森博嗣『今はもうない』を紹介します。犀川創平と西之園萌絵の2人が事件に挑む、S&Mシリーズの8作目です。
前作のレビューはこちら。
【感想】S&Mシリーズ7作目!誘拐事件と兄の失踪の謎(森博嗣『夏のレプリカ』)避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で一人ずつ死体となって発見された。二つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が…。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清冽な森ミステリィ。(「BOOKデータベース」より)
シリーズナンバーワンの呼び声高い本作。二つの密室で見つかった美人姉妹の死体。彼女たちはなぜ別々の部屋でそれぞれ殺されていたのか?
回想として語られる事件
本作はこれまでのシリーズでは珍しく、萌絵の回想として語られる事件です。犀川と萌絵のドライブ中、彼女が過去の事件として、犀川に話すという形式をとっています。
そして、作中では笹木という人物が語り手になっている。これまでのシリーズとは毛色の異なるテイストでした。そのため、少し読みづらく感じる部分もあります。
ただ、読み終えれば、本作がナンバーワンとの呼び声が高い理由がわかるはずです。
“今はもうない”屋敷での密室殺人
事件は、西之園家の屋敷の隣にある屋敷。萌絵の話では“今はもうない”屋敷と言われています。ここで起こった美人姉妹の殺人事件。隣同士の部屋で彼女たちはそれぞれ死んでいました。
部屋は密室。脱出する通路は塞がっていて出入りはできない。二人は誰がどのように殺害されたのか。そして、何のためにそれぞれの部屋で殺したのか。
過去の話なので、犀川はこの情報だけをもとに推理を組み立てます。今作では安楽椅子探偵でしたね。相変わらず、謎の解きっぷりはお見事でした。
最後にとんでもない事実が待っている
尚、本作は先ほどお話の通り、これまでとは違った語り口で話が進んでいます。そのため、正直言うと読みづらいです。
事件を笹木が語っている部分がメインになるのですが、口調が自虐じみていたり、女性への対応が少し気味が悪かったり、どうにも入り込むのが難しかった。
「何でこれがシリーズ最高傑作なの?」と読んでいる途中に何度感じたことか…。しかし、これは大きな誤りでした。後半に明かされる真実にビックリ。これは前知識をあまり入れずに読むことをオススメします!(記事の最後に言うな)
思っていた以上にスゴイ展開が最後には待っているので、これを待ち望んで読み進めてください!
次作のレビューはこちら。
【感想】S&Mシリーズ9作目!二つの密室と奇妙な死体たち(森博嗣『数奇にして模型』)