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【2023年の小説TOP10】小説好きが選ぶ!100冊以上を読んだ中で選んだ10作品

2023年-小説-おすすめ

2023年も間もなく終了。2023年に私が読んだ小説は111でした。

今回は、2023年に読んだ小説の中で特に面白かった小説TOP10を紹介します。ひとことと一緒に紹介するので、気になる本があったら是非買ってみてください!

第10位:呉勝浩『爆弾』

些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。警察は爆発を止めることができるのか。爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。

傷害事件で捕まった男・スズキタゴサク。彼は「霊感」と称して、秋葉原で起きた爆破事件を予言したのだった。爆弾を仕掛けたであろう犯人・スズキタゴサクと警察官との心理戦が、取調室を舞台に描かれている。

警察小説に分類されるジャンルだと思いますが、息をつくことを忘れてしまうほどの緊迫感があります。

二転三転する展開の末にきれいなオチが用意されている。緊迫感のある展開だけではなく、伏線回収もキレイな一冊。特に後半は圧巻でした。

気付いたら作品に没頭してしまう素晴らしい一冊でした。

第9位:井上真偽『アリアドネの声』

救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職する。業務の一環で訪れた、障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。それは「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障がいを抱え、街のアイドル(象徴)して活動する中川博美だった――。崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。

見えない、聞こえない、話せないの3つの障害を抱えた女性。地下施設に取り残された彼女をシェルターへ誘導するミッションが始まる。

難しいミッションに挑むことになるが、ドローンを用いて救助が上手くいきつつある。しかし、その途中にある疑惑が上がる。それは、彼女が障害を抱えていないのではないか?というものだった。

ミステリとしての謎解きと緊迫感の両方を楽しめる作品。最後にすべてが解消されて予想外のラストが待っている。爽快な物語でした。

第8位:阿津川辰海『午後のチャイムが鳴るまでは』

九十九ヶ丘高校のある日の昼休み、2年の男子ふたりが体育館裏のフェンスに空いた穴から密かに学校を脱け出した。タイムリミットは65分、奴らのミッションは達成なるか(第1話「RUN! ラーメン RUN!」)。他人から見れば馬鹿らしいことに青春を捧げる高校生たちの群像劇と、超絶技巧のトリックが見事に融合。稀代の若き俊英が“学校の昼休み”という小宇宙を圧倒的な熱量で描いた、愛すべき傑作学園ミステリ!

九十九ヶ丘高校の昼休みを舞台にした5つの物語が収録された連作短編集。

昼休みという限られた時間を切り取って描いている。ラーメンを食べるために抜け出した二人の男子高校生。昼休み中の抜け出しは厳禁の中、彼らは誰にもバレずに”完全犯罪”をやりきることができるのか。

ちょっとおバカなだけど青春としてはあるあると思ってしまうような、そんな素敵な世界を描いた一冊になっています。

日常の謎のようになっているが、心理戦のような物語もある。そして、最後には連作短編集ならではのオチもあって楽しめました。

第7位:井上真偽『ぎんなみ商店街の事件簿』

Brother編
ぎんなみ商店街近くに住む元太・福太・学太・良太の兄弟。母は早くに亡くなり父は海外赴任中だ。ある日、馴染みの商店に車が突っ込む事故が起きる。運転手は衝撃で焼き鳥の串が喉に刺さり即死した。事故の目撃者は末っ子で小学生の良太。だが福太と学太は良太の証言に違和感を覚えた。弟は何かを隠している? 二人は調査に乗り出すことに(第一話「桜幽霊とシェパーズ・パイ」)。

Sister編
ぎんなみ商店街に店を構える焼き鳥店「串真佐」の三姉妹、佐々美、都久音、桃。ある日、近所の商店に車が突っ込む事故が発生した。運転手は衝撃で焼き鳥の串が喉に刺さり即死。詮索好きの友人を止めるため、都久音は捜査に乗り出す。まずは事故現場で目撃された謎の人物を捜すことに。(第一話「だから都久音は嘘をつかない」)

3つの物語が収録されている連作短編集。兄弟編と姉妹編の2つがありますが、どちらもぎんなみ商店街で起こった事件を描いています。

しかも事件はどちらも同じものです。それなのに、事件の真相は異なるのです。

たとえば、最初の物語。ここでは、商店街のお店に車が突っ込んだ事件が描かれています。この事故で運転手は死亡してしまいますが、それ以外に不可解な点が多々あるのでした。

兄弟と姉妹のそれぞれの視点から事件を推理していく。どちらも謎の解明がしっかりされるのに、まったく違う角度から真相がわかるようになっている。

2冊読んですべての真相がわかるようになっている。珍しさがありつつも、楽しめる素敵なミステリでした。

第6位:米澤穂信『可燃物』

余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。
群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」)
連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。

5つの短編が収録されている作品。群馬県警の刑事が主人公の日常の謎になっています。ただ、扱っているのは刑事事件なので、イメージとして浮かぶような日常の謎とは違います。

表題作の「可燃物」は放火犯は誰なのか。目的は何だったのか。犯人当てとその動機の両方を考えるお話です。

事件の動機については「ありそうで、なさそうで、やっぱりあるかも」という感じを受けました。矛盾しているように見えても、本人からすると合理的なことをやっている。そういったケースの一部始終を見せられたような気がしました。

