後半になると、今までとは異なる世界が現れる小説があります。綾辻行人『十角館の殺人』や我孫子武丸『殺戮にいたる病』などが有名ですね。
今回はラスト25ページで世界が反転する物語を紹介します。
芦沢央『悪いものが、来ませんように』です。
助産院に勤める紗英は、不妊と夫の浮気に悩んでいた。彼女の唯一の拠り所は、子供の頃から最も近しい存在の奈津子だった。そして育児中の奈津子も、母や夫、社会となじめず、紗英を心の支えにしていた。そんな2人の関係が恐ろしい事件を呼ぶ。紗英の夫が他殺死体として発見されたのだ。「犯人」は逮捕されるが、それをきっかけに2人の運命は大きく変わっていく。最後まで読んだらもう一度読み返したくなる傑作心理サスペンス!(「BOOKデータベース」より)
煽り文にもある通り、騙されたことがわかると読み返したくなる本作。騙されないように構えてはいましたが、読み返したくはなりました。笑
3つの視点で描かれる事件
本作は、3つの視点で進んでいきます。庵原紗英と柏木奈津子、そして彼女たちの周辺にいる人物の証言です。
大きな見どころになっているのが、紗英の夫を殺した犯人。この殺人事件が起きるまでの背景やその動機を考えるのがなかなか面白いでしょう。
まあ、ここよりも大きなどんでん返しがあるんですけどね…笑
メイントリックに気付いても油断しちゃダメ!
先ほども書いた通り、殺人事件の犯人や動機に迫るのが本作の大きな目玉です。でも、それ以上に何か違和感を覚えざるをえない物語なんですよね。
梨里という子どもに手を焼いている奈津子と仲良しの紗英。親しい間柄の二人ですが…。みたいな感じです。詳しくは読んでみて欲しいですが、この感覚はおそらく理解してもらえるはずでしょう。
この点も踏まえた上で、ラスト25ページまで一気読みしてみてください!
何とも言えない読後感もクセになる…
確かに、騙された感があり、読み返したくなる物語でした。「ここはそういう意味で書かれていたのか…」と思うようなポイントがいくつかあって、キレイなどんでん返しだったなと感じます。
ただ、この展開事態に嫌悪感や気持ち悪さを覚える口コミもありました。(私もその気持ちがわからなくはありません。また、ちょっと似たような作品が実はあるんですよね…。)なので、賛否両論がわかれそうな物語だなと思います。
それでも、個人的にはやられた感を演出してくれますし、イヤな感じの読後感は好みでした。イヤミス好きやどんでん返し好きが読む分には楽しめるんじゃないかなと思います!