宇宙旅行が当たり前になった世界。あなたは想像がつきますか?
今回は、宇宙を舞台にしたミステリ小説、桃野雑派さんの『星くずの殺人』を紹介します。
完全民間宇宙旅行のモニターツアーで、念願の宇宙ホテル『星くず』についた途端見つかった死体。それも無重力空間で首吊り状態だった。添乗員の土師(はせ)穂稀(ほまれ)は、会社の指示に従いツアーの続行を決めるが――。
一癖も二癖もある乗客、失われる通信設備、逃げ出すホテルスタッフ。さらには第二の殺人まで起きてしまう。帰還を試みようとすると、地上からあるメッセージが届き、それすら困難に。『星くず』は宇宙に漂う巨大密室と化したのだった。
民間での宇宙旅行ができるようになりつつある近未来。正式にサービスとして展開ができるか確認するための、3000万円のモニター旅行。その最中に事件が起きてしまうのでした。宇宙を舞台にした特殊設定ミステリです。
宇宙旅行中に起きた首吊り事件
宇宙旅行が実現できそうな近未来。テストを兼ねたモニター旅行に参加した男女、パイロット2名が宇宙へと出発します。目的地は「星くず」と呼ばれるホテル。
ようやく実現にこぎつけたことに喜びと緊張を持っているパイロットたちでしたが、ホテルに着いた直後に事態は急変します。パイロットの一人が、首を吊って死んでいるのが見つかったのです。
宇宙なので重力はありません。なのになぜ首を吊った状態で死んでいたのでしょうか…?
これは自殺なのか、事故なのか、殺人なのか。そして、この後にも、無重力では考えられないような形で人が死ぬということが起きるのでした。
だいぶスケールが大きい…
当たり前かもしれませんが、舞台が宇宙ということもあり、かなりスケールの大きなお話になっています。そして、物理学や化学を扱った内容でストーリーが展開されるシーンも多いです。
宇宙を舞台にしているから何でもありというわけではありません。宇宙旅行だったら火が起こることがないようにするなど、実際に旅行したらどうなるか?が前提にあります。
そのため、少し専門性の高い話も出てきたり、その中で宇宙を題材に扱っているので、かなりスケールが大きいお話になっていました。
ロジック重視のミステリ好きには向かないかも
特殊設定ミステリとはなっているものの、どちらかというと本格ミステリに近いのかなと感じました。特殊設定ならではのロジックはそこまで強くはなかったです。
宇宙で事件が起きたらどうなるか?が前提にあるため、特殊設定を存分に活かした驚きのロジックはなかったです。ただし、トリックなどは「なるほど」と思えるものになってました。
先ほど書きましたが、宇宙の状況や実際に旅行へ行くとなった時に考慮すべきことがらを、しっかりと調べて書いたんだろうなとわかるような内容になっています。
新鮮さのあるミステリではあるので、宇宙×ミステリを体験してみたい方はぜひ読んでみてください!