切に過ごそうと思える。心に寄り添ってくれる素敵な物語です。
山口未桜『禁忌の子』
救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか、武田は旧友で医師の城崎と共に調査を始める。しかし鍵を握る人物に会おうとした矢先、相手が密室内で死体となって発見されてしまう。自らのルーツを辿った先にある、思いもよらぬ真相とは――。過去と現在が交錯する、医療×本格ミステリ! 第三十四回鮎川哲也賞受賞作。
救急医の武田のもとに、搬送されてきた溺死体。それは自分と瓜二つだった…。双子はいないはずなのに、なぜ自分と同じ外見の人間が存在しているのか。
調査を進めていくと殺人事件にも遭遇してしまう武田。溺死体の正体や殺人事件の犯人は誰なのか?
謎が謎を呼ぶ展開で先が気になるので、どんどん読み進めてしまう。読ませるストーリーが素晴らしい作品でした。過去に本屋大賞にノミネートされている、今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』と同じく鮎川哲也賞を受賞した作品です。
一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』
プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。カメラマンの新夏は啓久と交際5年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が”出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。信じるとは、許すとは、愛するとは。男と女の欲望のブラックボックスに迫る、著者新境地となる恋愛小説。
プロポーズの翌日に、婚約者が盗撮容疑で逮捕された。
出来心でやってしまったという彼にどのように接するべきなのか。この出来事をきっかけに2人や周囲の人たちとの関係が変化していく。
何は許せて何は許せないのか。その基準は何なのか。自分の価値観をまったく想定もしなかった角度から問い質してきた作品です。
他人の過ちに対して自分は何を思うのか。心に残ることが多々ありました。
野﨑まど『小説』
五歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、内海集司の人生は小説にささげられることになった。
一二歳になると、内海集司は小説の魅力を共有できる生涯の友・外崎真と出会い、二人は小説家が住んでいるというモジャ屋敷に潜り込む。
そこでは好きなだけ本を読んでいても怒られることはなく、小説家・髭先生は二人の小説世界をさらに豊かにしていく。
しかし、その屋敷にはある秘密があった。
内海集司は『走れメロス』を読んだことをきっかけに小説にのめり込むようになる。
そして小学生の時に出会った外崎真と小説家の屋敷で小説の世界に浸り込むようになっていく。
人はなぜ小説を読むのか。小説を読むだけではいけないのか。
小説をよく読む人なら直面したことのある問いに対して哲学的に答えを返してくれたような作品。少し難しさもありましたが、本が好きなら残ることはあるはずです。
金子玲介『死んだ山田と教室』
夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。
クラスの人気者の山田が事故で亡くなった。悲しみに暮れるクラスメイトたちだったが、なぜか山田の魂は教室のスピーカーに乗り移っていた。
山田とともに過ごせる学校生活を喜ぶみんなは、山田と話す際の合言葉を決めたり、クラスの状況を報告したり、山田と話すことを楽しんでいた。しかし、学年が上がるにつれて、関係が変化していき…。
おバカなクラスメイトたちとの交流はユーモアがあってとにかく面白い。かと思いきや、少しシリアスな展開になったり、ミステリー要素もあったりします。
後半には驚きの展開もあるし、終わり方も心に響くところや気持ち良さがある。個人的には特に好きな作品でした。
恩田陸『spring』
自らの名に無数の季節を抱く無二の舞踊家にして振付家の萬春(よろず・はる)。少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。同時代に巡り合う、踊る者 作る者 見る者 奏でる者――
それぞれの情熱がぶつかりあい、交錯する中で彼の肖像が浮かび上がっていく。
彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。
一人の天才をめぐる傑作長編小説。
今回で3度目のノミネートとなる恩田陸さんの作品。過去の2回はどちらも大賞を受賞しています。
本作はバレエを題材にしており、バレエの才能がずば抜けている萬春(よろず はる)を主人公に4人の視点で描いた作品です。
『蜜蜂と遠雷』と同じように、本を読んでいるはずなのに踊りや音楽が不思議と想像できてしまう。世界観が完成されていて素晴らしかった。
そして、天才である春の魅力もキレイに描かれているので、気づけば読者も彼に惚れ込んでしまう。美しい芸術に触れているような素敵な読書体験でした。
朝井リョウ『生殖記』
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
『正欲』以来となる長編作品で、今回は“あるもの“の目線で、ヒトの人生・生殖についてを描いています。テーマは『正欲』と同じような、多様性や今の社会で人として生きることですが、語り口はかなり軽いです。
朝井リョウさんのエッセイのような文体なので面白おかしくスラスラ読めてしまいます。しかし、テーマは決して軽くないので、ある意味でとても皮肉が効いている物語です。
宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』
成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応え、ますますパワーアップの全5篇!
