第21回『このミステリーがすごい!』大賞で文庫グランプリを受賞した作品。くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』。
本屋さんでは平積みになっていることが多く、シンプルなのに印象的な表紙を覚えている人も多いのではないでしょうか。
帯には二転三転四転五転のどんでん返しとあります。そしてその通りに予想外のどんでん返しが何度も起こるミステリでした。
凄さを語り合いたいけど、さすがにネタバレはしたくない…。それなら読み終えた人限定で読書会を開こうとなりました!
参加いただいたのは私を含めて3名(男性1名、女性2名)。今回はそのレポートをお届けします。
以下、ネタバレが含まれますので未読の方はご注意ください。
読後の感想
最初に話したのが本作の感想です。
妃奈の保険金殺人の容疑が晴れた後のシーン。美桜が安堵して笑い出す場面が衝撃的だったという感想がありました。
これまでに美桜に感情移入していたからこそ、突然の変化に裏切られた感じを抱いたのだとか。
私の妹は最期までこちら側に留まり続けたのだ。そして、最大の搾取の結果として、殺された。
「ふふふふふ……」(P.153)
たしかに読み返してみると、殺された妹のことをこんな風に言ってしまうのは異常ですね。最初に美桜がヤバい人だとわかるシーンと言われ「確かに」と思いました。
また、このシーンでは、妃奈が虐げる側ではなかったとわかる部分でもあります。そこに対して大いに安心するという場面は、美桜が狂っていることを表わしていて、印象的ですね。
私としては、どんでん返しの連続からの、今まで虐げられる側にいた美桜の立場が逆転するシーンが印象的でした。胸やけを起こすくらいに濃厚な展開で、読後は何とも言えない気持ちになりました。
表紙には”帯”を使ったからこその遊び心
また、表紙に関するこんな話も。
本作にて、主人公の美桜は、しきりにマスクを外したがろうとしませんでした。その理由は読み進めていくうちに判明するのですが…。
実は帯がある状態だと、口元が隠れるようになっているのです。
SNSなどでも話題になっていたので、結構知っている人は多いかもしれません。美桜の状況を表わしている表紙の遊び心も面白いなとなりました。
このどんでん返しが凄かった
本作は終盤にたくさんのどんでん返しが待ち構えています。一例を出すだけでも下記のどんでん返しがあります。
・美桜がマスクで口元を隠していたのは、父親からの虐待のせい。
・美桜の回想のように描かれているのは、実は妃奈だった。
・蓮と佐神翔は同一人物ではなかった。
・妃奈が佐神翔を殺していた。
・佐神として描かれている回想は、佐神翔ではなく、父親だった。
その中でも、特に印象的などんでん返しはどれか?を話しました。
やはり声として挙がったのは真犯人の正体がわかるシーンでした。渚でもない、桐宮でもない。実は大学の守衛だった、そして佐神の父だったというシーンです。最後のどんでん返しなので、ここは外せないですね。
また、この時にわかる、渚の狂いっぷりも印象的という方もいました。恋人に恐怖してもらいたいからという理由は常軌を逸しています。
それまでは頼もしさがあったこともあり、ヤバい奴という印象は確かにありました。笑える状況ではないですが、退場の仕方の滑稽さも拍車をかけているよねとなりました。笑
また、最後に美桜が虐げる側になる瞬間。これまで気にしていた歯並びを直そうとするなど、急に一皮剥けたようになります。この美桜の変貌ぶりにも、衝撃を感じました。
賛否両論あるけどぶっちゃけどっち?
本作のAmazonレビューを見ると、キレイに賛否両論があると思っています。どんでん返しが凄いとはいえ、かなり無理矢理(佐神はどうやって小林家の母親を見つけたんだなど)と思われる箇所もあるからです。ただ、個人的にはありだと思っていました。
どんでん返しに関しては無理矢理ではない(無理矢理なんですが)というか伏線はあって、最後にポッと出てきた情報はあまりないからです。
今回参加いただいた方も、割と好意的な方が多かったです。ただ、共通の認識としては本格ミステリとして読んじゃうとダメというものでした。
バトルロワイアルのような、その狂気的な設定の中で起きているお話しと考えたり、どんでん返しが相当無理矢理ではなかったりする範囲なので、楽しめるのかなと思いました。
この作品で一番ヤバいやつは誰?
本作は登場人物のヤバさ、狂いっぷりをみんなと共有するという楽しみ方もある一冊と感想で話してくださった方がいました。
そこで、最後にテーマに挙がったのは、この作品で一番ヤバいやつは誰なのか?
どのキャラクターもヤバさを抱えながらも、各々の中では一本の線が通っています。理解はできないけどこういう人がいるものなのかもと思わされてしまう、不思議な力があります。
今回の結論としては、美桜が1番ヤバいという話になりました。前半の気弱な感じから、中盤で突如狂気的に笑い出すシーン。最後の変貌ぶりなど、ずっと読者が追っかけていた視点だからこそ、狂気を感じやすいのかもしれません。
皆さんは誰が1番ヤバいやつだと思いましたか?
最後は小説と一緒に記念撮影。語り合うのが楽しい作品だったので、あっという間に時間が来てしまいました!
ご参加いただいた皆さんありがとうございました!