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【特殊設定ミステリ15選】絶対に読むべきおすすめの小説を紹介

特殊設定ミステリ

近頃、ミステリ好きの間でブームになっているジャンルがあります。それは特殊設定ミステリです。

通常の環境下ではありえないような状況や設定を舞台とした本格的なミステリというジャンルです。例えば、霊能力がある主人公が出てきたり、人を殺せない環境(ゲーム内)などで殺人が起きたり、タイムスリップをしたり、予言者が現れたりなど。

普段は絶対に起こらないシチュエーションでの、その設定を活かした論理的な推理を楽しめるのが醍醐味です。今回はそんな特殊設定ミステリのおすすめ作品を15作紹介します!

1.相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』

死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女へと迫り――。ミステリランキング5冠、最驚かつ最叫の傑作!

霊媒師の能力を持った翡翠が霊視をもとに導き出した答えを、作家の香月が論理的に解き明かすというミステリ小説。霊視という特殊設定を用いてのミステリでとても真新しいです。

本作は“すべてが伏線”という触れ込みで話題になっていました。当たり前ですが、この謳い文句に嘘はありませんでした。本当に何もかもが伏線です。

期待が高かったので、途中までは「こんなもんか」という印象でした。ただ、後半の数十ページで一気に作品が姿を変えてきます。特殊設定を駆使した伏線をここまで上手く使うとは…。というくらいに凄まじいどんでん返しがありました。

2.浅倉秋成『教室が、ひとりになるまで』

北楓高校で起きた生徒の連続自殺。ひとりは学校のトイレで首を吊り、ふたりは校舎から飛び降りた。「全員が仲のいい最高のクラス」で、なぜ――。垣内友弘は、幼馴染みの同級生・白瀬美月から信じがたい話を打ち明けられる。「自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの」“他人を自殺させる力”を使った証明不可能な罪。犯人を裁く1度きりのチャンスを得た友弘は、異質で孤独な謎解きに身を投じる。新時代の傑作青春ミステリ。

『六人の噓つきな大学生』が話題の浅倉秋成さんの作品です。舞台はある高校。そこで連続自殺が起こります。1人目はトイレで首つり自殺。2人目と3人目は校舎からの飛び降り自殺でした。どう考えても自殺としか考えられない状況。しかし、彼らは自殺するような生徒たちではありませんでした。

そんな中、主人公の垣内はある特殊能力を授かります。垣内が通う高校では、在校生の中から、ランダムで4名に特殊な能力を与えられていたのです。

どうやら連続自殺にもこの能力が関連している様子。同じ能力者たちと協力しながら一人の容疑者を見つけ出します。果たして、犯人はどのような能力を用いて連続自殺を起こしたのか。

能力の伏線もさることながら、事件に隠されていた謎が暴かれるラストはとても驚愕でした。特殊設定をとても巧みに伏線としても織り交ぜてきています。能力系が好きな方にはとにかくオススメ!

3.阿津川辰海『名探偵は嘘をつかない』

名探偵・阿久津透。数々の事件を解決してきた彼は、証拠を捏造し、自らの犯罪を隠蔽したという罪で、本邦初の探偵弾劾裁判にかけられることになった。兄を見殺しにされた彼の助手、火村つかさは、裁判の請求人六名に名を連ねたが、その中には思わぬ人物も入っていて―!新人発掘プロジェクトから現れた鬼才、審査員を唸らせた必読のデビュー作、待望の文庫化!(「BOOK」データベースより)

おすすめいただいた特殊設定ミステリでした。正直あらすじだけを読むと(探偵の弾劾裁判という部分が特殊な世界観といえばそうなりますが)あまり特殊設定のような部分はなさそうと感じました。しかし、それは間違いでした…。読み進めていくにつれて、これでもかというくらいに特殊な設定が押し寄せてきます。

途中までは探偵である阿久津が、事件を解決するために証拠を捏造したのかどうかという裁判で物語が進んでいきます。全編を通じて裁判を中心に物語は進みますが、中盤で想像もしなかった設定が姿を見せます。

ここから後半にかけての展開はページをめくる手が止まりませんでした。何がどうなっているの?ということはそうなんですが、この設定があったということで、前半の伏線が心地よく回収されていきます。ページ数が多く長いと言えば長いですが、そんなことは気にならないくらいに面白いです。

4.綾辻行人『Another』

夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい何が起きているのか!?いまだかつてない恐怖と謎が読者を魅了する。名手・綾辻行人の新たな代表作となった長編本格ホラー。(「BOOK」データベースより)

転校してきた榊原の目には、誰からも認識されていない生徒が見えていた。そして、このクラスには呪いがあり、事故死が頻発してしまうのだった。冒頭はこのような調子で、何が何だかわかりません。

