たかひでの本棚
小林泰三『アリス殺し』を紹介します。『不思議の国のアリス』を彷彿とさせる世界で起こる殺人事件。これがなぜか現実世界ともリンクしてしまっている。そんな不思議な設定で話が進んでいく物語です。
最近、不思議の国に迷い込んだアリスという少女の夢ばかり見る栗栖川亜理。ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見たある日、亜理の通う大学では玉子という綽名の研究員が屋上から転落して死亡していた―その後も夢と現実は互いを映し合うように、怪死事件が相次ぐ。そして事件を捜査する三月兎と帽子屋は、最重要容疑者にアリスを名指し…邪悪な夢想と驚愕のトリック!（「BOOKデータベース」より）
夢で死んだ人が同じように現実世界で死んでしまう。何が起こっているのか。そして、この怪死事件の真相はどのようになっているのか。
不思議の世界で起こる殺人
本作は2つの世界で話が進んでいきます。白兎やトカゲなどの『不思議の国のアリス』に出てくる登場人物たちの世界。そして、人間たちが登場する現実世界。この2つの世界はリンクしているようで、前者で死んだら、後者の世界でも似たような死に方をしてしまう。
不思議の国の夢を見る大学生の栗栖川亜理。ハンプティダンプティが墜落死する夢を見た日に、大学の玉子という人物が屋上から転落死をしていた。
頭のおかしい帽子屋は、ハンプティダンプティは何者かに殺されたと言い出し、最有力の容疑者としてアリスを指す。冤罪を晴らすために、アリスは事件の真相を探り出します。
風呂敷がどんどん広がっていく
そんなある日、亜理は同じ大学に通う井森が、トカゲのビルだということを知ります。現実世界の人物が、『不思議の国のアリス』の世界とリンクしているのです。
以前亡くなった玉子がハンプティダンプティだということも知ります。リンクの情報を頼りに、亜理はハンプティダンプティを殺した犯人を捜そうとします。しかし、その矢先『不思議の国のアリス』の世界で、連続して動物（現実世界では人）が殺されていきます。
リンク情報はわかったものの、中盤以降は話がどんどん広がっていきます。読んでいる最中は「きちんと謎がすべて解けるの？」と思ってしまいました。かなり風呂敷が広がっていくので、どうたたむのかをワクワクしてしまいます。
最後の畳みかけが圧巻
そして後半。事件の犯人と何が起こっていたのかが一気に明らかになっていきます。正直、犯人がわかる部分まではそこまで驚けないかと思います。
問題はその後。犯人との対決から、これまでの伏線が回収されるまでの展開がかなり秀逸でした。読者が気になっていたポイントが一個ずつ丁寧に明らかになっていきます。特に作品のメイントリックには騙されました。単純なトリックだったのですが、すっかり忘れていました。
ただ、事件解決後のくだりが少し長いのと、かなりグロテスクな描写が続きます。私自身は耐性がある方だと思っていますが、それでも目を逸らしたくなるくらい、気持ち悪かったです…。耐性がない方は絶対に読まない方が良いです。ただ、ミステリとしては新感覚なもので存分に楽しめました！
