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【感想】言葉の重みを感じられるお仕事小説(原田マハ『本日は、お日柄もよく』)

本日はお日柄もよく

原田マハ『本日は、お日柄もよく』を紹介します。スピーチライターという仕事にスポットを当てた物語。言葉の重みや伝え方の大事さも学べるエンタメ小説でした。

OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された!目頭が熱くなるお仕事小説。(「BOOKデータベース」より)

スピーチライターに弟子入りした主人公が、自らの言葉で人を動かせるようになるまでの物語。成長ストーリーだけでなく、役立つ知識なども入っており、その点も楽しむことができました。

スピーチライターとの出会い

幼馴染の結婚式。そこで、眠気のあまり目の前のテーブルに突っ込んでしまった二宮こと葉。理由は来賓のスピーチがあまりにも退屈だったからでした。

こと葉は、汚れた衣服をキレイにするために外を抜けます。そこで、同じくスピーチに退屈さを感じていた、スピーチライターの久遠久美と出会いました。

彼女はスピーチのどこが退屈だったのかをズバズバ指摘。実は彼女も結婚式でのスピーチを任されていたのでした。久美のスピーチはその場にいた誰もが聞き入るような素晴らしいもの。

この一件がきっかけで、こと葉は自身のもとに来ていたスピーチ原稿の作成を久美に依頼することを決めるのでした。

スピーチライターにバトルよる

本作はこと葉とライバルによるスピーチの戦いという様相も呈しています。相手となるのは和田日間足。彼は広告代理店のコピーライターとして知られる人物でした。

久美からスピーチの極意を教わるにつれて力をつけてきたこと葉。彼女は政治家のスピーチ原稿を担当することになります。

相手方の原稿を担当するのは日間足。こと葉と日間足とのスピーチバトルという展開も楽しめました。

言葉の重みを感じられる一冊

最初から最後まで、スピーチとは何か?言葉とは何か?を一貫して伝えてくれる本作。言葉の力は凄まじく、たった一つの言葉選びで良い方向にも悪い方向にも転んでしまいます。

政治という難しいテーマが取り扱われていますが、コミカルなシーンや恋愛要素も織り交ぜてあり、読者が読みやすいように描かれていました。

自分の言葉選びは適切なのか。言葉を操ることができているか。普段の生活を省みたくなる一冊でした。特に以下のセリフは個人的に印象に残ったものでした。

「言葉は書くものでも読むものでもない。操るものだ」

「『困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙が乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している』

読後には、言葉に対しての意識が変わること間違いなし。そして、仕事に対しても前向きになれるような作品でした。気持ちが和らぐエネルギーをもらえる素晴らしい一冊。皆さんもスピーチの威力を味わってみませんか?