2018年は47冊の小説を読みました。
面白い作品ばかりでしたが、今回紹介する1冊は1,2位を争うレベルで楽しめました。
朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』です。
まずはあらすじを紹介。
異様な世界観。複数の伏線。先の読めない展開。想像を超えた結末と、それに続く恐怖。もしこれらが好物でしたら、これはあなたのための物語です。待ち受ける「意外な真相」に、心の準備をお願いします。各話読み味は異なりますが、決して最後まで気を抜かずに―では始めましょう。朝井版「世にも奇妙な物語」(BOOK」データベースより)
あらすじの通り、「世にも奇妙な物語」を朝井リョウさんが書いたらどうなるのか?という作品集です。
「朝井リョウって誰?」
という人のために説明をすると、『桐島、部活やめるってよ』『何者』の作者です。
収録されている作品は以下の5つ。それぞれのあらすじを簡単に説明していきます。
シェアハウさない
フリーライターの浩子はある日、1人居酒屋で飲み過ぎてしまう。気が付くと見知らぬ家のベッドの上。そこは男女4人が住むシェアハウスで、住人の1人、真須美が見かねて介抱してくれたのだった。御礼を兼ねて取材を試みる浩子。共通点が一切ない4人。彼らは何のためにシェアハウスをしているのか
1編目からありそうな設定の物語でした。
四十代前後の真須美、三十代の良治、二十代の由可里と章大。シェアハウスに住むのは「家賃」や「出会いのシェア」が目的のはず。
年齢も仕事もバラバラな4名がシェアハウスに住んでいる理由とは?
違和感がある状態で物語は進行していきます。そして最後に違和感の正体(奇妙なこと)が明らかになるのです。最後の終わり方も、いかにもドラマにありそうでした。
リア充裁判
コミュニケーション向上を目的に日本が新たに制定した法律。「コミュニケーション能力促進法」。しかし、実態はSNSの投稿が多い等の、リア充が優遇される法律だった。勉強熱心だった姉の人生を狂わせた法律に対して、知子には考えがあったのだが…
・リア充であることが良いことなのか?
・コミュニケーションを取れればOKなのか?
SNSでの自己発信やLINEの既読無視。インフラが整っている現代を皮肉するような物語。着眼点と発想が面白かったです。
ただ、オチが衝撃過ぎました。笑(笑っていいのかわかりませんが)
立て! 金次郎
幼稚園で先生をしている金山孝二郎(金次郎)。保護者や先輩からの嫌味やクレームに負けず、子供がイキイキとする幼稚園を目指して奮闘します。「学校行事では生徒に平等にスポットライトを当てるように」が園のモットー。前に出たくないと言っている生徒を「絶対に目立たせるように!」と強く言われてしまいます。しかし、金次郎にはある考えがあり…。
これは本当に面白かったです!
園児のために頑張る先生と、あまり良しと思わない保護者たち。保護者に自分の考えを認めさせるための奮闘振りはとても良かったです。そして最後のシーン。
伏線が回収されてからの「なるほど!」やビックリ度は作品1でした。こんなこと起こったら怖いよなーと感じる作品でした。
13・5文字しか集中して読めな
ニュースサイトの編集部に勤める香織。よりたくさんの情報を届けることを使命とするメディアで、“13・5文字”で注目を惹くような見出しを大切にしています。多少煽った方がより読まれる。それが読者のためでもあり、取り上げられる対象のためでもあると考えるのですが…
有名なニュースサイトが頭に浮かんだので、イメージして読むことができました。現代のメディアを皮肉った物語ですね。笑
・煽った文章を書くのは正義なのか?
・注目を集めることが良いことなのか?
問題提起の仕方がとても上手。オチへの展開やラストの畳みかけは見事でした。タイトルが13.5文字なのも良いですね。笑
脇役バトルロワイヤル
映画の主役を決めるオーディションに参加した6人の男女。しかし、彼らの年齢や背格好はバラバラ。通常、主役の性別や年齢は事前に決まっているはず。しかし、6人にはある共通点があった。果たしてこれは何を決めるためのオーディションなのか
コメディ枠でありそうな物語でした。オーディションに参加する6人が奮闘する姿や、ドラマをメタファーするような発言がクスッとさせてくれます。
まとめ
「世にも奇妙な物語」が好きな人は、絶対に面白いと思う作品です。映像化を望む口コミも多いので、もしかしたら近いうちにドラマ化されるかもしれないですね。ちなみに個人的な好みは、こんな感じでした。
- 「立て! 金次郎」
- 「13・5文字しか集中して読めな」
- 「リア充裁判」
- 「シェアハウさない」
- 「脇役バトルロワイヤル」
尚、帯にも書いてありますが、ちゃんと前から順番に読んでくださいね!