記事内ではアフィリエイトURLを使用しています

【感想】ただの成長物語じゃない!小説好きは絶対に読むべき1冊(辻村深月『ぼくのメジャースプーン』)

私の大好きな小説家の1人。辻村深月さん。

何でそんなにも繊細な人間心理がわかるのか?

そしてキレイに描けるのか?

辻村作品を読むたびに思う感想です。笑

しかも、最後にはキレイな伏線回収が待っている。

小説好きなら読まない理由がない小説家でしょう。

そんな彼女が、小学生を主人公に据えた作品を紹介します。

『ぼくのメジャースプーン』です。

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。

ある日、学校で起きた陰惨な事件。

ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。

彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。(「BOOK」データベースより)

心を壊された幼馴染

主人公は小学四年生の僕。

幼馴染のふみちゃんはクラスの人気者で勉強も運動もできる。

クラスのリーダー的な存在で、よくしゃべる元気な女の子だった。

しかし、ある日、ふみちゃんの心が壊れてしまった

学校で飼っていたうさぎが、二十歳の医大生・市川雄太によってバラバラにされてしまったからだった。

惨殺されたウサギを目にしたふみちゃんは、声も発せず元気も失ってしまった。

犯人の市川雄太は逮捕されたが、罪状は器物損壊。

執行猶予を受けた彼は心から反省しているのか?

ぼくは、犯人にある勝負をしようとしていた。

条件ゲーム提示能力で勝負を挑む

実は主人公のぼくには特殊な能力が備わっていた。

その名も「条件ゲーム提示能力」

「Aという条件をクリアしろ。さもなければBという罰を受けることになる。」

このような声を相手に囁けばゲームスタート。

言われた側はBを回避するためにAを必死になってクリアしようというもの。

ぼくはこの能力を使って、犯人に罰を与えようとしていたのだった。

学校の先生に対してこの能力を使い、犯人との面会の場を設けてもらえたぼく。

面会当日までに力を使いこなせるようになるために、同じ能力を持つ秋山先生との授業が始まった。

ぼくが提示する条件とは?

一週間後に面会を控えたぼく。

秋山先生との授業を通じて、どのような条件を提示するのかを考え始めます。

「空を飛べ。できなければ死んでしまう」

このような条件さえも提示できてしまう強力な能力。

しかし、ぼくは犯人が反省をしているのであれば、罰が発動しなくても良いと言います。

ぼくの最大の目的は、犯人が心の底から行いを悔いること。

この目論見は成功できるのか?

そして、ぼくは犯人に対してどのような条件を囁くのか?

ぼくの心理が丁寧に描かれている

辻村作品の魅力である、心の葛藤やそこに焦点を当てた成長物語。

今回は小学生が主人公だったからこそ、壊れやすい繊細な子供の心理をキレイに描いてくれていました。

そして忘れてならないのがどんでん返し。

ミステリではないのに、伏線回収と最後のインパクトが素晴らしすぎました。

度肝を抜かれる仕掛け。そして、ラストで明かされた感動の真実。

最後の最後のぼくとふみちゃんと展開と言ったらもう…。

ぜひ手に取ってこの気持ちになってほしいです。笑

作品間のリンクがすごい

作品間のリンクにも定評がある辻村さんですが、本作は結構重要な位置づけな気がします。

とりあえず、この作品を読む前に『子供たちは夜と遊ぶ』を読むことをおすすめします。

読まなくても楽しめますが、読んだ方がより面白く感じるでしょう。

というのも、根幹ではないものの『子供たちは夜と遊ぶ』のネタバレ描写が少し出てきてしまうので、注意してください。

【感想】残酷な事件の結末とは?大人になり切れない大学生の物語(辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ』)

そして、『名前探しの放課後』は本作の後に読んでください。

これは絶対です!

さもないと、『名前探しの放課後』は楽しさが半減以下になります。(条件ゲーム風)