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【感想】文集完売を目指して奮闘!盗難事件の犯人と動機は?(米澤穂信『クドリャフカの順番』)

アニメ化もされて人気の高いシリーズ作品。古典部シリーズ。

過去には、『氷菓』『愚者のエンドロール』を紹介してきました。

【感想】小説初心者でも楽しめる傑作(米澤穂信『氷菓』) 【感想】描かれなかった映画のラストとは?(米澤穂信『愚者のエンドロール』)

今回はシリーズの3作品目を取り上げていきます。

米澤穂信『クドリャフカの順番』です。

待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲―。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに…。大人気“古典部”シリーズ第3弾。(「BOOK」データベースより)

本作はシリーズで初めての長編作品となっています。文化祭で起きたちょっとしたトラブルと盗難事件。古典部のために奉太郎が事件の謎に挑みます。

作りすぎた文集

文化祭当日。古典部の部室にはあるものが山のように置いてあった。古典部の文集、氷菓である。

30部用意するはずが、摩耶花の手違いで200部も注文してしまったのだった。完売を目指して、策を練る古典部の面々。知名度アップや売り場の交渉。

買ってくれる人を探すなど、様々な行動をすることになる。省エネ主義の奉太郎はもちろん店番ですが。笑

果たして氷菓を完売させることはできるのか?

文化祭で起こる盗難事件

時を同じくして、文化祭ではちょっとした事件が発生していた。囲碁部から碁石。占い研究会タロットカード。お料理研究会からおたま。これらがそれぞれ盗まれ、現場には“十文字”を名乗る人物からの犯行声明が残されていた。

アガサクリスティの『ABC殺人事件』を模したような盗難事件。

犯人は何のために、このようなイタズラをしているのか?

店番をしながら推理をする奉太郎が出した答えとは。

青春は優しいだけじゃない

青春は優しいだけじゃない。アニメのキャッチコピーにもなっている言葉です。これまでの古典部シリーズは、奉太郎視点で話が進んでいました。

しかし、今作は少し違います。千反田、里志、摩耶花、そして奉太郎の4人の視点で物語は進んでいきます。

この演出によって、彼らの心の中が垣間見れるようになっています。自身をデータベースだと称している里志の本心。摩耶花の漫画にかける熱い想い。

青春とはキラキラとした華やかさばかりではない。優しさに溢れていて、楽しいだけでもない。思春期の彼らの葛藤や悩み。心の叫びが見えて、感情移入がしやすい作品でした。

そして、物語の根幹になっている盗難事件の謎。相変わらずキレイに伏線を回収し、驚きのタネが明かされます。

テンポの良い小説の中で、ネタをバラまきながら、一気に回収する様はお見事。個人的には古典部シリーズで最も好きな作品です。古典部員の人間らしさが前面に出ているだけでなく、ミステリとしても一級品。青春ミステリの面白さにハマってみてください。

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