しかし、徐々にどういう世界観がわかってきます。いかに奇抜な特殊設定だったのかが判明してきます。ここまで来るとある意味の犯人を捜し出すというフェーズに移行していき、ミステリ色が強まってきます。

そして、実はわけがわからなかった前半から、伏線は丁寧に仕込まれていました。これには震えました…。予想をはるかに上回るどんでん返しが待ち構えています。

5.乾くるみ『リピート』

もし、現在の記憶を持ったまま十ヵ月前の自分に戻れるとしたら?この夢のような「リピート」に誘われ、疑いつつも人生のやり直しに臨んだ十人の男女。ところが彼らは一人、また一人と不審な死を遂げて…。あの『イニシエーション・ラブ』の鬼才が、『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』に挑んだ仰天の傑作。(「BOOK」データベースより)

現在の記憶を持ったままの状態で10か月前に戻る、「リピート」ができるようになった男女。「リピート」によって、それぞれ好きなように過去を変えるのかと思いきや、いきなり事件が起こる。

「リピート」をしたメンバーの1人が事故で亡くなってしまう。その後も事件は続き、別のメンバーも次々と死んでしまう。

「リピート」をしなかったら起きなかったはずの事件が次々と起こっていく。何者かが「リピート」をした者だけを狙って事件を起こしているのか。目的は一体何なのか。

タイムリープを題材にした特殊設定ミステリ。事件の真相がかなり意外でした。盲点とも言える角度からの衝撃がやってきます。そして、読後の喪失感も…。おすすめです。

6.今村昌弘『魔眼の匣の殺人』

その日、神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子を含む9人が、人里離れた班目機関の元研究施設“魔眼の匣”を訪れた。その主であり、予言者として恐れられている老女は、来訪者に「あと二日のうちに、この地で4人死ぬ」と告げた。施設と外界を結ぶ唯一の橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。ミステリ界を席捲した『屍人荘の殺人』シリーズ第2弾。

こちらは、ネタバレ絶対禁止で話題になった『屍人荘の殺人』の続編となっています。単体でも楽しめますが、少し1作目のネタバレが含まれるので、未読の場合は『屍人荘の殺人』から読みましょう。こちらもかなり斬新な特殊設定ミステリです。(内容は読んでからのお楽しみ)

2作目となる本作は予言を題材にした特殊設定ミステリです。予言者として名高い老女「サキミ様」。彼女が「男女が2人ずつ合計4人がここで死ぬ」と予言したクローズドサークルで事件は起こってしまいます。そして、閉じ込められた場所には、もう一人の予言者もいるのですが…。

クローズドサークルにはつきものの殺人事件。今回は予言という特殊性が物語の核となっています。ただ、本作についても内容に踏み込みすぎるとネタバレになってしまう気がします…。

簡単に言うと、この特殊設定だからこその、事件の必然性が素晴らし過ぎたんです…。正直、1作目よりも段違いに面白いと感じました。(1作目も面白いですよ!)

なお、著者3作目の『兇人邸の殺人』も特殊設定ミステリとなっています。こちらもかなり面白く、個人的には3作目がベストでした。

既に2作を読み終えている人にはぜひとも手に取っていただきたいです!

7.岡崎琢磨『Butterfly World 最後の六日間』

人型のアバター=バタフライが生息するVR空間〈バタフライワールド〉にログインしたアキは、ログアウトせず現実世界に戻らない者たちが暮らす〈紅招館〉に向かう。アキはある事情から〈紅招館〉に住み続けたいと願うのだが、非暴力が徹底されているはずの〈館〉で住人の死体が発見される……。

人型のバタフライとして生息できるVR空間〈バタフライワールド〉。この世界では、絶対に暴力を振るうことができないようになっていました。

VR空間にもかかわらずなぜかログインをしないで住み続けているユーザーが集まっているという館にやってきた主人公のアキ。しかし、翌日、館の住人が死体で発見されてしまう。

殺すことはおろか、暴力すら許されていない世界でなぜこのような事態が起きてしまったのか?

設定がとにかくよくできている作品。よく考えればわかったかもしれないという良いラインで伏線回収とネタバラシあるので、爽快な気分になれます。

8.斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』

2人以上殺した者は“天使”によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界。過去の悲惨な出来事により失意に沈む探偵の青岸焦(あおぎしこがれ)は、「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱(つねきおうがい)に誘われ、天使が集まる常世島(とこよじま)を訪れる。そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。犯人はなぜ、どのように地獄に堕ちずに殺人を続けているのか。最注目の作家による孤島×館の本格ミステリ長篇

この世界には天使という存在がいます。ただし、頭に浮かんだイメージとはかけ離れた存在でしょう。なぜなら、顔はのっぺらぼうのようになっていて、コウモリのような羽が生えたグレーの容姿をしているからです。