第5位:澤村伊智『ずうのめ人形』

不審死を遂げたライターが遺した謎の原稿。オカルト雑誌で働く藤間は後輩の岩田からそれを託され、作中の都市伝説「ずうのめ人形」に心惹かれていく。そんな中「早く原稿を読み終えてくれ」と催促してきた岩田が、変死体となって発見される。その直後から、藤間の周辺に現れるようになった喪服の人形。一連の事件と原稿との関連を疑った藤間は、先輩ライターの野崎と彼の婚約者である霊能者・比嘉真琴に助けを求めるが―!?(「BOOK」データベースより)

関わった者が次々と不審死していく都市伝説・ずうのめ人形。オカルト雑誌で働く男は、ずうのめ人形の謎を追うことになります。噂と思っていたが、その矢先に関わった人間が一人死んでしまうのでした。

ずうのめ人形が迫ってくる感じに恐怖を感じてしまいます。ホラー小説としての面白さを十分に味わえる物語です。

しかし、それだけではありません。本作にはいたるところに伏線が張り巡らされています

終盤にかけての伏線回収の連続衝撃的な真実には驚きが止まりません。怖いだけではなく、ミステリとしての完成度がかなり高い作品でした。

第4位:凪良ゆう『汝、星のごとく』

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

島で育った2人の男女。彼らは周囲の大人たちのせいで重荷を背負って生きなければならないのでした。

本作はそんな2人が高校生から大人になるまでの成長物語を描いています。高校時代の出会いから始まり、大人になるにつれてすれ違いが起こる。

希望を失ってしまうような出来事もあり、途中は読み進めるのがツラくなってしまいました。

ハッピーエンドではないですが、嫌な読後感が残るわけではありません。息苦しさを感じる展開なのは間違いないのですが、どこか心地良さを感じられる締めくくりになっています。

第3位:夕木春央『十戒』

殺人犯を見つけてはならない。それが、わたしたちに課された戒律だった。浪人中の里英は、父と共に、伯父が所有していた枝内島を訪れた。島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。島の視察を終えた翌朝、不動産会社の社員が殺され、そして、十の戒律が書かれた紙片が落ちていた。“この島にいる間、殺人犯が誰か知ろうとしてはならない。守られなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し、全員の命が失われる”。犯人が下す神罰を恐れながら、「十戒」に従う3日間が始まったーー。

無人島にやってきた9人の男女。長年誰も島を訪れてないのに、なぜか島には人がいた形跡があったのでした。

さらに、島からは爆弾が見つかる。誰かが良からぬことを考えているかもしれない。そんな不穏な雰囲気の中、殺人事件が起こるのでした。

殺人事件の犯人はメッセージを残していました。それは「犯人を探ってはいけない」というものでした。犯人は何のために事件を起こしているのか。

構成がキレイにハマっているので、最後まで飽きることなく読み進められる。そして、最後には衝撃的な展開が…。濃厚なミステリ体験でした。

第2位:荒木あかね『ちぎれた鎖と光の切れ端』

島原湾に浮かぶ孤島、徒島(あだしま)にある海上コテージに集まった8人の男女。その一人、樋藤清嗣(ひとうきよつぐ)は自分以外の客を全員殺すつもりでいた。先輩の無念を晴らすため–。しかし、滞在初日の夜、参加者の一人が舌を切り取られた死体となって発見された。樋藤が衝撃を受けていると、たてつづけに第二第三の殺人が起きてしまう。しかも、殺されるのは決まって、「前の殺人の第一発見者」で「舌を切り取られ」ていた。そして、この惨劇は「もう一つの事件」の序章に過ぎなかった――。

島原湾に浮かぶ孤島・徒島(あだしま)の海上コテージにやってきた8人の男女。そのうちの一人、樋藤は復讐のために、7人全員を殺そうとしていました。

しかし、樋藤ではない誰かが殺人を起こすのでした。自分以外の誰かが殺人をしている。犯人は誰なのか。そして目的は何なのか。クローズドサークルで起こる連続殺人を描いた作品です。

ここまでが第一部の話。第一部の謎を残した状態で、第二部へと物語は進んでいきます。

第一部だけでも十分に素晴らしいミステリなのに、そこを活かした第二部も圧巻です。二作品分のミステリを楽しめたような感覚になります。

それぞれ、謎解きのロジックがしっかりしているので納得感があり「やられた…」という感じも楽しめる。ミステリ好きなら絶対に楽しめる一冊です。

第1位:白井智之『エレファントヘッド』

精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!前代未聞のストーリー、尋常ならざる伏線の数々。多重解決ミステリの極限!

何を言ってもネタバレになってしまいそうなので、簡単なあらすじ紹介くらいしかできない…。それほどまでにスゴイ作品でした。

主人公は精神科医の象山。彼は家族と幸せな生活を送っていますが、彼らの周りで事件が起こってしまいます…。

本書のスゴイところは、とにかく多重解決が止まらないという点です。昨年話題になった『名探偵のいけにえ』に似ているかもしれませんが、それ以上の衝撃を感じました。

白井作品の醍醐味と言えるような、特殊設定×ロジックがこれでもかというほどに詰め込まれています。ただ、グロい要素も多いので、苦手な人にはおすすめできません。

抵抗がなくてミステリが好きという人は読まない理由がありません。絶対に読んでほしいです!