森博嗣『夏のレプリカ』を紹介します。犀川創平と西之園萌絵の2人が事件に挑む、S&Mシリーズの7作目です。
前作のレビューはこちら。
【感想】S&Mシリーズ6作目!マジックショーで起きた密室殺人(森博嗣『幻惑の死と使途』)那古野市の実家に帰省したT大大学院生の前に現れた仮面の誘拐者。そこには血のつながらない詩人の兄が住んでいた。誘拐が奇妙な結末を迎えたとき、詩人は外から施錠されていたはずの部屋から消え去っていた。朦朧とするような夏の日に起きた事件の裏に隠された過去とは!?事件は前作と表裏をなし進展する。(「BOOKデータベース」より)
萌絵の幼馴染・杜萌が巻き込まれた誘拐事件。そこで起こった不可解な殺人事件。そこには悲しい真実が隠されていました。
Contents
誘拐犯はなぜ殺された?
萌絵の幼馴染の杜萌が、家族と一緒に誘拐されてしまった。しかし、誘拐犯は何者かに殺された姿で発見される。誘拐犯3人のうち、2人が殺されており、1人はどこかへ逃げている。逃げた1人が殺人犯なのだろうか?
誘拐事件と殺人事件。それぞれが不可解に折り合わさっている作品でした。トリック自体は意外と言えば意外でした。本格ミステリなのですが、うまい具合に読者を欺く仕掛けもあり良かったです。
いなくなった兄はどこへ?
先ほどの事件とは別にもう一つ謎があります。誘拐事件が終わった後、家に引きこもっていたはずの兄がいなくなっていたのでした。
外に出るには鍵を開けないといけないはずなのに、どのようにいなくなったのか。そして、彼はどこに行ってしまったのか。事件とは別の視点で語られるこの謎は良いアクセントになっています。
偶数章しかない小説
前作の『幻惑の死と使途』と同時期の物語として語られている本作。
【感想】S&Mシリーズ6作目!マジックショーで起きた密室殺人(森博嗣『幻惑の死と使途』)合間に挿入されるため、この小説には偶数章しかありません。しかも、章のタイトルがすべて「偶」という字から始まるという凝りっぷり。素晴らしいですね…。
尚、前作のネタバレになる要素が少しあるので、まだ読んでいない人は注意してください。意味がわかると「前作にはそんな仕掛けがあったのか…」となりました。
次作のレビューはこちら。
【感想】S&Mシリーズ8作目!傑作と呼ばれる所以は最後の…(森博嗣『今はもうない』)