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【感想】先入観を捨て去れ!大人が読むべき子どもの物語(伊坂幸太郎『逆ソクラテス』)

逆ソクラテス

2021年本屋大賞ノミネート作品、伊坂幸太郎『逆ソクラテス』を紹介します。5つの話が収録されている短編集。どの作品も語り手が小学生という珍しい物語です。

逆境にもめげず簡単ではない現実に立ち向かい非日常的な出来事に巻き込まれながらもアンハッピーな展開を乗り越え僕たちは逆転する!無上の短編5編(書き下ろし3編)を収録。

タイトルに「ソクラテス」とあるように、哲学的な問いがところどころで登場する本作。今回もネタバレなしで紹介をしていきます。

逆ソクラテス

ものごとを決めつけてかかる担任の久留米先生。素直に「僕は、そうは思わない」と言える小学生の安斎は、久留米先生の価値観をひっくり返そうとある作戦を企てます。

「僕は、そうは思わない」

周りの目を気にするとなかなか言えない言葉ですよね。何かを否定された時、価値観を押し付けられそうになった時。この言葉は武器になってくれると感じさせられました。伊坂作品らしく、最後のスカッとする展開もあり、最高でした!

スロウではない

運動音痴の司は、くじ引きのせいで運動会のリレー選手に選ばれてしまった。AチームとBチームでリレーはやることになっており、司のBチームは足が遅い人が集まったチームだった。足の速い人が集まっているAチームから、厳しいことをされるのだが…。

最後にはちょっとしたビックリがある作品なのですが、その持っていき方が素晴らしかった。単に驚かせるだけではなく、読者に対してのあるメッセージも一緒に届きます。偏見や差別は時として自分に返ってくる。

非オプティマス

やる気のなさそうな担任教師の久保先生。将太はそんな先生のことを心配していました。不安は的中し、授業参観の日に先生に恥をかかせようという計画がクラスで持ち上がってしまいます。一体どうなるのか?

個人的には一番好きな話。とにかくスカッとします。子どもを教育するのは必ずしも叱ることが大事ではない。また、自分よりも弱いと思ってかかると痛い目に遭う。ラストのオチまで含めてかなり気分の良くなるお話でした。

アンスポーツマンライク

小学生時代のバスケ仲間5人は、当時のコーチのもとへ見舞いに訪れる。その帰り道、彼らは不審者に遭遇してしまうのだが…。

弱い者に対して強く立ち振る舞おうとする。自分の意見を何でも押し通そうとする。人間としての在り方を考えさせられる物語でした。弱者に対しては強いみたいな小物にはなりたくないなと思います。

逆ワシントン

学校を休んでいる友人はもしかすると虐待を受けているのかもしれない。そんな疑惑から真偽を確かめるべく奮闘する小学生の話。

テーマは重そうなのに、小学生たちの頑張りがかわいらしく、読んでてニッコリしてしまった。ところどころのジョークも面白かったですね。(ワシントンが桜の木を折ってしまった時の話のブラックジョークも楽しかった)

最後の物語なので作品全体のオチもあり良かった。自分の信念にまっすぐであれば、なるようになるなと感じました。

生き方の教科書になっている

大人が読んでも面白い本作。自分の価値観や行動を振り返るきっかけになりました。また、他人ではなく自分がどうしたいかの重要さにも気付けます。

人から言われたからこうする。ではなく自分は何をしたいのか。相手に意見を押し付けられそうになった時は勇気を持って「僕は、そうは思わない」と言ってみます!