この天使が、作中の世界では至るところに存在しています。そして、基本的には飛び回っているだけで何もしてきません。しかし、二人以上の人を殺すと、殺人犯の足元に地獄の炎が出現し、天使によって炎の中に引きずり込まれます。

つまり、この世界では絶対に連続殺人を起こすことはできないのです。連続殺人をした時点で犯人は天使に殺されてしまうからです。

ただ、この作品ではかなりの数の殺人事件が起きます。犯人はどのようにして天使のルールをかいくぐって人を殺していったのか。このトリックこそが本作の肝です。事前にルール説明もしっかりあるので、なんとなく、トリックをイメージはできますが、それを超える真相があるので驚きがたくさん。

しかも、主人公には悲しい過去があったり、エピローグに哀愁があったりで、トリック以外の人間ドラマも魅力的です。

9.白井智之『名探偵のいけにえ』

病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。調査に赴いたまま戻らない助手を心配して教団の本拠地に乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。奇蹟を信じる人々に、現実世界のロジックは通用するのか?圧巻の解決編一五〇ページ!特殊条件、多重解決推理の最前線!

病気も怪我も存在しない楽園で起きた、四つの密室殺人。事件の真相はもちろんですが、100ページを超える圧倒的な推理パートが最高です。

論理的な推理の応酬と最後に待ち受けているどんでん返しがとにかく鮮やか。特殊設定のお手本とも思えるような、ロジックの展開は本当に素晴らしかったです。

ただ、ミステリを読み慣れていない人は絶対に読まないでください!(特殊設定ミステリを求めている時点でミステリ好きな気がしますが笑)

というのも、ミステリにあまり触れてない段階でこの作品を読んでしまうのはもったいないからです。いろいろなミステリを読んだ後に「こんなミステリもありなのか…」という感想を持ってもらいたいです。笑

白井智之さんでは『東京結合人間』も、かなりぶっ飛んだ特殊設定ミステリになっており、ミステリとしてはこちらの方がわかりやすいと思います。

ただし、だいぶ気持ち悪さがあります…。

10.辻堂ゆめ『いなくなった私へ』

人気シンガーソングライターの上条梨乃は、ある朝、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ました。誰も彼女の正体に気づく様子はなく、さらに街頭に流れる梨乃の自殺を報じたニュースに、梨乃は呆然とした。自分は本当に死んだのか? それなら、ここにいる自分は何者なのか?
そんな中、大学生の優斗だけが梨乃の正体に気づいて声をかけてきた。梨乃は優斗と行動を共にするようになり、やがてもう一人、梨乃を梨乃だと認識できる少年・樹に出会う……。

気付いたら誰も自分を別人として認識する世界。主人公の梨乃は生きて存在しているはずなのに、死んでいることになっていた。

芸能人として人気者だった梨乃。ほとんどの人が自分を認識していないが、なぜか大学生の一人が自分のことを認識してくれている。梨乃は彼と一緒に、なぜ自分が死んだことになっているのかを探る。

さまざまな点で特殊設定な部分がある本作。「なぜ梨乃は死んだのか?(そもそも死んでいるのか?)」「死んだとしたら、なぜ生きているという状態があり得るのか」「なぜ自分を認識できる人もいるのか」など特殊設定の中で展開される伏線回収が素晴らしい一冊です。

11.西澤保彦『七回死んだ男』

高校生の久太郎は、同じ1日が繰り返し訪れる「反復落とし穴」に嵌まる特異体質を持つ。資産家の祖父は新年会で後継者を決めると言い出し、親族が揉めに揉める中、何者かに殺害されてしまう。祖父を救うため久太郎はあらゆる手を尽くすが……

ランダムで同じ1日を繰り返してしまうという特殊体質の持ち主である久太郎。彼は、祖父が殺されてしまう日を何度も繰り返すことになります。何とか祖父の死を防ごうと奮闘するのですが…。という作品です。

タイムリープものとしても有名な本作ですが、設定を駆使した最後のどんでん返しが衝撃的です。ラストの真相パートではとにかくビビりました。

結構ヒントもあったはずなのですが、すっかり騙されました。複雑に絡み合った結末でしたが、わかりやすく説明されているので、意味がわからないとはなりません。とても上手です。

同じ著者の作品では『人格転移の殺人』『神のロジック 次は誰の番ですか?』もおすすめです。

どちらもなかなか変わった特殊設定を題材にしています。『七回死んだ男』を既読の方にはおすすめの2冊ですよ。

12.麻耶雄嵩『さよなら神様』

「犯人は○○だよ」。クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。神様の残酷なご託宣を覆すべく、久遠小探偵団は事件の捜査に乗り出すが…。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに!第15回本格ミステリ大賞受賞。(「BOOK」データベースより)

