三津田信三『厭魅の如き憑くもの』を紹介します。
戦慄の本格ホラー推理!山深い村に蔓延る恐怖の連続! 神々櫛(かがぐし)村。谺呀治(かがち)家と神櫛(かみぐし)家、2つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶(とうじょうげんや)」シリーズ第1長編。
奇妙な村で起こる連続殺人事件。ホラーというか怪奇小説らしさが満載の作品でした。どことなく金田一シリーズを彷彿とさせるようなお話です。
ホラーなの?ミステリなの?
物語の舞台は古くからの因習が残る神々櫛村。そこには対立している2つの名家と長くから伝わる、不可思議な伝説がありました。
神隠しが起こって村の子どもの行方がわからなくなった。厭魅という怪異がその村にはいて、災いをもたらしている。などなど。
こうしたどこか不気味な村で、連続殺人事件が起こってしまいます。この謎を怪奇小説家の刀城言耶(とうじょうげんや)が推理していくという物語です。
金田一シリーズのような、不気味な伝説になぞられた殺人というのは、気味が悪く怖さを覚えました。しかも、解決に至るまでは、どこまで人間のものなのかがはっきりしないのが本作の面白いところです。
最後の最後まで気が抜けない
本作は刀城言耶という探偵役がいるものの、名探偵ではありません。通常のミステリ小説における探偵と比較すると、劣っている方でしょう。
なので、推理が二転三転していきます。推理を披露するも答えが違った。その後は別の解を導き出して、改めて合っているかどうか検証する。
こうした解決編は他の推理小説では見かけることのない展開なので、読んでいてとても新鮮でした。しかも、本当に真相が明らかになるのは最後の最後(本当に最後の最後)。
そこまでに繰り広げられる推理も、的を射ているようにも見えるのでより楽しいです。
また、明らかになった真実には、とんでもない伏線があったことがわかります。読者は読み始めの時点から騙されていた。この衝撃はすごかったです。
難点なのは読みづらいこと
ただ、本作は少し読みづらさがあります。というのも、作品のほとんどが説明形式になっているのです。村にまつわる怪異や伝承を説明する必要があるため、この手の話がどうしても多くなってしまいます。
また、3人の視点で描かれてちょくちょく入れ替わるのと、時系列が少しわからなくなってしまう時がしばしば。
更に、同じ読みの登場人物が何人も登場してくるので、シンプルに誰が誰か覚えるのが最初は大変でした…。
ただ、ラストの種明かしはかなりの衝撃度でしたので、頑張って読み進める価値は絶対にあります!
色々などんでん返しを食らってきましたが、久しぶりに新しい角度から驚かされました。どんでん返し好きにはぜひ読んでもらいたい一冊です。