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【感想】ゾッとする読後感!13編の奇妙な物語(辻村深月『きのうの影踏み』)

スッキリするラストと怒涛の伏線回収に定評がある辻村深月さん。

登場人物を細部まで映す繊細な心理描写。それを丁寧にミステリの伏線に活用し、しっかりと回収。もちろん登場人物たちへの心配りもあり、ラストの爽快感は格別。

心地よい読後感を与えてくれる作風がメインの小説家さんです。

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しかし、ほのぼのするホワイト辻村ばかりではありません。ブラック辻村と言われるような、どこか奇妙でゾッとする作品も書いています。

辻村深月『きのうの影踏み』です。

小学生のころにはやった嫌いな人を消せるおまじない、電車の中であの女の子に出会ってから次々と奇妙な現象が始まり…、虫だと思って殺したら虫ではなかった!?幼い息子が繰り返し口にする謎のことば「だまだまマーク」って?横断歩道で事故が続くのはそこにいる女の子の霊が原因?日常に忍び寄る少しの違和感や背筋の凍る恐怖譚から、温かさが残る救済の物語まで、著者の“怖くて好きなもの”を詰め込んだ多彩な魂の怪異集。(「BOOK」データベースより)

奇妙で怖い短編集

13の作品が収録されている本作。長くても約40ページ程度。短いものは5,6ページです。1つ1つが短いのでスラスラ読めます。それなのに、どの作品も濃厚です。笑

怖いけどクセになる。いくらでも読めると思いました。その中でも個人的に大好きな3つの物語を紹介します。

十円参り

小学校時代に流行った、嫌いな人を消せるおまじない。一緒に消したい人の名前を書いた紙を十円玉と一緒に神社の賽銭箱へ入れる。これを十日間連続でやれば、名前を書かれた人はいなくなるという。ある日、突然消えた「なっちゃん」はこのおまじないをかけられたのではないか…?

1つ目の話なんですが、いきなりインパクトが強すぎ!

ある日、突然消えた親友の「なっちゃん」を探す、2人の少女の物語。たった20ページ程度なのに、ここまでキレイに伏線張って回収できるのかと感服…。

終わり方も素晴らしい余韻を残してくれます。もちろん、普段のほのぼのしたものではなく、ゾッとした読後感ですが。笑

やみあかご

毎日夜泣きのひどい我が子。ある日も、いつものように始まった夜泣き。あやすべく、我が子を抱えてベッドからリビングへ移った私。闇に包まれた中で、私は我が子と追いかけっこを始めるが…。

10ページもない作品なのに、絶対にゾッとします。ラストが怖い。(語彙力)

これは本当にただの怖い話でした。辻村さんもこんな作品も書けるんだなと感じた物語です。テイストとしては道尾秀介さんのようだなと感じました。

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ナマハゲと私

大学の講義で、代々伝わる風習を調べることになった大学生の美那子。秋田出身の美那子に、同じ講義を受ける友人たちは「ナマハゲを見たい」と言い出します。せっかくの機会だったので、友人を連れて実家に帰る美那子でしたが…。

これも怖い話です。「やみあかご」と同様で、ラストの展開にゾッとします。幽霊だけが怖い存在じゃない。日常に潜む非日常。そして、でも誰の身にも起こりえる怖さ。

これも短い物語なので、スラスラ読めます。

いつもの辻村深月じゃないよ!

『かがみの孤城』などでは考えられないような、ちょっとドロドロした展開。そして全然心地よくない読後感。

普段の辻村深月を期待して読むのは絶対にやめてください!それくらい落差がえげつないです笑。こんなにも色が異なる作品を描けるのはすごいなと思います。

ちなみに、『ふちなしのかがみ』という小説も怖い話が5つ収録されている短編集です。「世にも奇妙な物語」でドラマ化された「踊り場の花子」は特に秀逸。今、思い出しても鳥肌立つくらいゾッとします。

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本作と併せて、ぜひ気になった人はブラック辻村も堪能してください!