スラスラ読めて、伏線回収が巧妙な作家、藤崎翔。小気味のいいテンポと緩い会話で描かれるコメディタッチ。そして、その後に待ち構えている衝撃的な展開が魅力です。
死んでしまった仏のような先生は実は殺人鬼だったのでは?という疑惑を題材にした、デビュー作の『神様の裏の顔』。
【感想】神様は極悪人なのか?ゆるいテンポの先にある驚愕のラスト(藤崎翔『神様の裏の顔』)隣に住んでいたのは殺し屋さんだった…という状況を描いた『お隣さんが殺し屋さん』。
【感想】まさかのどんでん返し!読んでいた世界が一気に反転する(藤崎翔『お隣さんが殺し屋さん』)過去にはこの2作を紹介していました。今回は2作目にあたる、伏線回収のすごい小説を紹介します。
藤崎翔『殺意の対談』です。
人気作家・山中怜子と、若手女優・井出夏希。新作映画の原作者と主演女優の誌上対談は、表向きは和やかに行われたのだが、笑顔の裏には忌まわしい殺人の過去が…。同様に、ライバル同士のサッカー選手、男女混成の人気バンド、ホームドラマの出演俳優らが対談で「裏の顔」を暴露する時、恐るべき犯罪の全貌が明らかに!?ほぼ全編「対談記事+対談中の人物の心の声」という前代未聞の形式で送る、逆転連発の超絶変化球ミステリ!(「BOOKデータベース」より)
今回のテーマは取材時の心の声です。
心の声が書かれた対談
本作は最後を除くすべての章が“対談”形式で進んでいきます。ミステリ作家と若手女優、先輩と後輩のサッカー選手、3人組の人気バンド、ドラマの出演者など。表で話していることが本心ではなく、彼らには彼らなりの思惑、裏の顔が隠れているのです。
最初こそは、対談相手に思っていることを面白おかしく書いているので、コメディテイストで進んでいきます。
しかし、取材が進むにつれて、それぞれの危険な過去が垣間見えてきます。実は人を殺したことがあったり、出生に闇を抱えていたり…。こうした過去がきっかけで、様々な事件も起きるのです。
作品間で繋がっていく
章(対談)ごとに進んでいく本作。次の章になると、登場人物は変わり、対談内容自体は新しい話になります。しかし、きちんと前章とリンクしています。
前章で対談をしていた相手がスキャンダルになってしまったり、事件に巻き込まれたり。続きがどうなったのか?がわかりながら進んでいくのは読んでいて面白いです。
また、後半には対談中は「?」だったことがきちんと回答される章があります。繋がりがわかりやすいので驚きもあってとても楽しめます!
最後は絡まりすぎてわけがわからない…
伏線の仕掛けも回収も素晴らしいなと感じる本作ですが、最後の章は複雑すぎました…。線が絡まりすぎてて、理解するのがやっと…。
確かに驚きはあるものの、あまりにも突拍子のない展開が続くので、どうなっているのかを把握するのでいっぱいいっぱいになってしまいました。
もちろん、仕掛けがきちんとあるからこそなのですが、もう少し弱くても良いのでは?と感じてしまったのが本音です…。ただ、どんでん返しや伏線回収はきちんとされますし、何より会話調のテンポがとても良い!
ミステリ好きにはハマるかなと思います。ただし、一部グロい表現もあるので注意してください!