こちらの作品は連作短編集です。何でも知っている神様の鈴木太郎。彼が発する「犯人は○○だよ」というセリフからどの物語もスタートします。

犯人が最初からわかっているという点では倒叙ミステリになるでしょう。ただ、なぜ犯人がその人なのか。どう考えてもアリバイがあったり、殺人が不可能な状況だったりしています。事件の真相を推理するために、主人公の桑町が調査や推理をしていくという物語です。

本作については、神様が犯人を伝えるという特殊性があります。これは絶対に揺るがないものという世界観で話が進むのが魅力です。

私は「バレンタイン昔語り」が素晴らし過ぎて大好きです。倒叙ミステリに特殊設定を加えるとこんなに驚きを起こせるのかと思わされました。「バレンタイン昔語り」だけでも読んでほしいです。

なお、本作は、児童書なのに内容が児童書ではないで有名な『神様ゲーム』の続編です。

ただ、内容が続いているわけではないので、前作を読んでいなくても楽しめます。

13.結城真一郎『プロジェクト・インソムニア』

睡眠障害(ナルコレプシー)のせいで失業した蝶野は、極秘人体実験「プロジェクト・インソムニア」の被験者となる。極小チップを脳内に埋め込み、”夢の世界(ユメトピア)”を90日間共有するという実験だ。願望を自在に具現化できる理想郷は、ある悪意の出現によって恐怖と猜疑に満ちた悪夢へと一変する。口径の合わない銃弾の謎。次々と消えてゆく被験者たち・・・・・・はたして連続殺人鬼の正体はーー。

睡眠に関する事業を展開する会社の人体実験。それは夢の世界(ユメトピア)で90日間過ごすというものでした。寝ることで、1日に1回はユメトピアに行くことができる。

人体実験に参加した7名。ここではこの7人が同じ世界を過ごせるという空間でした。もちろん、夢の中で死んでも、現実世界で死ぬことはありません。そのはずなのに、参加者が殺されていくという事件が発生してしまいます。犯人はどのようにして、参加者を殺しているのか?

現実世界で殺人事件が起こるというわけではありません。本作では現実世界では不審な死を遂げているのです。つまり、ユメトピアの中で殺されている。夢の中で死ぬはずはないのに、なぜ殺人事件が起きてしまうのか。

トリックに関しては完全に盲点でした。言われてみればなるほどとなる。『#真相をお話しします』のように最後に驚きがある。さすがの完成度でした。(欲を言うともうひと捻りあったら最高でした)

14.夕木春央『方舟』

大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。

地震のせいで地下施設に閉じ込められた9人の男女。脱出をするには誰か1人がそこへ残らないといけない状態になっていた。

そんな中で殺人事件が起きた。犯人だと特定されたら自分が生贄になることが確定する。それなのになぜ犯人は殺人を決行したのか。

特殊設定のハウダニットとワイダニット。どちらもとてもよく練られていて、最後のどんでん返しがどえらいことになってました。最後まで絶対に気を抜かないでください。そして、読後の放心状態を心地よく味わってください!笑

15.米澤穂信『折れた竜骨』

ロンドンから出帆し、北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナは、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた…。いま最も注目を集める俊英が渾身の力で放ち絶賛を浴びた、魔術と剣と謎解きの巨編!第64回日本推理作家協会賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

ヨーロッパの島の領主が何者かに殺害されてしまいます。そして、その殺人犯を探す。あらすじだけ聞くと王道ミステリのように聞こえるかもしれません。

本作の特殊設定としては、犯人には自分が領主を殺したという自覚がない点です。

なぜなら犯人は、魔法をかけられ「殺せ」と命令をされてしまっていたからです。しかも、魔法をかけられたことも覚えていないのです。

騎士のファルクは、犯人と、犯人に魔法をかけた真犯人を推理します。しかし、前述の通り犯人には自覚がありません。そのため、「犯人では有り得ない」という消去法によって、犯人を絞り込んでいきます。このアプローチの読みごたえが抜群です

様々な理由から「犯人ではない」という推理を進めるのですが、ここにも設定を駆使した様々な伏線が用意されていました。読み終えた後の爽快さは忘れがたいです。

まとめ

特殊設定ミステリとひとことに言っても種類は様々です。近未来のような設定の作品もあれば、タイムリープする作品や異世界や超常能力を舞台にした作品など。

今回紹介した作品は、こうした設定を上手く駆使して、心地よい推理が展開される物語ばかりです。キレイに回収される伏線はもちろんですが「そういうロジックもあり得たな!」と思わされる爽快感もあります。

ぜひ、この心地よい騙される感覚を楽しんでみてください!