前回の本屋大賞で大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』の続編です。
女子大生になった成瀬と、その周囲の人たちの物語が5つ収録されています。前作同様に、自分を貫いているカッコいい成瀬に再会できる嬉しさとよりパワーアップしたどこか心強さがあります。
読後は晴れやかな気分と元気をもらえる素敵な作品です。個人的には2作目の本作の方が好きでした。
青山美智子『人魚が逃げた』
ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りした。どうやら「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っているらしい。彼の不可解な言動に、人々はだんだん興味を持ち始め――。そしてその「人魚騒動」の裏では、5人の男女が「人生の節目」を迎えていた。12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員、娘と買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込みすぎるあまり妻に離婚されたコレクター、文学賞の選考結果を待つ作家、高級クラブでママとして働くホステス。銀座を訪れた5人を待ち受ける意外な運命とは。そして「王子」は人魚と再会できるのか。そもそも人魚はいるのか、いないのか……。
「人魚が逃げた」というワードがSNS上トレンド入りした。銀座の街頭インタビューで王子を名乗る青年が「僕の人魚が逃げた」と言ったことがきっかけだった。
5人の悩める男女の人生の節目を描いた連作短編集で、王子との出会いが彼らの運命にも関係をしてきます。どの作品も優しさに溢れていて読んでいて元気になる。
人生の良いこと悪いことをキレイに描いてくれて、全面的な肯定ではないけど元気をもらえる素敵な一冊です。
本屋大賞の大賞予想&順位予想
最後に私が考える2025年の本屋大賞ランキング予想と、私の好みランキングを紹介します!
まずは本屋大賞の順位予想から!
本屋大賞の順位予想
【本屋大賞のランキング予想】
1位:阿部暁子『カフネ』
2位:野﨑まど『小説』
3位:一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』
4位:早見和真『アルプス席の母』
5位:宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』
6位:恩田陸『spring』
7位:山口未桜『禁忌の子』
8位:青山美智子『人魚が逃げた』
9位:金子玲介『死んだ山田と教室』
10位:朝井リョウ『生殖記』
2025年の本屋大賞の予想は阿部暁子さんの『カフネ』です。ツラい出来事を通じての人との関係性を描く。一人ではなくみんな誰かと生きていく。そんなテーマが心にぐっとくる作品です。
最後に希望の光が薄っすらと見えてくる展開も素晴らしく、過去の大賞受賞作品(『流浪の月』、『52ヘルツのクジラたち』、『汝、星のごとく』)と似た雰囲気ということもあります。
個人的にも素敵な物語だと感じましたし、なかなか難しいですが、阿部暁子『カフネ』が2025年の本屋大賞だと予想します!
2位は、野﨑まどさんの『小説』を予想しています。小説を読むとは何か?に切り込んだ斬新な設定とそこから繰り広げられる世界観が素敵な作品。本好きの票はかなり集まるのではないかと思い、2位に予想しました。
3位は、一穂ミチさんの『恋とか愛とかやさしさなら』。しっかりとした人間ドラマになっており、人との関係性を考えさせられるものです。過去作の『光のとこにいてね』とはひと味違ったお話ではありますが、美しさや根底には似た部分もあり、この作品も評価は高いと感じています。
『アルプス席の母』は、『そして、バトンは渡された』のような親と子の物語ではありますが、テーマが高校野球ということもあり、1位にはなりづらいのではないかと考えています。
恩田陸さんの『spring』もとても良かったのですが、どうしても『蜜蜂と遠雷』が先行してしまい、こちらが強すぎるということもあって、大賞にはならないのではないかと感じました。
とはいえ、今年の予想は本当に難しいです!
たかひでの本棚の順位
最後に、個人的な好みのランキングも紹介します!
【たかひでの本棚のランキング】
1位:金子玲介『死んだ山田と教室』
2位:早見和真『アルプス席の母』
3位:阿部暁子『カフネ』
4位:宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』
5位:山口未桜『禁忌の子』
6位:朝井リョウ『生殖記』
7位:恩田陸『spring』
8位:青山美智子『人魚が逃げた』
9位:一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』
10位:野﨑まど『小説』
1位は金子玲介さんの『死んだ山田と教室』です。正直、個人的には圧倒的に面白かったです。バカバカしい軽いノリとそこから生み出されるコメディチックな会話が、ユーモアがあって面白い。そして、少しの謎解き要素もあって最初から最後まで飽きるところがどこにもありませんでした。
2位は早見和真さんの『アルプス席の母』です。高校野球をやっていたということもあり、母への感謝の気持ちも湧きつつ、球児を応援する気持ちも湧いて、とても良い読書体験になった作品でした。
3位の『カフネ』は大賞予想にもある通り、とにかく優しくて素敵な人間ドラマです。不器用な人間関係は、読後には微笑ましい気持ちにもなってくる。素晴らしい心地で読み終えられました。