森博嗣『数奇にして模型』を紹介します。犀川創平と西之園萌絵の2人が事件に挑む、S&Mシリーズの9作目です。
前作のレビューはこちら。
【感想】S&Mシリーズ8作目!傑作と呼ばれる所以は最後の…(森博嗣『今はもうない』)模型交換会会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。(「BOOKデータベース」より)
大学構内で起きた2つの密室殺人事件。頭部が持ち去られた死体。そして、現場に倒れていた容疑者。不可解な点の多い連続殺人事件です。個人的には今回のトリックは結構好きでした。
2つの密室と容疑者
2つの大学構内で殺人事件が発生。どちらも密室で、1つの死体には頭部が切断されなくなっていた。そして、その傍らには寺林という男性が意識を失って倒れていた。しかも、彼はもう一つの事件にも関係している人物だったのです。
密室状況を作り出せたのは寺林だけ。犯人はどのようにして、密室殺人を行ったのか。そして、その背後にある動機とは一体なんなのか。
複雑な事件の真相は単純
密室殺人が2件というかなり濃厚な謎が冒頭から繰り広げられる本作。その後も殺人が発生し、謎はますます深まるばかりです。
実際に殺人をできたのは寺林だけ。彼が犯人なのか?それとも、何者かがトリックを使って密室を完成させたのか?
複雑な事件なのですが、読み終わってみれば、意外と単純な発想で事件は決着します。ただ、そこに行き着くまでの過程や、トリックは相変わらずすごい。
非常によく練られた仕掛けが随所にされており、真相解明ではページをめくるたびに「そういうことだったのか」となりました。単純だからこその複雑さですね。
動機とタイトルの関連が意味深?
割と動機は理解できないことの多いシリーズですが、本作はその中でも群を抜いている気がしました笑。何かそんなことで人を殺すのかという感じですが…。
ただ、タイトルとの言葉遊びはなかなかに秀逸でした。『数奇にして模型』とある人の言葉とがうまい具合に噛み合っている。この辺りは意味深ですが、考察の余地があって、個人的には好きな内容です。
とはいえ、さすがに今作は、事件の全貌を推理しようとするのは無茶があるかなと思いました。
犯人当てとトリックを考えるのは、難易度高いです。それでも挑戦したい方は是非!
次作のレビューはこちら。
【感想】S&Mシリーズ完結作!真賀田四季が仕掛けた壮大なトリック?(森博嗣『有限と微小のパン』)